
TikTokの親会社であるバイトダンスが米国従業員向けに自社株買いを通知した。提示価格は1株189.90ドルと、過去の買い戻し価格を上回る。企業価値は回復傾向にあるものの、TikTok米国事業の売却リスクは依然として残る。この高価格での自社株買いの狙いとは何か。バイトダンスの戦略と今後の展望を探る。
バイトダンス、米国社員の株を高値で買い戻し
中国のIT大手バイトダンスが、米国の従業員向けに自社株買いを通知した。今回の買い戻し価格は1株189.90ドルと、半年前の181ドル、1年前の171ドルからさらに引き上げられた。企業価値は3,150億ドルまで回復しており、従業員の士気向上を図る狙いがあるとみられる。
しかし、TikTok米国事業は売却の可能性が取り沙汰されており、従業員にとって将来の不透明感は依然として拭えない。バイトダンスのこの決断は、どのような背景を持つのか。
バイトダンスの企業価値はここ数年で大きく変動している。
・2021年:評価額4,000億ドル超(TikTokの急成長によりピーク)
・2023年:評価額2,000億ドルまで下落(規制強化と市場の不安)
・2024年:評価額3,150億ドル(回復傾向)
・2025年:投資家評価は4,000億ドルの可能性も
2023年には、米国政府がTikTokに対する規制を強化し、企業価値が一時大幅に下落した。しかし、2024年に入り、中国のハイテク市場が再評価される中、バイトダンスの評価も上昇傾向にある。主要投資家であるソフトバンクグループやフィデリティ・インベストメンツなどは、企業価値を4,000億ドル以上と試算している。
高価格での自社株買い、その狙いは?
今回の自社株買いの目的は、主に以下の3点にあると考えられる。
① 米国従業員の士気向上
TikTokの米国事業は売却の可能性が指摘されており、従業員の不安が高まっている。高価格での自社株買いは、従業員に対し「会社の将来は安定している」とのメッセージを発信し、士気を高める狙いがある。
② 財務基盤の安定性をアピール
バイトダンスは非上場企業であるが、財務基盤の強固さを示すことは、投資家や従業員にとって重要な要素だ。企業価値の回復に伴い、高価格での株買い戻しを行うことで、事業の安定性をアピールしている。
③ 投資家への信頼回復
2023年の評価額低下により、投資家の信頼は揺らいでいた。しかし、中国のハイテク株再評価を背景に、バイトダンスの企業価値は回復傾向にある。今回の自社株買いは、投資家に対してもポジティブなメッセージとなる。
TikTok米国事業の行方とバイトダンスの戦略
米国事業の売却問題
TikTok米国事業は、国家安全保障上の懸念から売却を求められている。2025年1月までに売却しなければ、米国内での事業継続が禁止される可能性がある。
バイトダンスはこの状況に対し、米政府との交渉を続けており、今後の動向が注目されている。今回の自社株買いも、TikTok事業の先行き不透明感を払拭し、従業員の流出を防ぐ狙いがあると考えられる。
IPO(新規上場)の可能性
企業価値が回復している中、バイトダンスが今後IPO(新規上場)を検討する可能性もある。これまで非上場を維持してきた同社だが、資金調達や成長戦略の観点から、IPOの選択肢が浮上することも考えられる。
まとめ:バイトダンスの動向に引き続き注目
バイトダンスは、高価格での自社株買いを通じて、従業員の士気向上と企業価値の維持を図っている。TikTokの米国事業の行方は依然として不透明だが、中国のハイテク市場の回復を背景に、企業価値は上昇傾向にある。
今後、TikTokの米国事業がどのような決着を迎えるのか、バイトダンスがIPOを視野に入れるのかなど、その動向に引き続き注目が集まる。