
制服の老舗がつくるのは、単なる衣類だけじゃない。製造現場で出る端材を、子どもたちが「持ちたい!」と思える交通安全グッズに生まれ変わらせた大和被服。その裏には、子どもの本音に寄り添う温かな眼差しがあった。
白バイ隊員の服が子どもを守るバンドに変身
岡山県で100年にわたり警察や消防の制服を作ってきた大和被服が、ちょっとワクワクするアイテムを生み出した。白バイ隊員の制服をつくるときに出る端材を使った「蓄光反射バンド」だ。
秋の交通安全運動に合わせて地元の小中学校へプレゼントされたこのバンドは、ランドセルや自転車、傘などにポンとボタン留めするだけ。車のライトをギュッと跳ね返す反射機能と、暗闇でボワッと光る蓄光機能をあわせ持ち、夕暮れ時の帰り道をしっかり照らしてくれる。
「ちょっとダサい…」そんな子どもの本音に応えて

実は同社、以前にも警察官の制服端切れで「夜光タスキ」を作って配り、大好評を得ていた。けれど子どもたちの様子を追いかけてみると、思わぬリアルな声が聞こえてきたのだ。出し入れが面倒くさい、高学年になるとタスキを着けるのがちょっと恥ずかしい、という素直な本音である。
どんなに安全なものでも、使ってもらえなければ意味がない。そう考えた大和被服はタスキの形をあっさり捨て、いつもの持ち物に付けられるバンド型へチェンジした。「街を守るヒーローと同じ生地」というストーリーも手伝って、子どもたちが自分から着けたくなる工夫を詰め込んだのだ。
捨てちゃう生地に「命を守る仕事」をもう一度
制服を作る過程では、どうしても年間2トン以上の生地が余ってしまう。同社はこれをただ捨てるのではなく、子どもを守る大切な資源として生き返らせた。
根底にあるのは、長年街の安全を支える服を作り続けてきたメーカーとしての思いだ。一方的な「防犯の押し付け」ではなく、使う子どもの気持ちに徹底的に寄り添う。だからこそ、サステナブルな取り組みがこれほど温かく地域に馴染んでいる。
「使いたくなるストーリー」が人の行動を変える
大和被服の試みは、正しいことだから使ってねというスタンスだけでは人の行動を変えられない、という大切な気づきをくれる。
使い手の心理的ハードルをどう下げるか。ワクワクする文脈をどう添えるか。現場の声を聞き逃さず、自社の強みと掛け合わせて解決策をつくる姿勢は、日々の仕事やものづくりにおいても大きなヒントになりそうだ。



