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刀は「逆風」をどう生かすのか?ジャングリア沖縄、開業前夜の試練と可能性

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ジャングリア沖縄
ジャングリア沖縄公式Instagramより

沖縄県今帰仁村(なきじんそん)に、700億円を投じた大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」が誕生する。
オープンは7月25日。
森と恐竜とスパをかけ合わせた60ヘクタールの新施設は、バギーやジップライン、T-REXに追われる「ダイナソーサファリ」など、体験型アトラクションを武器に観光客の流入を狙う。

運営主体は、マーケティング会社「刀」。
USJのV字回復を牽引した森岡毅氏が創業したこの企業は、いままさに開業前夜の注目と不安の渦中にある。

 

 

赤字24億円の波紋

刀が手がけるテーマパーク事業は「イマーシブ・フォート東京」に続き、今回が2例目の大型案件となる。
しかし7月に入って報じられたのは、2024年度に計上された24億円超の赤字。資本金は5億円から9900万円へ減資され、「純資産マイナス18億円」との記載が報道に並んだ。

スタートアップ型の先行投資として捉える向きもあるが、一部報道では「公的資金の使途の不透明さ」や「森岡氏個人への資金移動」などに対する疑念も噴出した。
SNS上では、「税金でテーマパークを作っているのでは?」という批判が拡散し、ブランドに影を落としている。

 

地元交通との摩擦も

さらに注目されたのが、今帰仁村周辺の交通環境を巡る報道だ。
「ジャングリア沖縄」の周辺には鉄道がなく、県道84号線を通じたアクセスに偏っている。
刀は公式サイトで「シャトルバスや分散誘導を行う」と説明するが、地元住民の間では「渋滞が慢性化するのではないか」という不安が根強い。

プレオープンにあたっては、県の協力のもと交通整理が行われたものの、刀の広報が「自治体任せの批判は事実に反する」と反論した対応が、かえって説明責任の軽視という印象を与える結果となった。

 

期待と懸念が交差する「開業前夜」

とはいえ、「ジャングリア沖縄」には確かな可能性もある。

まず、全国規模で話題を集めているという事実そのものが強みだ。
「T-REXが襲ってくる恐竜体験」や「森を滑空するジップライン」など、SNSで拡散されやすいアトラクションを多数備えており、初動の体験者による“バズ”が拡大すれば、ネガティブ報道の印象は一気に反転する可能性がある。

また、約550種のグッズのうち9割がオリジナルであり、その多くが沖縄県内の企業と連携して製造されている。
こうした地元還元型のモデルは、観光依存が進む沖縄経済のなかでも注目される取り組みと言える。

 

森岡氏の「再構築力」が問われる局面

刀はコンサルティング型のマーケティング会社として立ち上がり、USJや丸亀製麺などで成功実績を重ねてきた。
だが、今回は単なる「戦略パートナー」ではない。
企画・運営・資金調達を含む事業主体としての本気の挑戦である。

ゆえに、これまでの成功体験が通用しない局面にも直面している。
現場運営の不備、交通整理への批判、赤字決算への突っ込み。
それらをどう受け止め、どう反転させるか。
企業のリブランディングとは、しばしばトラブル後の対応にこそ真価が宿る。

 

評価の分かれ目は「初動の信頼構築」

「ジャングリア東京」は、ビジネス的に見れば極めて大きな挑戦の舞台だ。
ブランド、資金、交通、地元との関係、SNS拡散力。
これらのファクターが複雑に絡み合いながら、数日後には「評価の第一波」がやってくる。刀という企業にとって、これは試練であると同時に、市場と社会に自らの意義を再定義する好機でもある。
森岡氏の言葉を借りれば、勝率は「70%ある」。
その根拠と覚悟が、本当に現場に根づいているのか。
答えは、オープンの数日後に明らかになる。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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