
現代の情報化社会において、人々の関心を集めること、すなわち「アテンション」はそれ自体が巨大な経済的価値を生む。しかし、その手っ取り早い手段として倫理的な一線を越えた炎上という禁断の果実に手を伸ばし、自ら火を放つ者は後を絶たない。
過去にインターネット上で猛烈な非難を浴びた「女体シャンパンタワー」騒動の台風の目である実業家の坂井秀人氏が、19日、自身のXにて事の顛末を突如として告白した。本人は意図的に仕組んだヤラセであると主張しネタばらしを行った形だが、ネット上の波紋は収まる気配を見せていない。
8ヶ月前から計画された「炎上マーケティング」という主張
坂井氏のXへの投稿には、約28分にも及ぶ長尺の動画のリンクが添えられていた。本文には「女体シャンパンタワーの全てを話します」「1.5倍速でいいので最後まで見ていただけると幸いです」と記されており、世間を騒がせた一連の騒動が、実は意図的に仕組まれた計画的なものであったという宣言である。
動画には、不敵な笑みを浮かべる坂井氏の姿とともに「狙い通りです」「確かに狙い通り 炎上したんですけども」「最終のゴールだけ急遽 変更がありまして」といった、いかにも意味深長なテロップが躍っている。彼の主張をそのまま受け取るならば、これは8ヶ月も前から周到に準備された炎上マーケティングであったということになる。世間からの猛烈なバッシングを浴びることすらも計算づくであり、自分は盤上を支配するプレイヤーであったと誇示するかのようだ。
しかし、この満を持してのネタばらしに対して、世間の反応は彼が期待したような称賛や驚きには包まれていない。むしろ、冷ややかな視線と、徒労感すら伴う厳しい批判が相次いでいるのが偽らざる実情である。
著名人・インフルエンサーからの容赦なき一刀両断
事態の推移を見守っていた著名人やインフルエンサーたちも、続々とX上で見解を示している。元プロボクサーであり、現在は総合格闘技の解説やYouTuberとしても知られる細川バレンタイン氏は、この告白に対して辛辣な言葉を浴びせた。
細川氏はX上で「爆笑」という言葉から始め、「ヤラセでした!お前ら引っかかったな!って言う事が、カッコ良いと思ってる感性がイカれてるわ」と一刀両断。さらに「嫁に先に相談してるらしいから、ある意味嫁もクソゴミだな」「この騒動が自演だとして、なんの得があるん?信用を一気になくしただけじゃねーか」と、ビジネスパーソンとしての得失点の見誤りや、周囲を巻き込むことへの強い違和感を明確に表明している。
また、人気YouTuberのぷろたん氏も短く「レイナもヤラセってことか。あいつも堕ちるとこまで落ちたか。くっだらな。」と投稿。騒動に関与したとされる人物を含め、この壮大な茶番劇に対する深い失望感を露わにしている。
一方で、独自のネットワークを持つインフルエンサーのZ李氏は、やや異なる視点から裏事情を明かしている。Z李氏によれば「やっとネタバレしたんだ。知り合いが釣り引っかかりすぎてて辛かった」と、騒動が作り物であることを早期から把握していたことを示唆。さらに「無修正は捨て垢からでも書類送検くらいワンチャンあるよって言ったけど、僕はそういうの大丈夫なんでって無敵の人みたいな返事が来た」と、当時の坂井氏との直接のやり取りを明かしている。同時に「坂井くんは変わってるけど貧困家庭支援に力入れてたり実は結構優しい金持ち」と、彼の知られざる一面にも触れてはいるものの、一度失墜したイメージを覆す決定打には至っていない。
一般ユーザーとの対峙に見る、決して埋まらない溝
インフルエンサー層のみならず、一般のXユーザーからの反応はさらに容赦のないものとなっている。SNSにおける炎上が、いかに人々の心に深い嫌悪感を残すかが浮き彫りになっている。
ある一般ユーザーは、「ヤラセだとしても面白くないし誰が得するやつなの?普通にずっとキモい」と指摘。ヤラセであったからといって過去の不快感が帳消しになるわけではないという、視聴者の率直な心理を代弁している。また、家族への影響を危惧し「自分の家族めっちゃ傷ついてない?」「親戚がこういうことやってたら心底軽蔑するわ」と、炎上を手段として選ぶことの道義的責任を厳しく問う声も後を絶たない。
さらに坂井氏のXアカウントには、直接的な怒りや呆れをぶつけるリプライが多数寄せられている。あるユーザーからの「女を裸にさせてシャンパンかけて、やらせでしたー!いや、お前の気持ち悪さ、それを許容出来る家族に対しても全ての嫌悪。(中略)ただただ同じ人間として恥ずかしいし、気持ち悪い」という辛辣な意見に対し、坂井氏は「率直なご意見ありがとうございます その嫌悪感を払拭できるくらい、多くの人の利益になる活動をしてみせます」と、どこか他人事のような返答をしている。
また、別のユーザーからの「非常に印象が悪くなりました。(中略)私の業界であなたに依頼する人はいないでしょうが、頑張ってお子様の為に生きてください。さようなら。」という絶縁宣言に近い言葉に対しても、「不快感を持たれる方がいるのは理解できます これからの僕の活動で挽回できるよう頑張ります」と応じている。淡々と前向きな姿勢をアピールする坂井氏だが、ユーザーの根深い嫌悪感との間には、決して埋まることのない深い溝が存在しているように見受けられる。
「誰も傷つけていない」という主張は認められるのか
さらに、本件を巡っては看過できない問題が残されている。本人は一連の騒動について「誰も傷つけないバズり」であったかのように振る舞っているようだが、炎上当時、自身の常軌を逸した行動をADHDの薬のせいにした(ということにした)という経緯があることを忘れてはならない。
精神疾患や発達障害、そしてその治療薬に対する世間の無理解や偏見と日々闘っている当事者たちにとって、自身の軽率な振る舞いの免罪符として薬の副作用を安易に持ち出したことは、どれほど深い傷を与えただろうか。特定のマイノリティをスケープゴートにしておきながら、後になって「実は演技でした」と嘯く態度は、真の意味での「誰も傷つけないバズり」など到底成立していないことを如実に物語っている。
ネットの喧騒の果てにあるもの
SNSにおける炎上マーケティングは、瞬時に莫大なインプレッションを獲得できる麻薬のような手法である。しかし、一度毀損された信用と、人々に植え付けられた生理的な嫌悪感は、「実は壮大なドッキリでした」という一言で容易に払拭できるものではない。今回の坂井秀人氏の一件は、意図的な炎上がいかにコントロールが難しく、割に合わない両刃の剣であるかを、社会全体にまざまざと見せつける結果となった。
果たして、一連の騒動は本当に彼の主張する通りのヤラセだったのだろうか。それとも、後付けの言い訳に過ぎないのだろうか。彼がどのような思想でこの緻密な劇場を企画し、最終的なゴールをどこに設定していたのか。本稿ではあえて客観的な反応を取り上げるにとどめる。その真意と結末、そして彼の今後の活動の是非については、読者自身の目で28分の動画を確かめ、それぞれの答えを出してみてほしい。



