
夫のDVから逃れていた大阪市城東区の22歳女性が、生活保護の申請を3度試みながら受理されず、その後、同居していた知人男性から暴行を受け死亡した。2022年に起きたこの事件をめぐり、2024年には母親や支援団体、弁護士らが大阪市に謝罪と再発防止を求めた。2026年7月にXで再び拡散され、生活保護行政の窓口対応をめぐる議論が広がっている。
3度の申請、3度の「門前払い」
支援団体・全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)の報告や、MBSなどの報道によると、経緯はこうだ。
女性は2020年、夫のDVから逃れて知人宅に身を寄せた。うつ病を患って働けなくなり、身長155センチに対し体重は30キロまで減少。入院が必要な状態だったがかなわず、所持金は尽き、電気・ガス・水道は止められ、子どもは施設に預けられた。
2021年7月、女性は母親とともに城東区役所で1度目の申請に臨んだが、職員は家賃の契約書を持ってくるよう指示。「知人の家なので契約書はない」と伝えると「契約書がないと申請できない」と追い返したという。
同年12月におこなった2度目の申請では、申請書を渡されたものの受理されなかった。
そして2022年3月の3度目、窓口は「夫と連絡を取って婚姻費用の分担を求めること」「家賃が基準額を超えているなら申請できない」などと告げた。MBSの報道によれば、区役所側が挙げた理由は「夫婦関係の破綻が確認できない」「家賃が生活保護の扶助基準額を超えている」というものだった。女性は「私みたいな人間が生活保護を受けるなんて、みんなの税金で申し訳ない」と泣きながら窓口を後にしたという。職員に所持金を問われて答えた額は、600円だった。
その後、女性は知人男性宅に住み、その男性から暴行を受けて死亡した。2024年7月、女性の母親と大生連、弁護士らは大阪市に謝罪と再発防止を求める要望書を提出し、記者会見を行っている。
「水際作戦」は違法――申請権をめぐる基本原則
この窓口対応は、制度の趣旨に明確に反している。
生活保護の申請は国民の権利であり、要件を満たすかどうかの判断は「申請を受理した後」に行政が行うものである。厚生労働省も、申請の意思が示されているのに申請書を交付しない、書類が揃っていないことを理由に申請を受け付けないといった対応は不適切だと繰り返し自治体に通知してきた。窓口段階で申請自体を諦めさせる、いわゆる「水際作戦」は、法律上の権利の侵害にほかならない。
とりわけ本件はDV避難のケースである。DV被害者に対して「夫と連絡を取れ」と求めることは、被害者を危険にさらしかねない対応であり、扶養照会についても、DV事案などでは行わない取り扱いが認められている。「家賃が基準を超えている」ことも、申請を拒む理由にはならない。受理した上で住宅扶助の範囲内への転居を指導するのが本来の運用である。この事件が突きつけるのは、制度そのものではなく、制度を運用する現場が「最後のセーフティネット」の入り口を塞いでいたという事実だ。
福祉の窓口が、たどり着いた人を受け止める場所ではなく、追い返す場所として機能することもあるようだ。



