
フジテレビの報道番組『Live News イット!』(月~金・午後3時45分〜)に出演中の青井実キャスターが、4月9日の生放送中にスタッフに対する不適切な言動について謝罪した。2024年中の複数の現場で、スタッフへの強い叱責や不穏な態度が問題視され、フジテレビのコンプライアンス推進室が調査を行っていた。
調査の発端はスタッフからの報告
同局の発表によれば、青井氏の行動について社内から複数の報告があり、2025年2月から弁護士を交えて調査を開始。その結果、2024年5月のリハーサル中にフリップの演出が上手くいかなかった際、スタッフを強い口調で叱責したことや、同年10月の放送終了直後に速報ニュースの対応をめぐり、ピンマイクを強い調子でキャスター台の上にある箱に放り投げた上で、スタッフに対して厳しい口調で叱責した事案が確認された。
謝罪の言葉ににじむ反省と葛藤
4月9日の生放送で、青井氏は視聴者に対し「日々ニュースをお伝えする報道の現場で、冷静さを欠いた自分の言動に深く反省しています。本当に未熟でした」と頭を下げた。
さらに、「この仕事は一人で成り立つものではない。多くのスタッフに支えられていることを改めて認識し、その思いを受け止めていきたい」と述べ、信頼回復に努める姿勢を強調した。
NHK文化と民放現場の摩擦?
青井氏はNHK出身。公共放送の現場ではキャスター自身が番組の構成にまで意見を持つのが当たり前であった背景もあり、民放の制作体制とのギャップが指摘されてきた。
2024年秋には、バラエティ番組『ぽかぽか』に生出演した際、「イット!」のチーフプロデューサーから“若手ディレクターが怖がっている”とのタレコミが紹介され、本人も「ショックです」とうなだれた。キャスターとしての自負と、現場で求められる柔軟性の間で揺れていた様子がうかがえる。
SNS上にあふれる“現場感”への反応
今回の謝罪を受け、SNS上ではさまざまな意見が飛び交っている。
「NHK時代から下に対してキツい印象があった。やっぱり変わらないなという感想」
「演者と違って、キャスターには人格も求められる。発言が正しくても、人柄が見えてしまうと説得力がなくなる」
「庶民派だった榎並アナの方が、裏表なく共感できた」
「謝って終わりじゃなく、根本的な再教育が必要では?」
一方で、過去のテレビ現場を知る業界関係者からは、「昭和のテレビマンだった自分には、今の現場は厳しすぎる。あの怒声が飛び交う空気は、もう二度と戻らない」といった声も寄せられている。
同志社女子大学教授でコラムニストの影山貴彦氏も、「今回、ようやくコンプライアンス推進室が正常に機能した点は評価できる」とした上で、「本来は自局内でキャスターを育てるべき」と提言する。榎並大二郎アナへの“復帰待望論”がSNSでくすぶる背景には、こうした人材育成への疑問も透けて見える。
信頼回復に必要なのは“姿勢の更新”
今回の一件で問われているのは、個人の資質だけではなく、テレビ局としての姿勢そのものである。青井氏が語ったように「言葉を扱う者」として、キャスターに求められるのは技術や知識だけではない。関係者との信頼関係、そして社会的責任をどう果たすかが、今後のカギとなる。
報道現場の緊張感と、放送業界全体の倫理意識の狭間で揺れるなか、青井キャスターが「謝罪の言葉」だけではなく、「行動」でどう信頼を取り戻すのか。試される日々は続く。