
東京都品川区・荏原町の閉店店「WILD CATs’」が、過去にカビた料理を「カビだけ取って出していた」と投稿し波紋。食品衛生法や保健所相談の観点から問題点を整理する。
閉店後の“カビ料理暴露”にSNS騒然
東京都品川区・荏原町にあった飲食店「WILD CATs’」の公式X・Instagramに投稿された閉店後の暴露が、SNSで波紋を広げている。
同店は5月18日に閉店したとされるが、その後公式アカウント上で、過去にカビの生えた料理について「カビだけ取って出していた」とする内容を投稿。あまりに衝撃的な告白に、利用経験のある人や飲食店関係者から不安と怒りの声が上がっている。
投稿には、緑色にカビた料理が並ぶ写真も添えられ、画像内には「カビだけ取って料理出してましたゴメンナサイ」といった文言が入れられていたという。
事実であれば、単なる閉店後の愚痴では済まされない。食の安全、従業員の労働環境、そして経営者による現場への圧力まで含め、飲食店の根幹を揺るがす問題である。
「赤字だから給料削る」と脅され、ロスを恐れていた?
投稿では、仕入れ代や食品ロスへの圧力が背景にあったかのような説明もされている。
「仕入れ代もバカにならず、オーナーもロスを気にして、
「赤字だから給料削る」と脅すので、
冷蔵庫のなかの古くなった料理やパンは、ワイルドに、カビだけ取って出してました
卵やひき肉もほぼ期限切れ。
「日本人が潔癖すぎるだけ」
「食べ物を捨てるのはモッタイナイ」
「もう一度加熱すれば大丈夫」
というのが店内の共通認識でした。
従業員もマカナイで食べてましたが、店長が3月に急性胃腸炎になっただけで、みんなノーダメージです」
オーナーがロスを気にし、「赤字だから給料削る」と脅すため、冷蔵庫内の古くなった料理やパンについて、カビの部分だけを取り除いて提供していたという。
さらに、卵やひき肉も期限切れに近い、あるいは期限切れだったとする記述もあった。
もちろん、食品ロス削減は社会的に重要な課題だ。しかし、それは安全性を犠牲にして客に提供することとはまったく別の話である。
カビは「見える部分だけ取れば大丈夫」ではない
SNSでも多く指摘されているように、カビは表面に見えている部分だけが問題とは限らない。
食品の種類や状態によっては、見えているカビの周辺や内部に菌糸が広がっている可能性がある。さらに、カビの種類によっては加熱してもリスクが残る場合がある。
厚生労働省の食品衛生管理の手引きでも、飲食店には食中毒防止のため、原材料の受け入れ、保管、調理、提供まで一貫した衛生管理が求められている。飲食店は「もったいない」よりも先に、客に安全な食品を提供する責任を負う立場だ。
また、自治体の保健所も、カビが生えている食品や腐敗が疑われる食品、不衛生な取扱いを見つけた場合は相談するよう案内している。実際に体調不良があった場合は、医療機関の受診と保健所への連絡が重要になる。
SNSでは「時効ではない」「保健所案件」との声
今回の投稿に対し、SNSでは厳しい声が相次いでいる。
「カビってカビてるとこだけ取ってもダメだった気がする」
「閉店したばかりなら時効では全然ないと思う」
「怖すぎる」
といった不安の声のほか、
「食品衛生法、詐欺罪などが適用されるのでは」
「ここで食事をして具合が悪くなった人は相談した方がいい」
と、法的責任を問う意見も見られた。
ただし、実際にどの法律に該当するかは、提供された食品の状態、故意性、被害の有無、営業許可や衛生管理の実態などによって変わる。
現時点では、SNS投稿の内容がどこまで事実なのか、誰が投稿したのか、オーナーや従業員の認識がどうだったのかは慎重に確認されるべきだ。
食品衛生法違反の可能性は?
飲食店が不衛生な食品を提供していた場合、まず問題になり得るのは食品衛生法上の責任だ。
食品衛生法は、飲食に起因する衛生上の危害を防ぐための法律であり、飲食店には安全な食品を提供するための衛生管理が求められる。食中毒が発生した場合には、医師による保健所への届出や、保健所による調査・指導などにつながる可能性がある。
仮に、カビや腐敗が疑われる食品を認識しながら提供していたのであれば、行政指導や営業停止などの対象になり得る。
すでに閉店していたとしても、過去の営業中に不衛生な提供があった疑いがあるなら、利用者からの相談や証拠の有無によっては、保健所が確認を行う可能性もあるだろう。
詐欺罪や傷害罪に問われる可能性は?
SNSでは「詐欺罪ではないか」との声もある。
たしかに、客は通常、安全に食べられる料理が提供されると信じて代金を支払う。もし店側が、食べられない状態の料理であることを知りながら隠して提供していた場合、理屈としては「客をだまして代金を得た」と評価される余地はある。
また、実際に体調不良や食中毒などの健康被害が出ていれば、傷害や業務上過失傷害などの問題が検討される可能性もある。
ただし、刑事事件として成立するには、証拠や因果関係の立証が必要になる。単にSNSで「カビを取って出していた」と投稿されたことだけで、直ちに特定の犯罪が成立すると断定することはできない。
だからこそ、利用者側にできることは、当時のレシート、写真、体調不良の記録、通院履歴などを残し、必要に応じて保健所や消費生活センター、警察などに相談することだ。
「経営者の圧力が現場の倫理観を壊す」問題
今回の投稿で見逃せないのは、単なる“ヤバい従業員の暴露”ではなく、組織の問題としても読める点だ。
SNSでは、
「暴露している店員がヤバいのは大前提だが、経営者のプレッシャーが現場の倫理観をバグらせる組織の闇が詰まっている」
という趣旨の声もあった。
飲食店は、原価高、人手不足、光熱費高騰など、厳しい環境に置かれている。小規模店ほど、廃棄ロスが経営を圧迫する現実もあるだろう。
しかし、そのしわ寄せを「カビだけ取ればいい」「加熱すれば大丈夫」といった危険な判断で客に押し付けることは許されない。
もし従業員が「ロスを出したら給料を削られる」と感じる環境だったなら、衛生管理以前に、労務管理や組織運営の問題も問われる。
閉店後の暴露でも、客の不安は消えない
今回の件は、すでに閉店した店舗の話である。
しかし、閉店したからといって、過去に食事をした客の不安が消えるわけではない。
「自分が食べた料理は大丈夫だったのか」
「体調不良があったが、関係していたのではないか」
「知らずにカビた食品を食べていたのか」
そう感じる人が出るのは当然だ。
飲食店にとって、衛生への信頼は最も基本的な価値である。味や雰囲気、価格以前に、「安全に食べられる」という前提がなければ、外食は成立しない。
「もったいない」で越えてはいけない一線
今回の投稿で使われた「モッタイナイ」という言葉は、本来とても大切な価値観だ。
食品ロスを減らすことは、社会全体で取り組むべき課題である。
しかし、客に提供する料理において、安全性を疑われる食品を使うことは、食品ロス削減ではない。単なる衛生軽視であり、信頼の切り売りである。
「カビだけ取った」
「期限切れでも加熱した」
「従業員も食べていたから大丈夫」
こうした言い訳は、客にとって何の安心材料にもならない。
飲食店は、客の体に入るものを扱っている。だからこそ、経営が苦しい時ほど、守るべき一線を越えてはいけない。



