
患者が当日キャンセルすれば、施術代の50%。ところが、クリニック側から予約30分前にキャンセルされた際に提示されたのは「1000円OFF」だった――。
美容クリニック「UBクリニック」を利用したというXユーザーの投稿が注目を集めている。UB側はその後、機器の故障が原因だったと説明し、1000円は交通費相当として提示したもので、不足分も補填すると回答した。それでも残るのが、「患者の時間はどう扱われるのか」という疑問だ。
体調不良でも50% 患者側には明確なルール
投稿者によると、以前、自身の体調不良で当日キャンセルした際には施術料金の50%を支払ったという。
これは投稿者だけに適用された特別な条件ではない。UB CLINIC自由が丘の公式キャンセルポリシーでは、予約時間の24時間前を過ぎたキャンセルや、患者都合による当日の予約変更・施術中止について、施術代金の50%を請求すると明記している。無断キャンセルや予約時間を過ぎてからのキャンセルなどは100%だ。
体調不良や交通機関の乱れも原則として対象になる。
美容医療は完全予約制が多く、医師や看護師、施術機器をその時間のために確保する。直前にキャンセルされれば、その枠を別の患者で埋められないこともある。患者側にキャンセル料を設けること自体には、そうした理由がある。
だからこそ、今回のケースは逆方向から見ると気になる。
予約30分前に「機器が故障しました」
今回、投稿者がキャンセルを告げられたのは予約の約30分前だったという。
すでに移動中だったとしても不思議ではない時間だ。美容医療の場合、仕事を休んだり、予定を調整したりして予約を入れる人もいる。遠方から電車で向かうケースもあるだろう。
UBCLINICのブランドマネージャーを名乗るXアカウントは投稿に返信し、直前に施術機器が故障したため、やむを得ずキャンセルしたと説明した。また、1000円については「お詫びのクーポン」というより交通費を想定したもので、実際の交通費が1000円を超える場合は不足分も補填するとした。
機器の故障そのものを事前に予測するのは難しい。UB側も何も対応しなかったわけではない。
それでも、「患者都合なら50%、医院都合なら交通費」という対比が強い違和感を残した。
なぜ「1000円」がこれほど引っかかるのか
問題は、1000円が高いか安いかだけではない。
患者側のキャンセルについては、「24時間前」「50%」「100%」と条件が明確に決められている。予約した時点で、利用者はそのルールを背負う。
ところがUB CLINIC自由が丘の公開されているキャンセルポリシーを見る限り、機器故障などクリニック側の事情で直前に施術できなくなった場合、患者にどのような対応をするのかという具体的な基準は確認できない。
つまり、「患者が予約を守れなかったらどうなるか」は先に分かる。
一方で、「クリニックが予約を守れなかったらどうなるか」は、その事態が起きるまで見えにくい。
今回、多くの人が引っかかったのは、この差ではないか。
患者も「時間」を予約のために差し出している
クリニック側からすれば、患者の直前キャンセルによって失われるのは売上だけではない。空いてしまった予約枠、確保していた人員、使用予定だった機器など、その時間のために準備したものが無駄になる。
しかし、それは患者側にもある。
予約時間に間に合うよう仕事を切り上げる。子どもの預け先を確保する。電車に乗って向かう。場合によっては半休や有給休暇を使う。交通費だけを返しても、その時間までは戻らない。
もちろん、UB側の対応が法的に問題だったと断定できる材料はない。消費者庁が示す消費者契約法の考え方でも、消費者側のキャンセル料は、事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分について無効となる。キャンセル料は本来、相手を罰するための金額ではなく、発生した損失をどう扱うかという問題だ。
だからこそ、「同じ50%を払え」という話ではなく、双方の時間や損失をどう扱うかが問われる。
「キャンセル料」だけ細かく決めれば十分なのか
今回の一件は、美容医療だけの話でもない。
美容院、ホテル、飲食店、パーソナルジム、サロン。完全予約制のサービスでは、利用者側の直前キャンセルに料金を設定するケースが珍しくなくなった。
事業者にとって予約枠が大切なのは分かる。一方で、利用者もまた、その予約のために自分の時間を空けている。
にもかかわらず、規約を見ると「客がキャンセルした場合」の説明は細かくても、「店側が直前にキャンセルした場合」の説明はほとんどないサービスもある。
そこに今回の投稿が突きつけた違和感がある。
患者側に50%を求めるなら、そのルールが必要な理由を説明すること。そして事業者側の都合で予約を守れなかった場合にも、あらかじめ対応を示しておくこと。その両方があって初めて、予約を「双方の約束」と呼べるのではないか。
UB側は今回、交通費の不足分も補填すると説明した。だが、問題になった後の個別対応だけでなく、「もしクリニック側から直前キャンセルしたらどうなるのか」が最初から分かる仕組みになれば、受け止め方も違ったはずだ。
予約枠に価値があるのは、店側だけではない。今回の1000円をめぐる違和感は、サービスを提供する側が利用者の「時間」にどこまで価値を認めるのかを問いかけている。



