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ACジャパンとは?CMで話題の公共広告の歴史・活動内容・意義をわかりやすく解説

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ACジャパンとは

最近、「ACジャパン」のCMを見る機会が増えているのではないでしょうか?

直近では、フジテレビの不祥事をきっかけに多くのCMが差し替えられ、ACジャパンの広告が頻繁に放送される事態が起きている。かつて東日本大震災の際にも同様の現象が見られたが、今回は放送局の問題が原因である点が異なる。

このように非常時に登場する機会が多いACジャパンだが、実際にどのような団体で、どのような活動を行っているのか。

その歴史や役割を掘り下げ、ACジャパンの存在意義を明らかにする。

ACジャパンとは?

ACジャパンとは、広告を通じて社会問題を啓発する公共広告団体。
正式名称は「公益社団法人ACジャパン」

テレビCMやラジオ、新聞広告を活用し、環境問題や公共マナー、いじめ問題といった幅広いテーマでメッセージを発信している。営利目的ではなく、純粋に社会をより良くするための活動を行っている点が特徴だ。

ACジャパンが広く注目された最初のきっかけは、2011年の東日本大震災である。

震災発生後、多くの企業が自社CMの放送を自粛し、その代わりにACジャパンのCMが数多く放送される事態となった。特に、金子みすゞの詩「こだまでしょうか」を基にしたCMは、視聴者に深い感動を与えた。「こだまでしょうか いいえ、誰でも」という詩の一節が、震災による混乱の中で人々に優しさや思いやりを呼び起こし、心の支えとなったのである。このCMは社会現象を巻き起こし、ACジャパンの存在と意義を多くの人々に改めて認識させた。

それから約10年後の2024年、フジテレビの不祥事が再びACジャパンを注目の的へと押し上げる出来事となった。フジテレビが抱える問題により、多くの企業が広告放送を控えた結果、ACジャパンの公共広告が多くのCM枠を埋めることとなった。環境問題やいじめ防止といったテーマを扱うメッセージ性の強いCMが続々と放送され、視聴者に「ACジャパンとは何か?」「どんな活動をしているのか?」という関心を呼び起こした。

このように、ACジャパンは災害といった非常時やメディアの危機的状況において、社会における重要性を強く感じさせる存在である。そのCMを通じて、多くの人々にとって考えるきっかけを提供しているのだ。

ACジャパンの歴史:誕生と成長

ACジャパンの歴史は、1971年に遡る。この年、大阪万博の翌年の高揚感の中、関西で「関西公共広告機構」として設立されたのがその始まりである。その設立を提唱したのは、当時サントリーの社長であった佐治敬三氏だ。佐治氏は、アメリカの「Advertising Council(広告協議会)」の活動に感銘を受け、日本にも同様の仕組みを導入したいと考えた。高度経済成長期の日本では、「環境汚染」や「公共マナーの悪化」、「人間関係の希薄化」など、社会のひずみが徐々に表面化していた。佐治氏の「こうした問題に光をあて、多くの人々で考えるきっかけをつくりたい」という思いが、機構設立の原動力となったのである。

設立当初の会員数は114社。活動資金は会員が少しずつ資金を出し合う形で賄われた。1974年には全国展開を果たし、「社団法人公共広告機構」として認可され、より規模を拡大させることとなる。その後、全国8箇所に事務局を設置し、現在のような全国組織としての体制が整えられた。

2009年には「ACジャパン(Advertising Council Japan)」と名称を変更。これは、より認知しやすい名称へとアップデートするための措置であった。そして2011年には内閣府より公益社団法人としての認可を受け、現在の「公益社団法人ACジャパン」として活動を続けている。

設立から50年以上が経過した現在、ACジャパンの会員は1000社以上に拡大している。設立当初と比較して、その規模は約10倍にも及ぶ。これまでにのべ800を超える公共広告キャンペーンを展開し、時代を超えて「社会にとって必要なメッセージ」を発信し続けている。例えば、環境保護、公共マナー、高齢化社会、災害支援など、テーマは時代の流れや世相を反映しながら多岐にわたる。その普遍的かつ柔軟な活動が、ACジャパンを支える基盤となっている。

ACジャパンの活動内容と活動意義

ACジャパンの活動の中心は、広告を通じた社会問題の啓発である。毎年20種類以上の広告が制作され、全国規模で展開されるテーマのほか、地域ごとの特性に合わせた地方キャンペーンも行われている。また、災害発生時や緊急時には臨時的なキャンペーンも展開され、状況に応じて柔軟な対応を行っている。

全国キャンペーン

ACジャパンの全国キャンペーンでは、毎年多くの人に影響を与えるテーマが選ばれる。例えば、環境問題、公共マナー、子どものいじめ防止、高齢化社会の課題など、人々の暮らしに直結する幅広いテーマを扱っている。これらのキャンペーンは、テレビCMをはじめ、新聞広告、ラジオ、ポスター、インターネット広告といった多様な媒体を活用して発信されている。

近年のキャンペーンでは、携帯電話のマナーやインターネットリテラシーといった現代の社会問題を取り上げるものも増えている。また、医療や介護に関する問題を扱う広告は、高齢化が進む日本において、特に注目されているテーマである。

地方キャンペーン

全国規模の広告に加え、ACジャパンは各地域の特性や課題に目を向けた「地方キャンペーン」も展開している。これにより、地域ごとに異なる問題へ対応することが可能となり、地元住民に寄り添ったメッセージを発信する役割を果たしている。

例えば、地方の交通安全や地元文化の保護をテーマにした広告が制作されることが多い。これらの広告は、「ご当地CM」として親しまれ、その地域の住民にとって身近な存在となっている。

災害時の臨時キャンペーン

ACジャパンの特徴的な活動の一つとして、災害時に行われる臨時キャンペーンが挙げられる。阪神淡路大震災や東日本大震災などの非常時において、企業広告が自粛される中、ACジャパンのCMが多くの枠で放送された。これらの広告は、被災者を励まし、支援を呼びかける内容が中心であり、社会全体が連帯して問題に取り組むきっかけを作り出した。

特に、東日本大震災の際に放送された金子みすゞの詩「こだまでしょうか」を基にしたCMは、多くの人々に感動を与え、社会現象にまで発展した。このような取り組みは、困難な状況下で人々の心をつなぎ、支え合うきっかけを作る重要な役割を果たしている。

特定団体の支援キャンペーン

ACジャパンは、自らのキャンペーン活動だけでなく、公共福祉活動を行う団体の支援も行っている。「あしなが育英会」や「骨髄移植推進財団」といった団体をテーマにした広告も制作し、それらの活動を広く周知することで、社会全体の支援を促している。このような取り組みは、広告媒体としての役割を超え、社会の中での連帯感を高める重要な役割を担っている。

活動の意義

ACジャパンの広告は、単なる情報発信にとどまらず、人々に考えるきっかけを提供し、行動の変化を促進する社会的な意味を持つ。環境問題の啓発や災害時の支援、公共マナーへの呼びかけなど、これまで多くのCMが視聴者に深い印象を与え、社会課題の解決への第一歩を後押ししてきた。こうした取り組みにより、ACジャパンは単なる広告団体ではなく、「より良い社会を目指すパートナー」としての地位を確立している。

ACジャパンの運営:民間から支えられる中立性

ACジャパンの運営は、民間企業や個人の協力によって成り立っている。この独立した運営体制こそが、ACジャパンの中立性を支える柱と言える。公的資金には依存せず、会員となった企業や一般の個人からの会費を活動資金としている点が大きな特徴だ。

会員制度による支え

ACジャパンの会員は、主に広告に関連する企業で構成されている。現在、正会員の数は1000社以上にのぼり、設立当初の114社から大幅に増加している。正会員は企業が一口12万円の会費を負担し、賛助会員(1口6万円)や個人会員(年間6千円)もこれに加わることで、活動資金が確保されている。会費により運営されているため、ACジャパンは特定の利害関係に縛られない、独立した広告活動を行うことが可能なのだ。

ボランティアによる参加

ACジャパンの活動は、会員企業から派遣されるスタッフによって支えられている。これらの人員の多くは、企業の社会貢献活動の一環として、自発的に参加しているボランティアだ。広告制作の専門知識を持つプロフェッショナルが、委員会を通じて広告キャンペーンの企画や運営に携わる。これにより、質の高い広告を効率的に制作する仕組みが整えられている。

中立性を保つ独自の運営方針

ACジャパンが公的資金を受け取らない理由は、その中立性を保つためである。特定の団体や組織からの影響を受けず、純粋に社会の利益を目指した広告活動に徹する。そのため、扱うテーマも幅広く、いじめ防止や環境保護、災害支援など、特定の利益を追求しない内容が中心となっている。

また、CMやポスターなどの広告枠は、テレビ局や新聞社などが無償で提供する「公共広告枠」を活用している。これにより、少ない資金でも広範囲に影響を与えるメッセージを発信することができる。このような運営方針が、社会的信頼を得ている理由の一つと言える。

民間の力が生む持続可能な活動体制

ACジャパンの活動は、民間企業や個人が主体となって支える「協働型の仕組み」によって可能になっている。企業や広告会社が持つ知識や資源を少しずつ持ち寄ることで、広告を通じて社会問題にアプローチするという独自のモデルを築いてきた。このような体制は、持続可能性の観点からも非常に優れている。

社会貢献活動やCSR(企業の社会的責任)が注目される現代において、ACジャパンの運営体制は、あるべき社会貢献の姿を示す好例といえるだろう。

ACジャパンの存在意義

ACジャパンは、広告を通じて社会課題を啓発し、その解決に向けた意識改革を促すという独自の役割を果たしている。その活動は、社会の中に埋もれていた課題を掘り起こし、多くの人々の目に触れる機会を提供することで、問題に対する認識を広げるものだ。

1971年の設立当初から一貫して、環境問題、公共マナー、いじめ防止、高齢化社会といった普遍的なテーマに取り組み続けてきたACジャパン。その広告は、単なる情報発信にとどまらず、人々に行動を促すメッセージを発信し、社会にポジティブな変化をもたらしてきた。

特に、東日本大震災やフジテレビ不祥事によるCM枠の差し替えなど、非常事態における活動は、ACジャパンの存在意義を改めて浮き彫りにした。震災時には金子みすゞの詩「こだまでしょうか」を基にしたCMが人々の心を癒し、混乱の中で優しさや連帯感を呼び起こした。また、2024年に見られたフジテレビ問題の際には、ACジャパンの公共広告が視聴者に「社会課題を考えるきっかけ」を与えた。

また、ACジャパンの運営体制は、民間企業や個人会員による独立した仕組みで支えられている。この中立性により、特定の利益に依存せず、あらゆる社会課題に公平な目線で向き合うことが可能となっている。企業や広告会社が持つ知識やリソースを少しずつ持ち寄ることで、持続可能な活動を展開してきた点も特筆すべきだ。

今後もACジャパンは、時代の流れに応じたテーマを取り上げながら、広告を通じてより良い社会を目指していくだろう。その存在は、社会課題に対する「気づき」を与えるだけでなく、行動を促す力強いメッセージとして、私たちの暮らしの中で重要な役割を果たし続けるに違いない。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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