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下請けから中小受託事業者へ表現変更 中小を救う術はサプライヤーの委託費UPの奨励にあり

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コスト削減を迫られる中小事業

政府が法改正に向けて、「下請け」と呼ばれてきた事業者を「中小受託事業者」に、発注元の「親事業者」を「委託事業者」と改める方向で最終調整していることが分かった。FNNプライムオンラインの報道によると、政府は次期通常国会に提出する法律改正案でこれを盛り込む予定だ。

この表現変更の狙いは、中小企業が発注元と対等な関係を築き、原材料費や人件費の上昇分を適切に価格転嫁できるような環境を整えることにある。政府関係者は「中小事業者を『下』に見る意識を一掃したい」と述べ、取引の不平等な構造の是正を目指している。

名称変更への現場の声

しかし、この表現変更が実態にどこまで影響を与えるのかは不透明だ。SNS上でも、今回の動きに対する意見が数多く寄せられている。

「実際、現場では『協力会社』や『パートナー企業』という呼び方が使われています。でも、それは現場の敬意からくるもので、政府が名称を変えることで問題が解決するわけではない」

「下請法の名称も変わるのか。手続きや調査対応は大変なのに、名称変更が余計な負担にならなければいいけれど」

こうした意見からも分かるように、名称変更が実態改善に繋がらなければ、現場の問題はむしろ見えにくくなる恐れがある。

トヨタの文化と中小企業の苦境

これまで、日本のビジネス文化ではコストカットや利益率の向上が重要視されてきた。中でも、トヨタ自動車がカイゼンを叫び、「乾いた雑巾を絞る」という表現で象徴されるように、徹底的な効率化が美談とされてきた。
しかし、こうした企業文化の裏側には、多くの中小受託事業者が声を上げることなく過酷な条件下で働き、コスト削減の圧力に苦しんできたという現実がある。

日本では、かつて安倍政権下で「トリクルダウン」という言葉が盛んに語られた。大企業が成長すれば、その恩恵が中小企業や労働者層にまで波及するという理論だ。しかし、現実にはトリクルダウンは起きなかった。むしろ、大企業が利益を確保する一方で、中小企業には厳しいコスト削減の要求がのしかかり、格差は広がるばかりだった。

サプライヤー報酬引き上げを評価する文化の必要性

労働者の7割が中小企業で働く現実を考えれば、何が何でも中小企業へお金が行きわたる構造を作らなければならない。適正な報酬をサプライヤーに支払う文化を育む必要がある。利益率至上主義からの脱却を図り、取引先に適正な料金を支払うことが企業の誇りとなるような文化が浸透すれば、日本の経済構造はより健全になると期待される。

例えば、サプライヤーへの報酬引き上げランキングをサステナビリティ指標の一つとして公開することも一案だ。企業がどれだけ取引先に適正な報酬を支払っているかを可視化し、「昨対比で10%向上」など値上げ率などを競い合う文化を醸成するのだ。日経新聞や東洋経済など大手経済メディアがお得意のランキング化をして、その実績を評価することで、企業間の健全な競争を促進し合うのだ。

もっとも、こうしたランキングの開示も、昨今の上場企業のサステナビリティ任意開示の枠組みに括られて実践しようとすると、目的は「投資家・株主にとってのサステナビリティ」なので、サプライヤーへの支払いが増えること=株主利益の棄損となり、実現は遠のくだろうが。

やはり、いまこそ、日本の長寿企業が育んできた「三方よし」の精神に立ち返ることで、売り手よし、買い手よし、世間よしの取引文化を築くことこそ、真の意味で企業の、社会の持続可能なモデルに繋がるという理解を広げていかないとならない。

日本企業は利益率の追求だけでなく、取引先への適正な還元を誇る文化を作り上げる時期に来ている。これこそが、真の意味でのトリクルダウンを実現する一歩となるハズなのだ。

さぁ、トヨタさん、公益資本主義などに賛同していた過去もあるのだから、ぜひ率先してやっていただけないでしょうか。もちろん、日経225の皆さんだっていいんですよ、一緒に日本社会をよくしていきましょうよ!

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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