ビッグモーターの不正請求問題について、SDGsの観点から紹介する。
2023年7月19日、ビッグモーターが少なくとも1,275件、4,995万円の水増し請求があったことを公表した。不正は5年以上前から、延べ全国30以上の工場で行われていたとみられている。
不正によって成されていた”日本一”
ビッグモーターは「買取台数6年連続日本一」をうたう、中古車の売買や整備、車検などを行っている企業だ。日本一のはずの同社だが、ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩いたり、傷をつけたりして、修理費用を水増しして保険金を請求していたという調査報告書が第三者委員会によって公表された。
こうした不正の背景には、厳しいノルマ設定と従業員への圧力があったという。本来、車両の損傷状況によって修理費用は変動するものだが、ビッグモーターでは修理工賃や部品から得る粗利が14万円前後になるようにノルマが設定されていた。そのため、ノルマを達成できそうにない場合は恣意的に傷をつけるなどして不正に修理費用を水増ししていたのである。そのほかにも、行っていない工程を行ったと申告したり、顧客の要望に反して中古パーツを用いたりするなどの不正も行っていたという。
また、従業員には強くプレッシャーをかけていた。ノルマを達成して成果の大きい社員にはインセンティブを与え、逆にノルマを達成できなかった社員は強い言葉で叱責され、降格や異動などもあったという。
今回の件を受け、ビッグモーターの兼重社長は、報酬の全額を1年間返上する方針を示した。しかし、ビッグモーターや業界が受ける打撃はあまりにも大きい。中古車の購入や車検といった際に「ビッグモーターを利用したい」という人は激減するであろうし、中古車業界へ不信感を抱く顧客も多くいるだろう。失った信頼はそう簡単には取り戻すことはできない。
働きがいが企業の未来につながる
SDGsの8番目の目標として「働きがいも経済成長も」というものがある。持続可能な企業として生き残り成長していくには、利益はもちろんだが、それを支える従業員の働きがいや働く環境をないがしろにしてはならない。「この企業で働き続けたい」「ここでの仕事にやりがいを感じている」と思えない環境であれば、経済的な成長も望めず、遅かれ早かれその企業はすたれていくだろう。
また、パワハラや不当な処遇といったことが一度でも公になれば、そのイメージは長きにわたってつきまとうことになる。電通やヤマト運輸、オープンハウスなど、これまでにパワハラや暴言、暴力などが表ざたになった企業はそのイメージを払拭しきれずにおり、それは経済的な損失にとどまらない。就活生の間でもそういった話題は出回っており、優秀な人材たちはより働きがいや働きやすい環境の整備された企業へと流れていく。またSNSが普及した今、そういった情報はすぐに広まり、目につくところにあり続けることになる。つまり、企業の未来を担う人材の採用においても苦しくなってくるのだ。
いまだに従業員を大切にできていない企業は、これから生き残り続けることはできないだろう。問題や課題を先延ばしにせず、できるところから少しずつでも、企業の内部環境を見直していくべきだ。
【参考】
なぜ「ビッグモーター」で不正が見つかったのか セブン、レオパレス、大東建託の共通点:スピン経済の歩き方(1/6 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
ビッグモーター不正請求 わざと車を傷つけ水増し…「どんな手を使ってでもやれ」 現役社員・元幹部など4人が語る“厳しいノルマと降格”の実態【news23】 | TBS NEWS DIG