
「闇バイト」が、ついに“レイプ代行”という凶悪犯罪にまで手を伸ばした。警視庁捜査1課は7月1日、知人女性に性的暴行を加えさせたとして、住所職業不詳の松田烈容疑者(27)を不同意性交などの疑いで逮捕した。
ネットで“強姦依頼”を募集、犯行は「下水道の点検」装い押し入り
事件は2025年6月2日未明に東京都板橋区で起きた。松田容疑者は匿名掲示板に「性的暴行してくれる人募集」と投稿し、山本礼哉容疑者(25)とSNSを通じて連絡を取り合った。
犯行当日、2人は「下水道の点検です」と偽って女性宅に押し入り、性的暴行を加えたうえ、現金1万円を奪った。松田容疑者は女性と面識があったとされ、私的な恨みが背景にあるとみられている。
SNSで拡散、「レイプ代行」に戦慄の声 闇バイトはどこまで進化するのか
この凶行は、7月10日、X(旧Twitter)でインフルエンサーの滝沢ガレソ氏が投稿したことで一気に拡散。「ついにレイプまで闇バイトに…」という文言とともに事件概要が紹介され、瞬く間に数万件のリポストとコメントが集まった。なお、山本容疑者については、スニーカー配りで知られる「まぁくん」のtiktokに過去、出演していたとの情報もある。
「特殊詐欺だけじゃなかったのか」「犯罪のUber化」「人間の心を失っている」といった書き込みが相次ぎ、若年層の犯罪温床としての“闇バイト”問題が改めて注目されている。
拡大する“闇バイト”犯罪のカタログ
もともと「闇バイト」とは、SNSや掲示板などで違法行為を請け負う形でリクルートされる非正規の犯罪労働を指す。近年では、以下のような凶悪事件が報じられてきた。
- 強盗殺人:2023年、東京都狛江市で高齢女性が死亡した事件では、フィリピンから指示を出していた「ルフィ」グループが闇バイトを通じて実行犯を集めていたことが判明。
- 襲撃・暴行:交際トラブルや逆恨みによる“報復代行”も複数例あり、暴行や傷害を闇バイトに依頼するケースも。
- 放火・破壊工作:店舗のライバル排除目的で「火をつけてほしい」といった投稿が発見され、摘発例もある。
- 詐欺:銀行口座の名義貸しや、特殊詐欺の“受け子”“出し子”として若者がリクルートされ、逮捕される事例が後を絶たない。
今回の“レイプ代行”は、こうした犯罪のラインナップの中でも特に異質で、性的暴行という極端な人権侵害行為を「代行」として商取引のように扱う異様さに、社会的な怒りと衝撃が広がっている。
匿名性と無責任が結ぶ「共犯関係」
松田容疑者は、犯行後に山本容疑者に対して約束した報酬3万円より少ない額しか支払っていなかった。自らは一歩引いた立場をとり、実行犯だけに責任を押しつけるという構図が、闇バイト型犯罪の構造に共通して見られる特徴だ。
警察庁は、こうした“匿名型依頼犯罪”の実態把握を急ぐとともに、SNS運営事業者に対しても情報提供と監視の強化を要請している。
ネット社会が生んだ新しい“犯罪労働市場”が、人間の尊厳や社会秩序を脅かす存在となって久しい。今回の事件は、その行き着く先を示す、極めて象徴的な一例といえるだろう。