
ニデックに対し、東京証券取引所が上場契約違約金9120万円を徴求する。日本取引所グループは4月30日、ニデック株式会社株式について、企業行動規範の遵守すべき事項に違反し、市場に対する株主および投資者の信頼を毀損したと認められるとして、同額の違約金を求めると発表した。ニデック株式会社は東証プライム市場に上場しており、証券コードは6594。
上場契約違約金9120万円を徴求
日本取引所グループによると、今回の処分は日本取引所自主規制法人の審査結果に基づいて決定された。理由として挙げられているのは、業務の適正を確保するために必要な体制整備に関する規定への違反である。根拠条項は有価証券上場規程第509条第1項第2号とされている。
上場契約違約金は、単なる行政上の罰金とは異なる。東証に上場する企業は、上場会社として取引所の規則を守る契約上の立場にある。情報開示や内部管理体制に関して、市場の信頼を損なう行為があったと認められた場合、取引所は上場会社に違約金を求めることができる。
今回の9120万円という金額は、企業規模や市場区分を踏まえた処分であり、ニデックの不適切会計問題が取引所側からも明確な制裁対象とされた形である。
第三者委員会の最終報告が処分の前提に
東証が理由の詳細で示したのは、ニデックおよびグループ会社における不適切な会計処理の疑義である。具体的には、資産性に疑義のある資産に関する評価減の時期を恣意的に調整した疑いなどが対象とされた。
ニデックは4月17日、「第三者委員会の調査報告書(最終報告)の受領及び当社の対応に関するお知らせ」を開示している。同社は、2月27日付の調査報告書受領後も第三者委員会による調査が続いていたが、調査が完了し、最終報告として調査報告書の追補を受領したと発表していた。
東証は、この調査により、過度な業績プレッシャーを主な原因として、ニデックグループの複数拠点で多数の会計不正が行われていたことが判明したと説明。また、2026年3月期第1四半期末の連結財務諸表の純資産に与える累積影響額について、第三者委員会が算定した金額だけで1607億円だったとしている。
「短期的な利益最優先」の企業風土を東証が指摘
東証は、今回の背景として、ニデックグループ内で非現実的な業績目標が決定され、経営幹部を通じて事業部門やグループ会社の幹部に強いプレッシャーがかけられていた点を挙げた。その結果、短期的な利益を最優先する意識や、目標未達を許容しない企業風土が生じ、コンプライアンスが軽視されていたとしている。
監査体制についても、東証は複数の問題を提示。監査等委員会に提供される会計不正事案に関する情報が、同社の抱える問題の本質を伝える内容になっていなかったこと、三様監査の間で情報交換が十分でなかったこと、監査等委員会の機能が発揮されていなかったことなどが挙げられている。
さらに、CFOや経理部門が会計不正に関与していた点、内部監査部門や内部通報対応部門が、会計不正が頻発する根本原因を認識しながら、その問題に踏み込むことを避けていた点も記載された。東証は、こうした事情から、けん制機能に不全が生じていたと判断している。
M&Aで広がったグループ管理の課題
ニデックは、モーターを中心とする大手メーカー。公式サイトによると、精密小型から超大型までの幅広いモータ事業を中心に、モータの応用製品やソリューションも手がけている。2025年3月期の連結売上高は2兆6070億94百万円、連結従業員数は10万4285人。
同社は1973年7月、京都市西京区で永守重信氏が資本金2000万円で日本電産株式会社として設立した。1973年8月には精密小型ACモータの製造・販売を開始し、1998年9月に東京証券取引所第1部へ上場した。
東証は今回、ニデックグループが国内外で多くのM&Aを実行して事業を拡大してきた一方、買収後のグループ会社の管理体制が統一的なものになっていなかったと指摘した。多拠点・多会社を抱えるグローバル企業でありながら、グループ会社の管理体制が十分に整っていなかったことが、不正会計の広がりと結び付いたと位置づけている。
2025年10月には特別注意銘柄に指定
ニデック株式は、2025年10月28日付で特別注意銘柄に指定されている。今回の上場契約違約金は、その後の第三者委員会の最終報告などを踏まえて、東証が追加的に判断した処分である。
上場契約違約金の徴求により、ニデックの不適切会計問題は、第三者委員会による調査報告にとどまらず、取引所による公式処分の段階に入った。今後は、過年度の有価証券報告書などの訂正、内部管理体制の再構築、役員責任をめぐる対応が引き続き確認対象となる。



