日本たばこ産業(JT)は、2024年5月1日より紙巻きたばこと加熱式たばこの計24銘柄について、20円の値上げを財務省に申請したと発表した。
値上げの背景には原材料費の高騰や喫煙者の減少がある。今後の価格動向や消費者の選択肢について詳しく解説する。
5月からたばこ24銘柄を値上げ
日本たばこ産業(JT)は、2024年5月1日より紙巻きたばこと加熱式たばこの計24銘柄について、20円の値上げを財務省に申請したと発表した。これは、原材料費の高騰と国内のたばこ消費の減少を受けたもので、財務省に対し認可申請を行っている。
対象となる銘柄は、紙巻きたばこの「キャメル・クラフト」全18銘柄(430円→450円)、加熱式たばこの「ウィズ」全6銘柄(580円→600円)である。JTは「コスト削減の努力を続けてきたが、品質の維持が困難になった」と説明している。
たばこの値上げが続く背景
1. たばこ税の増税
たばこは、消費税に加えて「たばこ税(国たばこ税、地方たばこ税、たばこ特別税)」が課されており、その割合は販売価格の約6割に上る。近年、政府は財源確保のためたばこ税を段階的に引き上げており、その影響で価格上昇が続いている。
2. 喫煙者の減少
厚生労働省によると、日本の成人喫煙率は1990年代には40%を超えていたが、2023年時点では15%前後にまで減少した。喫煙人口が減る中で、たばこメーカー各社は売上確保のために価格を上げざるを得ない状況にある。
3. 原材料費の高騰
世界的なインフレや物流コストの上昇が、たばこ生産のコスト増につながっている。特に紙巻きたばこに使用される葉タバコの価格が上昇し、企業の経営を圧迫している。
過去の値上げと主要銘柄の価格推移
銘柄 | 2019年 | 2021年 | 2024年 |
---|---|---|---|
メビウス | 490円 | 580円 | 580円 |
セブンスター | 510円 | 600円 | 600円 |
キャメル | 400円 | 450円 | 460円 |
ラッキーストライク | 520円 | 600円 | 600円 |
マールボロ | 520円 | 600円 | 600円 |
このように、JTを含めた多くの主要ブランドも2019年と比較すると値上げが続いている。
たばこ値上げの影響と喫煙者の選択肢
1. 消費者の負担増
たばこの価格が上がることで、喫煙者の経済的負担は増す。例えば、1日1箱吸う喫煙者の場合、年間のたばこ代は約219,000円(600円×365日)に達する。これは、2019年の約189,000円(520円×365日)と比較すると、3万円以上の負担増となる。
2. 禁煙・節煙を考える人の増加
値上げが進むことで、喫煙者の中には禁煙や節煙を考える人も増えることも考えられる。特に加熱式たばこや電子タバコへの移行を検討する動きも見られるだろう。
3. 加熱式たばこと電子タバコの選択肢
加熱式たばこ(IQOS、glo、Ploom)や電子タバコ(VAPE)への移行も一つの選択肢となる。以下は、それぞれのランニングコストの比較である。
方式 | 月間コスト(推定) |
紙巻きたばこ | 約18,000円(1日1箱) |
加熱式たばこ | 約15,000円(1日1箱相当) |
電子タバコ | 約3,900円(リキッド代含む) |
電子タバコはランニングコストを大幅に抑えられるため、コスト削減を目的に移行する人も増えることも考えられる。
今後の展望と消費者の選択肢
たばこ価格の上昇は今後も続く可能性が高い。政府は健康促進の観点からたばこ税を段階的に引き上げる方針を示しており、増税が継続する可能性がある。また、喫煙率の低下が進む中、たばこ業界は加熱式たばこや電子タバコの新たな製品ラインを拡充し、消費者の嗜好の変化に対応しようとしている。
過去と比較すると、たばこの価格は大幅に上昇している。例えば、2019年時点で400円だったキャメルは2024年には460円となり、5年間で15%の値上げとなった。メビウスも490円から580円へと18%以上上昇している。このように、主要銘柄の価格は平均して15~20%の上昇を記録しており、今後も同様の傾向が続く可能性がある。
消費者にとっては、今後の価格上昇を見据えた対応が求められる。節煙や禁煙を考える人が増える一方で、価格の安い加熱式たばこや電子タバコに移行する動きも活発化すると予想される。市場の変化に伴い、新たな選択肢を検討することが重要になってくるだろう。