長野県・奥蓼科で温泉宿を営む明治温泉と、兵庫県・神戸市の船舶用機器メーカーのセムコ株式会社。一見つながりがないように思える2社ですが、実は、現在ある共同プロジェクトが進行中とのこと(2021年3月現在)。地域貢献性が高いそのプロジェクトとはどのようなものか、そもそもお2人はどのように出会い、協力関係を育み、未来社会に貢献しようと考えているのか。山の宿 明治温泉の鈴木さんにセムコの宗田さんとのパートナーシップ、ステークホルダーとしての2社の関係についてお話を伺いました。
長野秘境の山の宿 明治温泉と液面計で国内トップシェアを誇るセムコ株式会社の意外な関係
ーーまずは、山の宿 明治温泉について教えていただけますか?
山の宿 明治温泉は長野県茅野市の奥蓼科という場所にある宿です。明治21年に開業し、約130年の間自然豊かな土地で多くのお客さまを迎えてきた歴史があります。私は前オーナーから事業承継し、2018年から経営を行っています。
ーー明治温泉についてセムコ株式会社の宗田さんから以下のようなコメントを頂いているのでご紹介させてください。
「明治温泉は非常に歴史のある旅館です。温泉の前に行くと、奥蓼科の素晴らしい景観を見ることができます。滝が流れていて、それがとても綺麗なんです。古い旅館ですので、今後、お客さまが増えて改装が進んだら、さらに素敵になると思います」
「オーナーの鈴木さんは僕のお手本になっていただいている方です。人との関わり方などを教えていただきましたし、自分が困っている時に励ましていただける、人を元気にしてくれる、すごい前向きで、どんなピンチもチャンスに変えられるパワーのある方です。旅館業はコロナ禍で苦しい状況にもかかわらず、休館中も仲間を励まし、周囲に元気を振りまいていました」(セムコ株式会社 代表取締役社長 宗田謙一朗氏)
鈴木さん「あー嬉しい。ありがとうございます。めっちゃべた褒めやった(笑)照れくさいな~。逆に私こそ、何度壁にぶち当たっても自分で乗り越えていく宗田さんの人間性に惚れて、お付き合いさせてもらっています」
異業種でも経営者に共通する悩み
ーーお2人の出会いの経緯を教えていただけますか?
宗田さんと出会った2020年当時、私は過去に10件を超える老舗旅館の再生を請け負ってきたものの、まだ社長としての経験が浅く自己流の経営でしたので、自己満足に陥って成長が止まってしまったと感じていました。そんな私の悩みを知った友人の勧めで参加した自己啓発系の勉強会で宗田さんと知り合ったんです。
宗田さんが代表取締役社長を務めるセムコ株式会社の製品は、主力製品である「液面計(船舶に設置されたタンクや容器内の液体量を調べる計測器)」を含めて、海上保安庁などの官公庁船や大手船会社で使用され、国内シェアは8割近くに及んでいるそうです。
液面計などの業界のトップ企業の社長さんですので、「すごい人と知り合いになったなあ」と憧れの気持ちを抱いたことを覚えています。その後、約半年間勉強会でご一緒させていただくなかで年齢も近いことから仲良くなり、今では「すーさん(鈴木さん)」「宗ちゃん(宗田さん)」と呼び合う仲になりました。お互いの悩みを共有し、切磋琢磨して成長していく同士といった関係です。
ーー差し支えなければ、当時どのような悩みを共有し合っていたのか教えていただけますか?
やはり人間関係が主ですね。スタッフと意思疎通が上手くいかないとか、勝手に期待を押し付けてしまっていたとか。宗田さんも過去にご苦労した経験があったそうですが、今では社内でコーチングや研修を実施し、スタッフと積極的にコミュニケーションをとっているようです。そういった話がお互いの刺激になりました。
雪国の温泉宿と業界トップシェアの船舶用機器メーカーの異業種連携プロジェクトとは
ーー温泉宿を営む明治温泉と、船舶用機器メーカーのセムコ株式会社という全くの異業種があるプロジェクトを共同で行っていると伺っています。
プロジェクトのきっかけは、勉強会で交わした何気ない会話です。私は旅館業のほかに、周囲の宿や一般家庭に向けて灯油の配達事業を行っているのですが、冬になるとタンクのメーターが雪で埋まって見えないという困りごとを抱えていました。
大手企業や地域のガソリンスタンドが行うような複数台でのルート配達なら移動も効率的で良いのですが、私みたいに各家庭と個別契約して車1台で配達に行く会社からすると、残量を目視できないことや、事前に把握できないことは大きな問題になるのです。
ーーどのような問題が生じるのでしょう?
タンクの残量は家庭に行ってみないと分からないので、どれだけ給油が必要か分からないので事前に余裕をもって調達しておくのですが、そのぶん当然在庫が余ります。しかも調達費は日によって変動するので、例えば70円で仕入れた灯油が翌週60円になると家庭には値引きして出さないといけません。
また、さっき配達したばかりの地域から「今からでも来てくれないか」と頼まれると、雪の中を車で30分また戻らないといけないので時間も経費もかかります。
さらに悪いことには、灯油を配送するほかの会社のなかには、ご高齢だから分からないと思って、実際に補充した量よりも多く申告して余分にお金を巻き上げる悪徳業者もいるんです。残量が十分にあるのに、「半分くらい目盛り減っていたから満タンにしといたよ!」なんて嘘をついて請求してしまうんですよ。
ーー雪国にとってはライフラインとなる灯油でそんな酷いことをする業者が存在するのですね。
ーーなるほど、容器内の液体量を調べる計測器などを扱っているセムコ株式会社の得意分野だったのですね!
思いがけない提案だったので驚きましたが、さらに話を深めてみると、灯油の残量をセンサーで自動計測し、スマートフォンやiPadなどで各家庭の残量を把握できるクラウドシステムが構築できるのでは?という素晴らしい案に発展しました。
これが実現すると、私たちにとっては配達が効率化できるので運送費が削減でき、トラックドライバーにとっては労働環境が改善し、交通事故も減らすことができ、家庭にとっても必要な時に必要な分だけ補充できるようになり、環境にとっては排気ガスが削減できるなど、まさに良いことづくめです。
2021年10月までに設計を済ませたいと思って、今は関連する法律や、寒い地域でもきちんと作動するかなどを調べている最中です。
ーーこれが実現すれば、各家庭に残量を確認する作業もカットできますね。
そうですね。ただ、私はコミュニケーションの機会は絶対に残しておこうと思っています。補充した分の振込を後から依頼して、補充時には声をかけない業者もいますが、私はその都度声をかけて触れ合いを持つ時間を大切にしたいと思っています。
というのも、高齢者が多いこの地域にとっては灯油配達が見回りとして機能しているんです。今日も元気かな?困ったことはないかな?と、意識しながら配達を行うことで、有事の際には力になれることがあるはずです。
山の宿 明治温泉は地域の方々に支えられて長い間続いてきたはずですし、私も地域社会からはたくさん助けてもらっているので、自分ができることで地域貢献をしたいと思っています。
今後、セムコ株式会社に望むことは?
ーー地域への貢献を忘れない姿勢が非常に素晴らしいです。
宗田さんはこうした私の想いもよく理解して協力してくださっているので非常にありがたいです。社会貢献についても2人で話しますが、セムコ株式会社は社会貢献要素が今後もっと強くなる会社になると思います。
私との共同プロジェクトを通しても分かったことですが、セムコ株式会社が扱う液面計測は非常に可能性のある分野です。私のほかにも同じような悩みを抱えている会社はたくさん存在すると思います。セムコ株式会社の力がもっと広く活用されるように、どんどん発信を強化してほしいと思いますね。
船だけでなく、また燃料に限らず、ほかのさまざまな分野でも液面計が活用できると思いますので、従業員の方も宗田さんのように自社の強みをどんどん発信する機会を持たれたらより良くなるかもしれませんね。セムコ株式会社は業界でもトップシェアの実績と、それを支える高い技術力をお持ちです。自信を持って発信できる価値がありますので、今後ともさらなる発展を期待しています。
【企業概要】
有限会社 明治温泉
代表取締役社長 鈴木義明
〒391-0213 長野県茅野市奥蓼科4734
TEL.0266-67-2660
FAX. 0266-67-2450
https://www.meijionsen.jp/