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ディズニーもDEI方針修正、ビジネス成果を最優先へ 今後の方針は?

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米ウォルト・ディズニーが多様性・公平性・包摂性(DEI)推進策を修正し、ビジネス成果を最優先する方針へと転換したことが、ロイターの報道で明らかになった。トランプ政権のDEI政策廃止や保守派の圧力が影響する中、ウォルマートやマクドナルドなどの大手企業も同様の方針変更を進めている。

ディズニー、DEI施策の修正を決定

米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーが、これまで推進してきたDEI(多様性・公平性・包摂性)施策を修正し、ビジネス成果を最優先する方針に移行することが明らかになった。ロイターが入手した社内メモによると、同社はDEIに関連する取り組みの一部を変更し、企業価値向上を評価の主軸に据える。

具体的には、DEIの一環として運営されていたオンラインスペース「Reimagine Tomorrow」への言及を削除し、新たに「MyDisneyToday」に変更。同プラットフォームでは、ディズニーが優秀な人材をどのように集め、企業文化を形成しているかに焦点を当てるとされる。

また、幹部報酬の評価基準も見直され、多様性や包摂性の達成度ではなく、幹部がどれだけ企業価値を向上させたかを測る基準が導入される。これは、近年ディズニーが映画やキャスティングをめぐって保守派から批判を受けたことや、同社のDEI推進策が株価に悪影響を与えたとする指摘が背景にあるとみられる。

米国企業で進むDEI見直しの動き

ディズニーに限らず、米国の大手企業ではDEI施策の見直しが相次いでいる。

小売業最大手のウォルマートは、2023年11月にDEIに関する取り組みの縮小を発表。具体的には、女性やマイノリティが経営するサプライヤーを優先する方針の撤回、従業員の人種公平性に関する研修の取りやめ、さらには社内コミュニケーションで「DEI」という用語の使用を「ビロンギング(帰属意識)」に変更することを決めた。

また、大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドも2024年1月、上級管理職レベルの多様性達成に向けた具体的な目標の撤回や、サプライヤー向けのDEI研修プログラムの終了を発表。企業内の多様性チームの名称も「グローバル・インクルージョン」へと変更された。

さらに、テクノロジー業界でも同様の動きが広がっており、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタは、2024年初頭に「変化する法的および政治的状況を理由に、DEIの取り組みを中止する」との方針を示した。これは、2023年6月に米連邦最高裁が大学入試における人種優遇策を「違憲」と判断したことを受けたものとみられる。

この流れに加わる形で、グーグルも2024年2月にDEI施策の一部見直しを発表した。同社はこれまで掲げていた少数派グループからの従業員採用目標を撤回し、社内文書を通じて「多様性向上に尽力してきたが、今後は意欲的な採用目標は設けない」と通知した。

グーグルのフィオナ・チコーニ最高人事責任者(CHRO)は「政府の契約業者である当社は、この問題に関する昨今の各種判決や大統領令に準拠する際に不可欠なDEI計画の見直しをしている」と説明した。ただし、「トランスジェンダー・アット・グーグル」や「ブラック・グーグラー・ネットワーク」、「障害者アライアンス」といった従業員グループは維持し、企業ポリシーに反映させる方針を示している。

DEI政策転換の背景にある政治的要因

これらの企業のDEI修正の背景には、政治的な要因が大きく影響している。トランプ政権は2024年1月に発表した大統領令により、連邦政府およびその関係機関におけるDEI政策を廃止し、多様性研修プログラムへの補助金交付を停止した。

トランプ氏は、「多様性、公平性、包摂性が制度に注入されたことで、勤勉や実力が『分裂的で危険な優遇制度』に置き換えられた」と主張。さらに、「我々は実力主義の社会を築く」と述べ、性別を「男性と女性の2つのみ」とする政府の公式見解を発表した。

この方針により、DEI推進を進めてきた企業は方針転換を迫られることとなった。特に、トランプ氏の再選を見越した企業がDEI施策を見直す傾向が強まっている。

今後の展望:企業はどこへ向かうのか

ディズニーをはじめとする米国企業のDEI方針転換は、今後さらに拡大する可能性がある。トランプ政権の政策変更を受け、DEIに関する法的リスクを回避する動きが広がることが予想される。

一方で、消費者や投資家の意識の変化も見逃せない要因だ。ESG投資の観点から、多様性を重視する企業の評価は引き続き重要視される可能性がある。特に、Z世代を中心に多様性や包摂性を求める声は根強く、企業ブランドの観点からDEIの完全撤廃には慎重な判断が求められる。

今後、企業はビジネス成果を重視しつつも、社会的評価とのバランスをどのように取るのかが重要な課題となる。ディズニーの決断は、その分岐点を象徴するものといえるだろう。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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