
歓喜の翌日に、悲劇が起きた。
全国大会出場を決めたばかりの大阪・興国高校サッカー部。その部員が飲酒をし、意識を失って路上に倒れたという。救急搬送された生徒は命に別状はなかったが、学校は複数の部員を停学処分とし、部活動を無期限停止とした。全国高校サッカー選手権への出場を目前に控える中、名門校に突きつけられた「教育と規律」の重い問い。現場では、何が起きていたのか。
栄冠の翌夜、路上で倒れた部員
11月1日、大阪・長居スタジアム。
興国高校イレブンが歓喜に包まれた瞬間、夜空に紙吹雪が舞った。PK戦を制し、6年ぶりとなる全国高校サッカー選手権出場を決めたのだ。応援席では涙を流す生徒の姿もあった。
しかし、そのわずか24時間後。
大阪府内の路上で、ひとりの男子部員が意識を失った状態で倒れているのが発見された。警察が保護し、救急搬送。命はとりとめたが、体からは酒のにおいがしたという。
学校関係者によれば、倒れていた生徒は前夜、他の部員とともに府内の飲食店で飲酒をしていた。全国大会出場を祝う“打ち上げ”のような雰囲気だったとみられる。
学校側の対応「停学と無期限活動停止」
興国高校は6日、飲酒に関与した部員を停学処分とし、サッカー部全体の活動を無期限停止とした。
学校は「勝敗よりも、人としてルールを守ることを第一にしてきた。今回の事象は痛恨の極み」とする文書を公表した。
さらに、他にも同様の行為がなかったかを部全体で調査中とし、調査結果を高体連とサッカー協会に報告する方針だ。
12月の全国大会出場については「調査を終えてから判断する」としている。
関係者によれば、5日には高体連の会議も行われ、学校側から経緯の説明がなされた。「非常に残念」という声が上がる一方で、出場辞退の判断は「最終的には学校に委ねられる」という。
「辞退すべき」「個人の責任」賛否分かれる声
SNSやニュースサイトのコメント欄には、数千件を超える反応が寄せられている。
「社会のルールを守れない者が、全国の舞台に立つ資格はない」
「飲酒した本人だけが処罰されるべき。努力してきた他の部員がかわいそう」
一部では、決勝で惜敗した履正社高校を“救済出場”させるべきという意見も出ている。
連帯責任を問うべきか、それとも個人の過ちとして区別すべきか。
高校サッカー界が長年抱える倫理の課題が、改めて浮き彫りになった。
過去の類似事例と揺れる判断
高校スポーツの世界では、同様の事案がたびたび起きている。
- 2017年・宮崎県 鵬翔高校
複数部員が飲酒・喫煙し、県大会準決勝を辞退。 - 2020年・奈良県 山辺高校
寮内で飲酒。批判がありながらも全国大会に出場。 - 2024年・熊本県 大津高校
不祥事を起こした生徒を外し、大会に参加。
「チームとして出場すべきか否か」は一律の基準がなく、各校や大会運営側の判断に委ねられてきた。
教育活動としての「部活動」と、競技としての「勝負」の狭間にある難しい現実だ。。
名門・興国高校が背負うもの
興国高校サッカー部はこれまでに30人以上のプロ選手を輩出。
日本代表の古橋亨梧選手もこの名門の出身だ。
一方で、300人近い大所帯を抱える“育成型クラブ”ゆえに、個々の生活指導には限界もあると指摘する声もある。
今回の一件は、「勝つこと」よりも「どう生きるか」を問う教育的事件としても受け止められている。
学校、部員、指導者、それぞれが再発防止に向けてどう行動するのか。
全国の注目が集まっている。



