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WILD CATs’「カビ料理」騒動 閉店後でも保健所は動くのか?

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東京都品川区・荏原町の閉店店「WILD CATs’」をめぐる“カビ料理”騒動が、閉店後のSNS暴露として一気に拡散している。同店の公式アカウントに投稿されたとされる「カビだけ取って出していた」という内容や、食品衛生法違反の可能性などが指摘されているが、SNSでは「時効ではない」「保健所案件ではないか」といった声が相次いでいる。

 

実際問題、閉店した店でも、行政は動けるのか。投稿が削除されたことも確認されているが、証拠はどう扱われるのか。実際に食べて体調を崩した人は何をすればいいのか。そして、店の現場ではなぜ「カビだけ取ればいい」という判断が通ってしまったのか。

今回の騒動の本質は、1枚の厨房写真や1つの炎上投稿にとどまらない。飲食店の衛生管理、閉店後の責任、従業員と経営者の関係、そして客の被害回復が交錯する問題である。

閉店しても「終わった店の話」では済まない

 

WILD CATs’は、2024年12月1日に荏原町駅近くの三間通りで開業したアメリカンダイナーだった。品川経済新聞によると、店舗面積は30坪、席数は43席。店内には店主の私物であるハーレーダビッドソンが展示され、ダーツマシンやジュークボックスも置かれ、レトロな米国風の雰囲気を打ち出していた。フードメニューにはステーキ、パスタ、オムライス、カクテルシュリンプ、ロブスターの香草パン粉焼きなどが並んでいた。

つまり、同店は一時的な屋台や身元不明の無許可営業ではなく、地域メディアにも紹介された実店舗だった。その店が閉店後に、厨房内の不衛生な取り扱いを示唆する投稿で注目を集めた。

しかし、かっこいい店舗の裏側にあったとされるのは、カビの生えた料理や食材の写真である。

客席からは、厨房の奥は見えない。メニュー表に並ぶステーキやパスタ、オムライスの向こう側で、何が仕込まれ、何が捨てられず、何が皿に戻されていたのか。客は知ることができない。

飲食店の怖さは、そこにある。客は味を評価できる。接客も評価できる。店内の雰囲気も評価できる。だが、食材がどのように保管され、どの段階で「これはもう出せない」と判断されたのかは、客には見えない。

 

だからこそ今回の「カビだけ取って提供していた」という文言は、これほど強い嫌悪感を呼んだ。単に不潔だからではない。客が店に預けていた“見えない部分への信頼”を、真後ろから刺す言葉だったからだろう。

「閉店したからもう行政処分は意味がないのではないか」と感じる人もいるだろう。確かに、営業停止処分は営業中の店舗に対してこそ実効性を持つ。しかし、過去の営業中に不衛生な食品提供があった疑いがあれば、閉店したという事実だけで社会的・法的な関心が消えるわけではない。

むしろ、閉店後に出てきた投稿だからこそ、営業中に客が知り得なかった事実が表に出た可能性がある。食べた人の不安は、閉店日を境に消えない。

暴露投稿ににじむ「店内崩壊」の匂い

 

騒動をさらに生々しくしているのは、別の投稿とされる画像だ。そこには、「店長のタカです」と名乗る人物が、オーナーへの不満、スタッフとの関係悪化、衛生管理をめぐる叱責、待遇への不満などをつづっていた。オーナーに裏切られた、マネージャーには話が通じなかった、バーテンには怒鳴られた、広報には衛生管理を責められた、アルバイトには辞められた――。さらに、月30万円でやりがいを搾取されたとも訴えている。そんな趣旨の言葉が並んでいる。

もちろん、この投稿が実際に関係者によるものなのか、書かれた内容がどこまで事実なのかは確認できない。スクリーンショットで流通しているものでしかない。ただ、そこに漂う空気は妙にリアルなのだ。

考えてみれば、閉店間際の店でよくある話は、当たり前だが、ストレスフルな環境だろう。売上が立たない。仕入れは残る。人は辞める。オーナーは赤字を気にする。現場は疲弊する。誰が悪いのか分からないまま、店の中に不満だけが沈殿していく。その果てに、「もうどうせ閉店するのだから」と、誰かがスマホを握る。普段なら表に出ない厨房の写真、内部の不満、責任の押し付け合いが、一気にSNSへ流れ出る。

今回の投稿群が事実なら、WILD CATs’で起きていたのは、単なる食品衛生上のミスではない。店という小さな組織が、内側から崩れていく過程だった可能性がある。

 

閉店後の「時効です」は、笑えない冗談だった

SNS上でさらに反発を呼んだのは、「時効だから許して」と受け取れる投稿の軽さだった。

閉店したから、もういい。店がなくなるから、過去のことは流してほしい。そんな感覚があったのだとすれば、それはあまりに甘い。

食品衛生法は、腐敗・変敗した食品や、健康を損なうおそれのある食品について、販売や販売目的の調理、貯蔵、陳列などを禁じている。違反した場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科され得る。法人の場合には、1億円以下の罰金が問題となる場合もある。

もちろん、今回の件で直ちに刑事責任が成立すると断定することはできない。投稿内容の真偽、実際の提供実態、健康被害の有無、故意性、証拠の残り方によって評価は変わる。

それでも、閉店から数日で「時効」になるわけがない。

飲食店の責任は、シャッターを下ろした瞬間に消えるものではない。客がその店で食べた料理は、閉店後も客の記憶に残る。もし体調を崩した人がいれば、その不安も残る。にもかかわらず、店側とみられるアカウントが冗談めいた言葉で“告白”したのだとすれば、炎上は当然だった。

 

客が怒ったのは「不潔」だけではない

客は、外食に対して小さな信頼を積み重ねている。多少高くても、店で食べる。家庭では出せない味があるからだ。人に作ってもらう楽しさがあるからだ。皿が運ばれてくるまでの時間に、店の空気を味わうからだ。その信頼は、実はとても脆い。

一度でも「厨房ではそんなことをしていたのか」と思わせれば、客はその店だけでなく、似た業態の店まで疑い始める。個人店、小規模店、深夜営業、ダイナー、バー。関係のない店まで、不信の巻き添えを食う。

だから、今回の騒動はWILD CATs’だけの問題ではない。真面目に衛生管理をしている多くの飲食店にとっても、迷惑な話である。1つの店の雑な管理が、街の飲食店全体への信頼を削る。

 

削除されても、スクショは残る時代

SNS時代の閉店は、昔の閉店とは違う。かつてなら、店の内情は常連同士の噂で終わった。厨房の写真も、スタッフの不満も、閉店理由も、店の外に出ることは少なかった。ところが今は、スマホ1つで店の内部が全国に晒される。

しかも、投稿は削除しても消えない。誰かが保存し、誰かが引用し、誰かがまとめる。閉店の挨拶よりも、暴露のスクショの方が長く残る。

WILD CATs’の騒動は、その残酷さを示している。店が消えても、店の評判は消えない。シャッターは下りても、厨房の画像はネット上を歩き続ける。

 

オーナー、店長、現場スタッフ 責任はどこにあるのか

さて。本当にカビの生えた食材が使われていたのか。使われていたとすれば、誰が指示したのか。現場が勝手にやったのか。オーナーは知っていたのか。店長は止められなかったのか。スタッフはどう感じていたのか。

暴露投稿とされる文面には、オーナーへの不満がにじんでいる。だが、責任を全てオーナーに押し付ければ済む話でもない。食品を客に出す現場にいた人間にも、当然ながら判断責任はある。

一方で、現場が「捨てるな」と圧力を受けていたなら、話は変わる。赤字を理由に、食材ロスを極端に嫌う空気があったのか。スタッフが「これは危ない」と言える環境だったのか。衛生管理よりも売上や原価が優先されていなかったのか。

小さな飲食店では、こうした問題が見えにくい。マニュアルはあっても形だけ。責任者はいても不在がち。現場はその場の空気で回る。だからこそ、ひとたび基準が壊れると、誰も止められなくなる。

 

真面目な飲食店ほど、この騒動を他人事にできない

今回の件は、真面目に営業している飲食店ほど不快に感じるはずだ。多くの店は、毎日当たり前のように食材を確認し、怪しいものは捨て、冷蔵庫を清掃し、仕込みをやり直している。原価が痛くても、客に出せないものは出さない。そうやって、見えないところで店の信用を守っている。

だからこそ、「カビだけ取って出した」という言葉は重い。もし事実なら、それは客だけでなく、同じ街でまじめに営業する飲食店への裏切りでもある。

飲食店の価値は、見た目の雰囲気やSNS映えだけでは決まらない。厨房の奥で、誰も見ていない時に何を捨てるか。そこに店の本質が出るのではないだろうか。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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