NHKは2025年度予算において、400億円の事業収支差金赤字を見込んでいると発表した。3年連続の赤字となる今回は、2023年10月に実施された受信料値下げの影響が大きいが、前年度予算の570億円からは赤字幅が縮小した。不足分は積立金で補填される予定だ。
受信料減と構造改革のジレンマ
今回の赤字の主要因は、受信料収入の減少である。契約数の減少に加え、値下げによる減収が重なり、事業収入は前年度比0.2%増の6034億円にとどまった。大半を占める受信料収入は、契約減により0.2%減となっている。
一方、事業支出は番組制作費の見直しなどにより2.4%減の6434億円となる見込みだ。10月から必須業務となるインターネット配信関連経費は前年度並みの180億円に抑え、従来の上限枠である年間200億円内に収めた。ただし、アプリ開発などの準備経費として別途29億円が計上されている。これは一時的な支出であるとNHK会長は説明しているが、今後のネット配信事業拡大に伴う更なるコスト増の可能性も否定できない。
経営計画修正と持続可能性への道筋
NHKは24~26年度の経営計画の修正も正式決定した。改正放送法に基づく番組インターネット配信の必須業務化と受信料値下げを踏まえ、構造改革を加速し、27年度の収支均衡を目指すとしている。
しかし、人口減少や若年層のテレビ離れが進む中で、受信料収入の増加は見込みにくい。そのため、更なるコスト削減や新たな収益源の確保が不可欠となるだろう。ネット配信事業の収益化は重要な課題だが、既に動画配信市場は競争が激化しており、NHKが独自の優位性を築けるかは不透明だ。
SNSに見る視聴者の声
今回のNHKの赤字予算に対して、SNS上では様々な意見が飛び交っている。公共放送としての役割を評価しつつも、受信料の使い道や番組内容への疑問、経営の効率化を求める声が目立つ。特に高額な出演料や不要な番組制作への批判は根強く、国民の理解を得られる受信料体系とサービス提供のあり方が問われている。
今後の展望と課題
NHKは公共放送として、国民に広く情報を伝える重要な役割を担っている。しかし、急速に変化するメディア環境の中で、その存在意義と持続可能性が問われている。受信料制度の維持と国民の信頼確保のためには、抜本的な改革と透明性の高い経営が求められる。
今後のNHKの動向は、日本の公共放送の未来を占う試金石となるだろう。