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【解説】ブルーカーボンとは?現状と企業が取り組むべき3つの理由

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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(Adobe Stockより)

「ブルーカーボンとは何か」
「企業にどう関わってくるのか」
「ブルーカーボンについて企業はどのように動くべきか」

本記事ではこれらの疑問にお答えしていきます。

ブルーカーボンとは、海藻などの海洋生物が、光合成によって吸収したCO2を蓄積した炭素のことで、地球温暖化対策の新たな手段として注目されています。

しかし「ブルーカーボンが企業にどう関わってくるのか」「取り組むとしてもどうすればよいのか」お悩みではありませんか。

そこで、本記事では以下の内容を解説していきます。

・ブルーカーボンの基本情報
・グリーンカーボンとの違い
・ブルーカーボンの現状と課題
・日本企業がブルーカーボンに取り組むべき3つの理由
・企業の取り組み事例
・ブルーカーボンへの取り組みに向けた支援サービスの紹介

ESG活動の選択肢を広げたい方、海洋保全に関心のある企業の方に読んでもらいたい内容になっています。

ぜひ本記事を参考に、ブルーカーボンによる脱炭素への取り組みで、企業価値を向上させましょう。

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ブルーカーボンとは?CO2対策の新しい選択肢

ブルーカーボンとは、「地球上で排出されたCO2のうち、海藻や海洋生物の光合成によって吸収され、蓄積された炭素のこと」です。

2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書『Blue Carbon』において定義され、地球温暖化対策の新しい選択肢として世界的に注目が集まっています。

ブルーカーボンの主要な吸収源である沿岸・海洋生態系は「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。

ここでは「ブルーカーボン生態系の種類・特徴」と「ブルーカーボンの仕組み」について説明します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.ブルーカーボン生態系の種類と特徴

沿岸・海洋にてCO2を吸収し、炭素を蓄積するブルーカーボン生態系は4つの種類に分かれます。
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

海草(うみくさ)  ・海中で種子によって繁殖する海産種子植物
・比較的浅いところに生育
・アマモ、スガモ等
海藻(うみも)・胞子によって繁殖
・葉色により緑藻・褐藻・紅藻の3種類に分類
・コンブ、ワカメ等
干潟・干潮時に干上がり、満潮時には海面下に没する場所
・干潟の陸近くに発達するヨシ等が茂る湿地帯=塩性湿地
マングローブ林・熱帯や亜熱帯の河川水と海水が混じりあう汽水域に生息する樹木
・国内では鹿児島県以南の海岸に分布
参考:「ブルーカーボンへの取り組み」(環境庁)より引用・加工(2024年1月参照)

表に挙げたものの他に、「淡水カーボン」(淡水域におけるブルーカーボン)の研究も行なわれています。

淡水湖沼・貯水池・ため池の面積はブルーカーボンの対象となっている沿岸域の2倍以上の面積に及ぶため、より多くのCO2を吸収できると期待されています。

参考:「淡水カーボン」(神戸大学・中山研究室)(2024年1月参照)

2.ブルーカーボンの仕組み

大気中のCO2が海水に吸収され、ブルーカーボン生態系が取り込み、光合成をしてブルーカーボンが生成されます。

ブルーカーボンは、吸収した植物自身の生命活動やバクテリアの分解によって再びCO2に戻り循環するという仕組みです。しかし、中には循環せず、海底に蓄積されるブルーカーボンもあります。

これらの仕組みは以下の図の通りです。

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参考:「ブルーカーボン生態系に基づく新たな水産業の展開」(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)(2024年1月参照)

海草・海藻そのものがブルーカーボンを貯めているわけではありません。
吸収されたCO2は4つの貯留庫に貯留されます。

以下の表に貯留庫の特徴をまとめました。

名称場所貯留の仕組み
藻場(もば)内への堆積貯留藻場の堆積物中  枯死した藻に含まれる有機炭素の一部が溜まる
難分解貯留大陸棚の堆積物中枯死した藻などに含まれる難分解性の炭素が、堆積物中に溜まる
深海貯留深海の海底流れ藻になり流されていったものが、深海まで到達して溜まる
難分解性溶存態有機炭素による貯留海中藻の成長過程で海中に放出された難分解性の炭素が溜まる

藻場とは海藻が茂る場所です。海底の泥内は無酸素状態かつバクテリアの分解もゆるやかであるため、海底に堆積したブルーカーボンは、数千年の時間スケールで貯留されます。

ブルーカーボンとグリーンカーボンの違い

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(Adobe Stockより)

ブルーカーボンの有用性が発見される前は、グリーンカーボンが注目されていました。
グリーンカーボンとは、陸上の植物が光合成によって大気中のCO2を吸収し、蓄積した炭素です

違いを以下の表にまとめました。

グリーンカーボンブルーカーボン
吸収する場所陸上海洋
CO2の吸収率約12%/年約30%/年
炭素の貯留期間数十年~数百年数千年

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.吸収する場所(陸上・海洋)

グリーンカーボンは陸上で、森林などの光合成によって吸収されるのに対して、ブルーカーボンは海洋で、藻場などの光合成によって吸収されます。

ブルーカーボン生態系が占める面積は全海洋面積のたった0.2%で、陸地全体に分布するグリーンカーボン生態系と比べて非常に狭い範囲にしか存在しません。

2.CO2の吸収率|ブルーカーボン生態系の方が高い

ブルーカーボンが注目される理由のひとつとして、海洋植物の方が陸上植物より、排出された大気中のCO2を吸収する割合が高いことが挙げられます。

陸上植物のCO2吸収率が年間約12%であるのに対し、海洋植物のCO2吸収率は約30%と2倍以上です。

3.炭素の貯留期間|海底のブルーカーボンは数千年かけて分解される

いったん大気中に出てしまったCO2の寿命は数十年〜数百年といわれるため、CO2の排出量削減だけでなく、大気中のCO2の除去も重要です。

グリーンカーボンの貯留期間は数十年から長くても数百年程度になります。
大気に放出されやすい環境にあるためです。

一方で、ブルーカーボンは酸化されない環境に貯留されやすいため、数千年という長期間炭素を留められます

ブルーカーボンの現状と課題|生態系の減少

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(Adobe Stockより)

CO2の吸収量の高さや貯留期間の長さから、新しいCO2吸収源として注目されているブルーカーボンですが、ブルーカーボン生態系の減少が問題となっています。

マングローブ林と海藻藻場は、世界中を占める面積の最大 67%が失われたと推定されています。

減少を食い止める対策をしなかった場合、ブルーカーボン生態系のほとんどは今後20年のうちに失われてしまうでしょう。

問題は有用なCO2吸収源の消失だけではありません。
森林が破壊されると、それまでその生態系で貯められていたCO2が排出されます。

同じようにマングローブ林が破壊された場合、その排出量は世界の森林破壊による総排出量の10%にあたり、地球温暖化を加速させてしまうのです

ブルーカーボンの重要性が理解されるようになった現在では、2030年までに世界の海の30%を保護区に指定するという目標が掲げられています。(国連・生物多様性条約第15回締約国会議(COP15))

温室効果ガスの排出量と吸収量が差し引き0になるようにする「カーボンニュートラル」の達成に向けて、ブルーカーボンに対する関心が世界的に高まっています。

カーボンニュートラルについては以下の記事で、目標達成の難しさおよび課題の深刻さが語られています。

ブルーカーボンの保全が早急に必要です。

参考:「ABOUT BLUE CARBON」(the BLUE CARBON initiative)(2024年1月参照)

日本企業がブルーカーボンに取り組むべき3つの理由

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(Adobe Stockより)

ここでは日本企業がブルーカーボンに取り組むべき、以下の3つの理由について説明します。

  • 環境保全・地域経済への貢献によるESG評価の向上
  • 島国であることを活かした技術研究のチャンス
  • Jブルークレジットによるカーボン・オフセット(相殺)が可能


それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.ESG評価の向上|環境保全・地域経済への貢献

環境保全や地域経済への貢献により、ESG評価が向上します。ESGとは環境・社会・企業統治の持続可能性を高める活動です。企業のESG評価は投資家の投資判断に強い影響を与えます。

ブルーカーボンの保全・再生活動はその地域の雇用創出にもつながります。ESG評価向上による企業価値向上のためにも、ブルーカーボンへの取り組みはおすすめです。

2.島国であることを活かした技術研究のチャンス

四方を海に囲まれた日本にとって、沿岸域の吸収源としてのポテンシャルは大きく、これはネガティブエミッション技術研究のチャンスとも言えます。

ネガティブエミッション技術とは、大気中のCO2を除去し貯留する技術のことで、ブルーカーボンもその一つです。

2016年に発効した気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」では「2℃目標(努力目標1.5度以内)」が掲げられています。

「2℃目標」とは「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保つ努力をする」というものです。

しかし現状は、パリ協定に同意した各国すべてが削減目標を達成したとしても、2℃目標達成に必要と見込まれる温室効果ガス削減量には届かないという状況です。

そこで、CO2の排出を減らすだけでなく、すでに大気中に排出されたものを積極的に除去し、貯留していく「ネガティブエミッション技術」の必要性が高まっています。

ブルーカーボンの吸収量はカーボンニュートラルを超えた、カーボンネガティブ(二酸化炭素の排出量が吸収量を下回る)の可能性を秘めています。

以下の記事では、ブルーカーボンではありませんがカーボンネガティブへの取り組みについて記載しているので、ご参考ください。

島国であるポテンシャルを活かして、ぜひブルーカーボンの技術研究に取り組みましょう。

3.Jブルークレジットによるカーボン・オフセット(相殺)が可能

ブルーカーボンの創出に向けて国が力を入れている施策に「Jブルークレジット」があります。

Jブルークレジットは、主に企業間で温室効果ガスの排出削減量を売買できる仕組みである「カーボンクレジット」の、日本国内におけるブルーカーボン版です。

これにより、どうしても削減できない温室効果ガスの排出量をカーボンクレジットを購入することで埋め合わせ(カーボン・オフセット)できるようになります。

図で表すと以下の通りです。

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参考:「カーボン・オフセット」(農林水産省)より引用(2024年1月参照)

カーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、信頼性のあるものとするため、国内における排出削減・吸収量を認証する「J-クレジット制度」が2013年より開始しました。

Jブルークレジットの売買は、ブルーカーボン生態系の養殖が支援を受けることで活性化し、企業側にも社会的責任(CSR)の一環として価値ある取り組みになります。

ただし、ブルーカーボンにはより多くの科学的データの収集と、定量化の方法確立という課題があります。

木材に固定されるグリーンカーボンと違い、ブルーカーボンは炭素固定量が場所により様々であり、固定の確実性も低いからです。

Jブルークレジットを活用する際には、「一時的にその場で固定した炭素量がそのままカーボンクレジットになるわけではない」ということをよく理解しなければなりません。

(参考:以下記事)

しかし、Jブルークレジットには、ブルーカーボンによるCO2削減活動を直接行えない場合でも、クレジットという方法で参画できるという大きなメリットがあります。

入手方法も「クレジット保有者から購入する」「J-クレジット制度事務局の実施する入札に参加する」と容易です。

保全活動に直接かかわるだけでなく、Jブルークレジットへの参画によってもブルーカーボンを守れるため、ブルーカーボンへの取り組みの最初の一歩としておすすめします。

企業によるブルーカーボンの取り組み事例

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(Adobe Stockより)

ここではブルーカーボンについて各企業がどのように取り組んでいるのか、事例を紹介いたします。
紹介するのは以下の3つです。

  • 北海道増毛町の藻場造成(日本製鉄株式会社)
  • 葉⼭町の多様な主体が連携した海の森づくり活動(鹿島建設株式会社)
  • 関西国際空港における藻場環境の創造(関西エアポート株式会社)


それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.北海道増毛町の藻場造成(日本製鉄株式会社)

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参考:「我が国におけるブルーカーボン取組事例集」(環境省)より引用(2024年1月参照)

日本製鉄株式会社は宮城・三重・千葉県でも藻場造成に取り組んでいる、ブルーカーボン活動に精力的な企業です。

北海道増毛町沿岸では、2000年ごろ磯焼けが広がり、漁獲が減少するという課題がありました。

磯焼けとは、海藻や海草を食べる魚やウニが増えすぎてしまうなど、なんらかの原因で藻場が消失してしまい、焼け野原のようになった状態を指します。

日本製鉄株式会社は海域の鉄不足が磯焼け要因になりえることに着目し、藻場増殖用の鉄分供給施肥材(ビバリー®ユニット)を開発しました。

増毛漁業協同組合と共同で、2004年から現在まで実海域で実証を継続しています。
施工3年経過で藻場は着実に拡大し、沖合50mまで再生、ウニ漁獲高も増加しました。

その結果、ビバリー®ユニットによって造成された海藻藻場がCO2の吸収源として認められ、2022年に初めてJブルークレジット®認証を受けました。

2.葉⼭町の多様な主体が連携した海の森づくり活動(鹿島建設株式会社)

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参考:「我が国におけるブルーカーボン取組事例集」(環境省)より引用(2024年1月参照)

鹿島建設株式会社は、神奈川県葉山町にて海の森づくり活動を行っています。
葉山海域では、ここ数年間で藻場の衰退が急速に進行していました。

この課題に対し鹿島建設株式会社は、種苗生産技術を活用し、葉山町漁業協同組合や地元ダイバーと連携したアマモ場等の保全活動や養殖によるブルーカーボンの創出を試みます。

結果、藻場の再生試験に成功しただけでなく、雇用、一次産業の底上げにも貢献しました。地域連携による積極的な藻場再生活動を通じて、教育、地域経済、脱炭素へつながる取り組みも実践しています。

学校を核とした環境教育の実施や、朝市の開催などによる地域の経済効果も期待され、ブルーカーボンの循環効果を産出しました。

2022年度にJブルークレジット認証を受け、認証されたCO2吸収量は46.6t-CO2/年です。

3.関西国際空港における藻場環境の創造(関西エアポート株式会社)

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参考:「我が国におけるブルーカーボン取組事例集」(環境省)より引用(2024年1月参照)

関西エアポート株式会社は関西国際空港における藻場環境の創造に取り組んでいます。

関西国際空港は計画当初から海域環境との調和に配慮した造成がなされ、護岸の総延長約24㎞のうちの大部分に「緩傾斜石積護岸」を採用しています。

護岸とは、水害を防ぐため河岸・海岸を堤防などで保護・補強することです。

関西国際空港の緩傾斜石積護岸には海藻類着生用ブロックが設置されており、広い範囲に光が届くことで豊かな藻場環境が作られています。

良好な藻場環境の維持・拡大を目指し、近年ではモニタリング調査のみならず地元自治体と連携して、関西国際空港で採取した海藻の移植による藻場再生にも取り組んでいます。

2022年にはJブルークレジットの認証を取得し、2023年には環境省による「自然共生サイト」の認定を取得しました。

自然共生サイトとは民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域を認定するものです。開港以前からの長きにわたる取り組みが評価されています。

ブルーカーボンへの取り組みにおける支援サービスの紹介

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(Adobe Stockより)

ブルーカーボンは「参画のしやすさ」「企業価値向上へのつながりやすさ」が魅力的な活動です。

cokiでは「サステナビリティ対応支援サービス」を行っておりますので、何から取り組めばよいのかお悩みの方はぜひ一度、以下のバナーよりお気軽にご相談ください。

お問い合わせは無料で承っております。

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本記事が、貴社のブルーカーボンへの取り組みによる企業価値向上に、少しでもお役に立てれば幸いです。

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ライター:

暁 茜(あかつき あかね)フリーランスのライター兼デザイナー。1991年、奈良寄りの京都生まれ。神戸大学経営学部出身。前職では地方公務員として、国や県・住民に向けた町の魅力発信に尽力していた。心身の健康を大きく損ねた経験から、インナー・サステナビリティの推進に努めている。香りと感情の言語化を愛するHSS型HSP。

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