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静岡・森町「甘々娘」に早朝200人行列 糖度20度超“幻のトウモロコシ”になぜ人は並ぶのか

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トウモロコシ
遠州森鈴木農園 公式インスタグラムより

まだ夜明け前の静岡県森町で、今年も“初夏の風景”が始まった。

午前4時。畑の周辺にはすでに長い列ができ、販売開始を待つ人たちが静かに並んでいる。目当ては、糖度20度前後とも言われる人気トウモロコシ「甘々娘(かんかんむすめ)」だ。

なぜ人々は、前日夕方から並んでまでトウモロコシを求めるのか。

その背景を追うと、単なる“人気野菜”では片付けられない、現代ならではの消費感覚と、“旬”を求める人々の心理が見えてくる。

 

 

早朝の農園にできた長蛇の列

静岡県西部に位置する森町。

茶畑や田園風景が広がるこの地域では、毎年5月下旬になると、トウモロコシの収穫シーズンが始まる。

なかでも全国的な知名度を持つのが、「甘々娘」を育てる遠州森鈴木農園だ。

2026年の販売初日となった5月23日、直売所には販売開始前から200人以上が列を作った。

なかには前日の夕方から並んだ人もいたという。

販売開始は午前6時予定だったが、行列の長さを受けて15分前倒しされた。

「令和8年スタート」

鈴木農園の鈴木弥社長の掛け声とともに販売が始まると、待ちわびた人たちが一斉に直売所へ向かった。

購入したトウモロコシを、その場で皮をむいて食べる客の姿も見られた。

 

糖度20度前後 人気を集める「甘々娘」

「甘々娘」は、強い甘みを特徴とするスーパースイート系のトウモロコシだ。

報道では糖度20度前後と紹介されることもあり、メロンやマンゴー並みの甘さと表現されている。

特に、収穫直後のみずみずしさに定評がある。

森町では「甘々娘」を中心に、“森のとうもろこし”として地域ブランド化が進められている。

収穫は、糖分が最も蓄積されるとされる夜明け前から始まる。

2026年について鈴木社長は、5月の寒暖差が大きかったことで例年以上に糖度が高く、色つやも良い状態だと説明している。

森町では7月末ごろまで販売が予定されている。

 

「朝採れ」に価値が生まれる理由

トウモロコシは鮮度によって味わいが変化しやすい作物として知られる。

一般的に、収穫後は時間経過とともに糖分が変化していくため、“朝採れ”には特別な価値があるとされる。

実際、ネット上のコメントでも、「朝採ってすぐ食べるのが一番おいしい」「収穫後すぐ茹でると甘みが違う」といった声が多く見られた。

一方で、「生で食べられる」と紹介されるトウモロコシについては、「加熱した方がおいしい」とする意見も少なくない。

特にスーパースイート系品種では、鮮度の高さを“生食可能”の理由として挙げるケースが多いが、味の好みについては人によって分かれる。

コメント欄には、「生でも食べられるが、茹でた方が甘みを感じる」「焼いた方がおいしい」という感想も並んでいた。

 

なぜ人は“そこまでして”並ぶのか

今回の行列は、単に“甘いトウモロコシ”だから起きているわけではない。

背景には、“旬を体験する価値”が大きくなっていることもありそうだ。

近年は、果物や野菜でも「期間限定」「朝採れ」「産地直送」といった言葉への注目度が高まっている。

SNSでは、「今年も買えた」「並んで手に入れた」といった体験そのものが共有されやすくなった。

特に甘々娘は、販売時期が限られ、朝早く行かなければ手に入りにくい。

その“限定感”も人気を後押ししているとみられる。

また、都市部ではスーパーで一年中さまざまな食品が手に入る一方、季節感を実感しにくくなったという声もある。

だからこそ、“今しか味わえないもの”への関心が強まっている可能性もある。

 

一方で、過熱する人気への声も

その一方で、人気の高まりによる課題を指摘する声もある。

ネット上には、「購入まで時間がかかる」「以前より品質にばらつきを感じる」「森町には他にもおいしい農園がある」といった意見も投稿されていた。

森町では複数の農家がトウモロコシを栽培しており、「森のとうもろこし」として各地で販売されている。

地元住民のなかには、「以前は昼頃まで普通に買えた」という声もある。

一つの農園やブランドに人気が集中することで、“行列が前提の名物”へ変わってきた側面もあるようだ。

また鈴木社長は、中東情勢の影響によって農業資材や袋類の価格上昇が起きていると説明している。

2026年は事前発注で対応できたものの、2027年以降の価格維持については不透明だという。

 

“旬”を求める時代

興味深いのは、人々が「旬」に強く惹かれていることだ。

桜の開花、初ガツオ、新茶、ぶどう、梨。

日本では古くから、「今しか味わえないもの」に価値を見いだす文化がある。

甘々娘の行列も、その延長線上にあるのかもしれない。

しかも現代では、その“旬”がSNSを通じて可視化される。

「今年も始まった」
「もう並んでいる」
「食べた」

そうした情報が拡散されることで、“季節のイベント”としての存在感はさらに強まっていく。

人々が求めているのは、単なるトウモロコシではない。

“今年も夏が始まる”

その実感そのものを、買いに来ているようにも見える。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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