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ビッグモーターの不祥事から考えるガバナンス(企業統治)の意義

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写真ACより

ビッグモーターの相次ぐ問題事例を通じてガバナンス(企業統治)の重要性を考える。

ビッグモーターの相次ぐ不祥事まとめ

2023年8月11日、茨城県内にある中古車販売大手ビッグモーターの店舗で働いていた30代の車両整備士(30代・男性)が不当解雇を受けたとして約450万円の損害賠償を求める訴訟を起こし、水戸地裁は原告の請求通りに賠償を命じる判決を下した。

自動車保険金の不正請求問題から始まったビッグモーターの不祥事は、街路樹への除草剤散布、不当解雇、顧客に無料で提供したサービスの代金を事実上社員に肩代わりさせるなど、さまざまな疑惑として広がりを見せている。

過去の不祥事の概要は以下の通りである。

①自動車保険金の不正請求問題
ビッグモーターの工場において、車両を意図的にゴルフボールなどで傷つけ、その結果として車両修理にかかる自動車保険の保険金を水増しして害保険会社に請求したと考えられている。この背後には、企業経営陣が設定した全国の工場に対する目標金額が影響していると言われている。具体的には、修理による収益として1台あたり約14万円前後のノルマが経営陣から課せられていたと報じられている。

②街路樹への除草剤散布
ビッグモーターの店舗前にあった街路樹が不自然な形で切り倒され、一部の場所で除草剤の成分が検出されている事案が発生しており、これらの行為は器物損壊罪に問われる可能性がある。

③無料サービスの代金を社員に肩代わり
ビッグモーターは、車両販売において、顧客が希望するナンバーの代金を無料にすることで、契約を容易にしていた。しか、かつての兼重宏一副社長からの通知により、過去2カ月分の代金を即日で回収するよう指示が出されたことから、一部社員がやむを得ず自身の資金を使ってその負担(総額5,000万円)を肩代わりしたという。

④ノルマ未達の店長罰金制度
2016年からビッグモーターの不祥事は指摘されていた。自動車保険の契約に関して、月ごとの目標金額が設定されており、ノルマ未達の販売店店長が、達成した店長に金銭を支払う慣行が行われていたというのだ。会社側は店長間の取引を黙認していたとされている。

一連の不祥事で指摘されているのが、経営陣の「我関せず」とも見える姿勢である。

企業の不祥事がガバナンスの重要性を浮き彫りにする

企業の不祥事は、ガバナンスの欠如や経営陣の「我関せず」の姿勢と関連して深刻な問題を引き起こすことがある。

適切なガバナンスは、組織内の透明性、説明責任、法令遵守を確保し、不正行為や横領のリスクを低減する役割を果たすが、ガバナンスの不足は不祥事の温床となり得る。

透明性や説明責任の不足は、内部統制や監督メカニズムが弱め、不正行為や法令違反が見逃される可能性を高めるだろう。経営陣が適切なガバナンス体制を構築せず、組織全体に倫理的な文化を根付かせない限り、不祥事は起こりやすくなる。

ビッグモーターの不祥事から見えた経営陣の「我関せず」の姿勢は、これらを助長する要因であろう。兼重・前社長は会見で経営陣の責任について問われると、「不合理に設定された目標がノルマになってしまった、そのことが原因で起きたと思われても仕方がない」と認めたものの、「ただし経営側からの(ノルマ強要の)関与はまったくない」と組織ぐるみの関与を否定している。経営陣が問題を適切に把握し、早期に対処しない場合、問題はエスカレートして大きな影響を及ぼす可能性があるだろう。

ガバナンスの欠如や経営陣の「我関せず」の姿勢は、組織内部の不信感を増幅し、従業員のモチベーションや信頼を損なうだけでなく、企業の評判や信頼性にも大きな影響を及ぼす。兼重・前社長の「ゴルフボールを使った不正行為は、ゴルフを愛する人への冒涜」「不正は知らなかった」「不正は板金塗装部の単独」などの発言は、SNSなどで激しい批判の的となった。これでは顧客や投資家からの信頼が損なわれるのも無理はない。

経営陣に盲従し、忖度する歪な企業風土をいかに変えるか

ESGが重要視される現代社会においては、ガバナンスは経営の透明性と倫理的責任を強調し、企業の信頼性を向上させる要因として重要である。経営陣のガバナンスが不十分な場合、今回のビッグモーターの一件のように、現場の実態を無視した過剰なノルマ設定や過度なプレッシャーが発生し、不祥事に発展する可能性が大いにある。

ビッグモーターは自社サイトで、問題の原因として以下の5つを挙げている。

①不合理な目標値設定
②コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻
③経営陣に盲従し、忖度する歪な企業風土
④現場の声を拾い上げようとする意識の欠如
⑤人材の育成不足

コーポレートガバナンスを徹底し、経営陣に盲従し、忖度する歪な企業風土をどれだけ改善できるか。ビッグモーターの今後の動向を厳しく注視する必要がある。

参考
中古車大手ビッグモーター、営業成績で現金やり取り 店長たちの「慣行」、会社側「違法性ない」
ビッグモーターの会見に見る「SNS時代の企業謝罪」の難しさ、メディアだけでなくネット民も追及する時代に
当社板金部門における不適切な請求問題に関するお詫びとご報告

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ライター:

1991年東京生まれ。中央大学法律学部出身。卒業後は採用コンサルティング会社に所属。社員インタビュー取材やホームページライティングを中心に活動中。

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