調査でわかった企業の“盲点”

今年もまた、危険な暑さが予想される季節が近づいてきた。気候変動の影響で年々過酷さを増す夏の環境下において、働く人々の命を守る「職場の熱中症対策」。
実は2025年6月の「改正労働安全衛生規則」施行により、一定条件(※)を満たす過酷な現場での熱中症対策は、単なる努力義務から「罰則付きの法的義務」へと変わっている。しかし、施行から丸1年を迎えようとする今、日本の企業は本当に従業員を守る包括的な体制ができているのだろうか?
株式会社ナック(東京都新宿区)が、現場や製造部門を持つ企業の労務担当者500名を対象に行った最新の調査から、義務化に対する現場の“実態とジレンマ”が浮き彫りになった。
※対象となる職場条件:WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業
約2割が罰則を「全く知らない」…進まない追加対策
調査によると、熱中症対策の義務化自体については約90%(86.4%)の労務担当者が「知っている」と回答した。
しかし、義務違反をした場合の「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という重いペナルティについて「詳しく知っている」と答えたのはわずか30.0%。「全く知らない」という担当者も約20%存在した。
さらに、法改正の施行後に追加で対策を強化したかという問いに対し、約30%(27.0%)の企業が「特になし(追加対応せず)」と答えている。対象外の企業が含まれているとはいえ、制度の重みと現場の対応スピードにはまだ温度差があるようだ。
そもそも熱中症対策は?
現在実施している対策のトップは「エアコン・空調管理(68.6%)」、次いで「水・飲料の常備(51.0%)」という結果だった。
しかし、労働安全衛生規則が求めている本格的な熱中症対策は、単にクーラーをつけて水を置けば終わるものではない。実際の現場では、以下のような多角的なアプローチが不可欠だ。
- 環境の把握: WBGT(暑さ指数)測定器の設置と、数値に基づく作業計画の変更
- 作業管理: こまめな休憩時間の確保と、連続作業時間の制限
- 装備の工夫: 透湿性・通気性の良い服装や、空調服(ファン付きウェア)の着用
- 体調管理: 本格的な夏を迎える前の「暑熱順化(暑さに体を慣れさせること)」や、日常的な健康状態のチェック
企業はこれらを総合的に組み合わせる必要があるが、調査結果からは「空調設備」というハード面の整備が先行し、その他の対策が追いついていない現状が透けて見える。
それでも後回しになりがちな「水分補給」のリアル
多角的な対策が求められる中、最も基礎的でありながら、意外にも対策実施率が約半数(51.0%)にとどまっているのが「水分・塩分補給」だ。
現場では、スポーツドリンクの支給や塩飴の配布など様々な工夫がされているが、依然として「飲み物は従業員が各自で持参する(自己責任)」という運用になっている企業も少なくない。しかし、忙しい業務の中では、つい飲むのを忘れたり、手持ちの飲料が尽きてしまったりするリスクが常につきまとう。
今後強化したい対策として「無料で飲める水・飲料の用意」が空調設備の拡充と並んで同率トップ(16.2%)に挙がっていることからも、労務担当者が「重要性は分かっているが、会社として十分に整備しきれていない」というジレンマを抱えていることがわかる。
水分補給を「個人の意識」から「会社の仕組み」へ
こうした現場の課題に対し、企業の水分補給対策として導入実績の多い宅配水「クリクラ」の法人担当(株式会社ナック)はこう語る。
「熱中症対策は単なる『福利厚生』ではなく、『安全配慮義務』の一環です。現場のお客様とお話しして感じるのは、水分補給を『本人任せ』にするのではなく、会社として仕組み化することの重要性です」
スポーツドリンクや塩タブレット等と併用する上でも、ベースとなる「良質な水」へのアクセスは欠かせない。ウォーターサーバーのような目立つ設備を休憩所や作業場に置くことは、単に水を提供するだけでなく、「ここで水分をとろう」という会社からの視覚的なメッセージとなり、心理的にも行動的にも水分補給を促すトリガーになるという。
事実、その有効性に気づき始めた企業は多く、クリクラの法人導入台数(2025年4月~9月)は過去3年の平均に比べて154%も増加している。
WBGTの管理、適切な休憩、空調服の導入といった総合的な対策に加えて、最も基本となる「水分補給の仕組み化」。本格的な夏が到来する前に、自社の対策に“抜け漏れ”がないか、今一度見直す必要がありそうだ。
調査名 :職場の ‟暑さ対策“ 実態調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2026年4月28日〜5月1日
対象:全国20~60代男女のうち、現場・製造等の職種を抱える会社の労務担当500名



