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日本の産業の次なる主役は、化学業界にある。旭化成×Sotasが語る、業界変革への道筋とは

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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sotas 吉元氏と旭化成 湯ノ口氏

日本の製造業を長年牽引してきた自動車業界。その次の主役として、今、大きな可能性を秘めているのが化学業界だ。しかし、化学業界では、長いサプライチェーンや企業間の情報格差、デジタル化の遅れが課題だ。
そのような課題に挑むのが、化学業界向けAIソリューションを展開するSotas株式会社だ。法令調査や物性情報の検索、企業間取引を支援するサービスを通じて、単なる業務効率化にとどまらず、マーケットイン型のものづくりへの転換、ゆくゆくはM&Aをはじめとした経営戦略のリサーチ基盤の構築を目指して、業界全体の変革を目論む。
その可能性にいち早く着目したのが、大手総合化学メーカーの旭化成株式会社だ。Sotasのサービスを活用し、従来なら約2カ月を要していた調査をわずか1日で完了させた。業務効率化によって生まれた時間を、新たな価値の創出にどうつなげていくのだろうか。
今回は、Sotas株式会社・代表の吉元 裕樹氏と旭化成株式会社の湯ノ口 智恵氏に、2人の出会いから具体的な導入効果、そして日本の化学産業が世界で存在感を高めていくための要素を伺った。

ネクスト自動車業界が、間違いなく化学業界だと言える理由

――はじめに、お二人が取り組まれている事業内容を教えてください。

湯ノ口:私は旭化成株式会社で、機能材料統括部 新価値開発部に所属しています。そこでの役割は、エンジニアリングプラスチックを軸に、新しい価値を生み出すことです。

部署の取り組みは大きく二つあります。一つは、既存のエンジニアリングプラスチックで新たな用途を開発すること。自動車や家電といった従来の用途に加え、メガトレンドにおける成長市場をもターゲットに新規用途を探索しています。もう一つは、サステナビリティという社会のニーズにどう応えていくか、その戦略づくりです。目先の2、3年だけでなく、5年後、10年後の社会を見据えて、提供できる価値を考えています。

特にサステナビリティの面では、リサイクル材の活用を求められる場面が増えてきました。石油を原料とするプラスチックにとって、大きなテーマです。そこで、私たちはSotasにお力添えいただき、世の中にどのようなリサイクル材があるのか、実際に調達できるのかといった調査を進めています。

吉元:Sotasは、化学業界の皆さまをデジタルの力で支援する会社です。法令チェックを簡単に行える「Sotas化学調査」、自社のデータベース構築を簡便化する「Sotasデータベース」、調達を支援する「Sotas ChemMart」の3つのサービスを通じて業務を効率化し、各社が本来持つ強みに、さらに磨きをかけられるよう支援しています。

私自身、これまで化学、自動車、ITという3つの業界を経験してきました。その中で強く感じたのが、今後の日本経済における化学業界の重要性です。これまで日本の製造業を牽引してきたのは自動車産業でした。しかし、近年は中国メーカーの台頭などによって、業界を取り巻く環境が大きく変化しています。

一方、これからの産業の主役となるAIや半導体を支えているのは、化学品です。化学業界は日本の製造業の中でも、自動車産業に次ぐ売上高や純利益を生み出す重要な産業ですが、その存在感はまだ十分に知られていないと感じています。

私は、次に日本の製造業を牽引するのは、間違いなく化学業界だと確信しています。しかし、 化学業界には世界に誇れる高い技術力がある一方で、デジタル化には課題があります。だからこそ、私たちがデジタルの力で業務効率を高め、各社が技術開発や新たな価値の創出に注力できる環境をつくりたい。それが、Sotasの事業の根底にある想いです。

業務効率化は通過点。目指すのは「マーケットイン」への転換

――化学業界はサプライチェーンが長く、製品開発にも多くの時間がかかるといわれています。Sotasによって、具体的にどのような変化が期待できるのでしょうか。

吉元: 化学業界の大きな特徴の一つに、情報の秘匿性を重視する文化があります。もちろん、企業の競争力を守るために必要ですが、何を機密情報として扱うかの判断基準が曖昧で、本来は共有できる情報まで厳重に管理されているケースも少なくありません。その結果、サプライチェーン全体で情報伝達に時間がかかっています。

私たちはまず、こうした課題を個々の業務から解決しようとしています。例えば、現在最も成長しているサービス「化学調査」では、法規制に詳しくない方でも、必要な法令チェックを簡単に行えるようにしています。

しかし、私たちが最終的に目指しているのは、単なる業務効率化ではありません。日本の化学メーカーがプロダクトアウトからマーケットインへと発想を転換できるような基盤を整えることです。

sotas吉元氏

2カ月の調査がわずか1日に。Sotasが変革させた業務効率化と製品開発

――お二人の出会いのきっかけと、当時旭化成が抱えていた課題は何だったのでしょうか。

湯ノ口:2024年の春頃、社内のスタートアップ連携部署の情報を通じてSotasを知り、すぐに吉元さんに連絡を取りました。初めてお会いした時から、日本の化学業界の課題やビジョンの話で意気投合しました。

化学業界においては、法令遵守やコンプライアンスの徹底は当たり前で、非常に重要なことです。ただ、その守り方の仕組みを変えることには、業界全体としてなかなか手をつけられなかった分野です。

当社は総合化学メーカーとして、多様な事業がそれぞれの領域で専門性を築いてきた、いわば中小企業の集まりのような側面があります。事業ごとに独自の仕組みが育まれてきた分、全社で統一されたデータのフォーマットはまだ整備されていませんでした。各事業が一定の市場ポジションを確立していたため、デジタル化への危機感もそれほど強くなかったんです。

――実際にサービスを使ってみた効果や感想を教えてください。

湯ノ口:直近でも、Sotas様のシステムを活用したことで、大きな成果がありました。特定のリサイクル材を探してほしいという相談があったのですが、従来なら人づてに1社ずつ問い合わせ、2カ月ほどかかっていたであろう調査が、わずか1日で完了しました。周囲も驚いていましたね。

旭化成 湯ノ口氏

これまでもさまざまなSaaSを導入してきましたが、ここまで化学メーカーのニーズに寄り添ったサービスはなかったと思います。従来は情報が分散していましたが、Sotasでは必要な物性情報が一元化され、SDSだけでは把握できない情報も簡単に調べられます。説明書を読まなくても直感的に使える点にも、化学メーカー出身の吉元さんならではの視点を感じます。また、情報を探す側だけでなく、掲載するメーカーにとっても自社製品を知ってもらう機会になるなど、双方にメリットがある仕組みも魅力です。

Sotasの活用で生まれた時間は、お客さまへの提案や新たな価値の創出に充てられます。例えば、こちらから新しい部品を試作してお持ちし、実物を見ながら議論することで、潜在的なニーズを引き出すこともできます。

デジタルの力で情報収集を効率化し、その分、お客さまとの対話や試行錯誤に時間をかけて、より良い製品開発につなげていく。化学業界におけるアジャイル開発が広がっていくのではないでしょうか。Sotasには、そんな未来を切り拓く可能性を感じました。

化学業界のOSを変えるゲームチェンジャーとして。目指すは「Adobe」のような存在

――Sotasを通じて、日本の化学業界にどのような変革をもたらしたいと考えていますか。

吉元: 大きく2つあります。1つ目は、企業間に存在する知識や情報のギャップを埋めることです。化学業界はサプライチェーンが長く、完成品メーカーは原材料の特性を十分に把握できず、化学メーカーも顧客が求める性能やニーズを理解しきれていない場合があります。こうした情報の隔たりを解消し、円滑な製品開発や企業間連携を支援したいと考えています。

2つ目は、M&Aの支援です。日本の化学産業が国際競争力を維持するには、事業再編が重要になります。しかし、業界全体の情報が可視化されておらず、買収先の選定も既存の取引関係や経験則に左右されがちです。そこで、SotasのOSを経営戦略のリサーチ基盤として活用し、これまで接点のなかった企業との組み合わせなど、新たな可能性を見いだせるようにしたいと考えています。

sotas吉元氏

目指すのは、業務効率化にとどまらず、企業の成長戦略やM&Aの意思決定まで支援できるOSです。 理想としては、デザイナーにとってのAdobeのような、化学業界に携わる人なら誰もが使う存在ですね。

――化学業界でAXを進めるための、足元の課題は何でしょうか。

吉元: 重要なのは2つです。まず、安心してデータを預けられる環境を整えること。機密性の高い情報をクラウドサービスに預けることにはリスクが伴うため、私たち自身がセキュリティ体制を強化し、サービスとしての信頼を築く必要があります。今回、国のプロジェクトに採択されたことも、その一歩だと考えています。

もう1つは、完璧を求めすぎず、まずは挑戦する文化を育てることです。ITの発展によって、世界中で情報を得るスピードが劇的に速くなりました。すべてが整うまで動けないようでは、変化に取り残されてしまいますから、動きながら改善を重ねていく。 特に経営層が、そのような意識を持つことが重要だと思います。

日本の化学産業の可能性を解き放つための引き金とは

――日本の化学業界が大きく一歩を踏み出すための要素は、どこにあるとお考えですか。

吉元:ブランディングが不可欠だと考えています。自動車と化学の売上高・純利益はかつてなく近づいており、この3年ほどで逆転する可能性があると見ています。

日本の化学産業は、高品質な製品を、最適な市場に届けきれていない現状にあると思います。だからこそ、マーケットインの発想が求められています。そして、何よりも化学業界の発展に欠かせないのは、商社の存在です。世界の商社売上高の上位を日本の総合商社が占めているのは、日本ならではの強みです。高品質な製品と商社の展開力を掛け合わせ、どの市場に届けるかを見極める。そのための一次情報を集める仕組みづくりを、Sotasで支援できればと考えています。

――大手化学メーカーの立場から、これからの化学メーカーに求められることは何でしょうか。

湯ノ口:日本のものづくりの最大の強みは、昔も今も「高品質」にあると思います。昨今ではコスト削減が重視されがちですが、本来、日本が大切にすべきなのは、品質だと考えています。だからこそ、Sotasをはじめとしたデジタルツールを活用して業務を効率化し、生まれた時間を新たな価値の創出に充てることが重要だと考えています。

社会のトレンドを正確に読み、5年後、10年後を見据えて、日本ならではの高い技術力を生かしながら新しい価値を創出していく。それが、これからの日本の化学業界、ひいては製造業に求められる姿だと思います。話題の分野だけでなく、まだ埋もれている可能性を見出して形にできるメーカーが、これからの製造業を支えていけるのではないでしょうか。

旭化成 湯ノ口氏

「Sotas以前・以後」と言われる未来へ

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

吉元:Sotasとして、化学分野のデータプラットフォームとしての確固たる地位を築いていきたいです。その中でも特に重要なのが、データの保有量ではなく、データを収集するためのプロトコルの構築です。具体的には、2年後までに、世界中の化学に関する専門情報を、誰よりも早く、正確に、そして大量に収集できる「仕組み」を確立したいと考えています。

現時点では、旭化成さんや世界的な大手化学メーカーほどのデータ量は持っていませんし、2年後もそうかもしれません。しかし、データを自動的かつ継続的に収集できる仕組みさえ構築できれば、蓄積される情報量は指数関数的に増えていきます。生意気な発言になってしまいますが、「Sotas以前と以後で化学業界のイメージが変わった」と言われるような会社を目指しています。

湯ノ口:当社では、成長分野はもちろんですが、まだ遠い先の話と思われがちな一方でポテンシャルを秘めたマーケットに、本格的に取り組み始めています。培ってきたノウハウやデータを、変化する市場にいかに活かせるかが今後の課題です。

当社は歴史ある大きな会社だからこそ、変化を起こすには、いい意味で外野からの新しい視点が欠かせません。吉元さんとは化学業界に対する同じ危機感とビジョンを同じタイミングで共有できたことが、良い出会いとなりました。立場の違いを超えて一緒に文化を変え、日本の産業を支えながら、次の世代へバトンをつなげる環境を整えていきたい。Sotasさんとなら、それができると信じています。

sotas 吉元氏と旭化成 湯ノ口氏

吉元:私たちも、旭化成さんと一緒に、化学業界に変化を起こしていきたいです。5年後、10年後に振り返ったときに、この出会いが大きなきっかけだったと言えるような実績をつくっていきたいですね。

そして、業界の皆さんと共有したいのは、変わらなければならないという危機感だけではありません。「自分たちの仕事が、日本の産業のこれからをつくっていく」。そんな自信や誇りも、分かち合いたいんです。

自社カンファレンス「CHEMICAL X(ケミカルクロス)」を企画したのも、その想いからです。旭化成さんをはじめ、業界の第一線で取り組む方々の言葉に触れ、自分たちの仕事に改めて可能性を感じていただける場にしたい。日々の課題に向き合う中でも、「自分たちには、まだまだできることがある」と思える。その自信が、新しい一歩を踏み出す勇気につながるような機会をつくっていきたいと考えています。

sotas 吉元氏と旭化成 湯ノ口氏

【プロフィール】
吉元裕樹(よしもと・ゆうき)
Sotas株式会社 代表取締役社長
化学、自動車、ITスタートアップと多岐にわたる業界を経験し、日本経済における化学業界の重要性を強く感じ、化学業界に特化したAIソリューションを展開するSotasを設立。法令調査を支援する「Sotas化学調査」、自社のデータベースづくりを助ける「Sotasデータベース」、調達を支援する「Sotas ChemMart」を通じて、化学業界のデジタル化を進めている。

湯ノ口智恵(ゆのくち・ともしげ)
旭化成株式会社 機能材料統括部 新価値開発部 用途開発グループ グループ長
半導体などの原材料に関わる分野を経て、現部署へ。現在はエンジニアリングプラスチックを軸とした新しい価値づくりに取り組み、自動車や家電といった従来の用途にとどまらず、これから伸びる市場における新しい用途を探っている。あわせて、未来の社会を見据えたサステナビリティ戦略づくりも担当する。2024年にSotasと出会ったのち、同社のサービスを導入してリサイクル材の調査や調達を進めている。

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ライター:

慶應義塾大学文学部卒業。経営者への取材を中心に、統合報告書、採用広報、社内報、クラウドファンディングページなどを執筆。インキュベーション施設のコミュニティマネージャー、探究学習のファシリテーターとしても活動する。趣味は夢の研究。

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