
気温の上昇とともに増える体調不良。とくにこの時期に注意したいのが、「梅雨型熱中症」と「熱あたり」だ。いずれも暑さや湿度が引き金となるが、症状や対応策には違いがある。さらに、更年期の人に多い「ホットショック」と呼ばれる不調も見過ごせない。梅雨入り前の今だからこそ、早めの予防と理解が必要だ。
湿度が引き金になる「梅雨型熱中症」
気温の上昇とともに、体調不良を訴える人が増え始めている。とくに注意が必要とされるのが、「熱中症」と「熱あたり」だ。これらはいずれも暑さに起因するが、発症メカニズムや症状には違いがある。
済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師によれば、「梅雨型熱中症」は、真夏日でなくとも湿度の高さにより発汗が阻害され、体温調節がうまくできなくなることで起こるという。体内に熱がこもり、気づかぬうちに脱水症状や体温上昇が進む。梅雨入り前のこの時期にも、湿度の高さに注意が必要だ。
気象予報士の片平敦氏は、「湿度が高すぎると汗が蒸発せず、熱が体内にこもる」と指摘。対策としては、帽子を着用すること、水分補給をこまめに行うことに加え、「ハードすぎない運動で汗をかく練習」や、「手のひらを冷やす」などの具体策も紹介している。
「熱あたり」は“夏バテ型”体調不良
一方、「熱あたり」は、熱そのものよりも熱に伴う環境変化や長時間の暑さにさらされることで起こる体調不良を指す。谷口医師は、「熱あたり」の症状として、疲労感、睡眠の質の低下、食欲不振、集中力の低下などを挙げる。
片平氏は「熱あたりは、いわば“夏バテ”の初期症状。気温が上がり始めるこの時期でも発生する可能性がある」とし、早期の対処を呼びかける。実際、ダイキン工業が行った調査では、夏場に「熱あたり」を経験した人は全体の64.6%にのぼり、全年代で広く確認されている。
更年期世代に増加中「ホットショック」
さらに、近年注目されているのが「ホットショック」だ。これは更年期に起こりやすい、急激な体温上昇と発汗、めまいや倦怠感を伴う症状で、外気温の変化に体が対応できなくなることで起こる。
女性ホルモンの減少により自律神経が乱れやすくなる更年期世代では、とくに「ホットショック」のリスクが高まるとされる。屋内外の温度差が大きい場所に長時間いたり、湿度の高い日中に無理をしてしまうことが引き金になる。
こうした症状は「熱あたり」と類似しており、混同されがちだが、更年期特有の体調変化との関連性が強い点に注意が必要だ。
3つの症状の違いを表で整理
以下に、「梅雨型熱中症」「熱あたり」「ホットショック」の違いと対応策を一覧表にまとめた。
症状名 | 症状の詳細 | 対応策 | その他 |
---|---|---|---|
梅雨型熱中症 | 湿度が高くて汗が蒸発できず、体内に熱がこもり脱水や体温上昇を引き起こす。真夏日でなくても発症。 | ・帽子の着用 ・こまめな水分補給 ・軽い運動で発汗機能を維持 ・手のひらを冷やすなど | 梅雨〜初夏に多く見られ、気温より湿度が原因になるケースが多い |
熱あたり | 暑さや高湿度に長時間さらされることにより、疲労、睡眠障害、食欲低下、倦怠感などが現れる。明確な発熱や脱水はないが体調が低下する。 | ・十分な休息と睡眠 ・涼しい環境の確保 ・生活リズムを整える ・無理な活動を控える | 「夏バテ」とも表現され、全年代で6割以上が経験。ダイキン調査で確認された身近な不調 |
ホットショック | 更年期に見られる体温上昇・発汗・めまい・倦怠感。急激な温度差や湿度の変化に身体がついていけずに起きる。自律神経の乱れが関係。 | ・急な気温差を避ける ・冷房の使用と衣類調整 ・ストレス管理 ・更年期障害の専門治療 | 更年期の女性に多く見られ、ホルモンバランスや自律神経の不安定さと関連。男性でも発症の可能性あり |
見過ごさず、早めのケアを
熱中症が明確な医療的対処を要する急性症状であるのに対し、「熱あたり」や「ホットショック」は、日常の体調管理によって防げる側面が大きい。水分と塩分の補給、冷房の活用、日中の過度な活動を避けるといった基本的な対策が予防に効果的だ。
気温が上がり切らない今の時期だからこそ、「まだ大丈夫」と油断せず、早めに体調への配慮を始めることが重要である。