老舗電機メーカーの船井電機が破産手続き開始決定を受け、全従業員約2000人が解雇された。25日、本来であれば給料日であったが、社員への給与は支払われていない。突然の知らせに、社員からは驚きと落胆の声、そして生活への不安の声が上がっている。
「破産です。給料は払えません。即時解雇です」: 衝撃の解雇通告
24日、急遽開かれた社員説明会。そこで告げられたのは、信じがたい言葉だった。「破産です。給料は払えません。即時解雇です」。あまりにも突然の通告に、社員らは言葉を失ったという。「突然そうなるとは思わず、驚いた。あっという間に終わってしまった」と語る社員もいれば、「みんな、怒ったりするのではなく、静かに受け入れた。自分もそうだった」と語る社員もいた。中には、「あと数年、数ヶ月はもつと思ってた」と、退職を目前に控えていた社員もおり、その無念さは計り知れない。説明会の様子を目撃した関係者によると、会場は静まり返り、重苦しい空気が漂っていたという。
大東市、返礼品から除外 取引先にも動揺広がる
船井電機の本社がある大阪府大東市は、ふるさと納税の返礼品から同社製品を除外したと報道されている。市担当者は「期待していたのに残念だ」と落胆を隠せない。取引先も突然の破産に動揺を隠せず、本社には多くの関係者が訪れ、対応に追われている。
ヤマダHD株価は下落も限定的 大塚家具買収とは異なる結末
船井のテレビを販売していたヤマダ電機のヤマダHDの株価は、25日終値で431.70円と、5日前と比較して15.60円下落した。しかし、下落幅は限定的だ。ヤマダHDは、既に販売したテレビのアフターサービスについて「お客さまに迷惑をかけることのないように責任を持って対応していく」とコメントしている。
過去には大塚家具を子会社化するなど、経営難の企業を救済してきたヤマダ電機だが、今回は手を差し伸べることがなかった。これは、船井電機の経営状況が極めて深刻で、救済が困難な状況だったことを示唆しているのではないか。
報道によると、店頭での販売は当面は続ける方針だが、今後発行するチラシでの商品掲載は控えるとのこと。ヤマダHDは2017年から国内で「FUNAI」ブランドのテレビを独占販売していた。
業績悪化、経営混乱が破産招く わずか1ヶ月前に経営体制刷新も
船井電機は、「FUNAI」ブランドの液晶テレビなどで知られ、北米市場でトップシェアを獲得した時期もあった。しかし、中国メーカーとの価格競争激化などで業績が悪化。近年は営業赤字が常態化し、3月末時点の負債総額は約460億円に上っていた。さらに、今年3月以降は役員の入れ替わりが相次ぎ、経営体制が混乱。親会社が買収した脱毛サロンの広告費未払い問題なども発覚し、信用不安が拡大していた。皮肉なことに、船井電機は9月に経営体制を刷新したと発表したばかりだった。
破産と倒産の違いとは?
ここで、よく混同される「破産」と「倒産」の違いについて解説する。「倒産」は企業が経済的に事業継続が不可能になる状態を指し、法的整理の「破産」以外にも、事業を再生する「民事再生」などの方法がある。
「破産」は法的整理の一種で、裁判所が企業の資産を売却し、債権者に配当する手続きだ。破産した会社は、従業員に対して賃金を支払えないケースも多い。破産時に解雇される従業員の未払い賃金は、破産手続きにおいて優先的に支払われるほか、未払賃金立替払制度の対象となる。
仮に未払い賃金が発生した場合、社員は「未払賃金立替払制度」を利用し、未払い額の8割に当たる給付を受けることができる。賃金を支払えないまま破産することが確実である場合は、従業員に対して未払賃金立替制度の利用を案内するべきだが、今回の船井電機の場合はどうなのだろうか。
船井電機の今後、そして社員への支援は
船井電機の破産は、多くの社員の生活に大きな影響を与える。再就職支援など、関係機関による迅速な対応が求められる。また、この出来事は、製造業が直面する厳しい競争環境を改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。