
地域の未利用資源を次世代に繋ぐ挑戦が新たな形を結んだ。キャンプ女子株式会社が運営する天然お香ブランドは、日本に2社のみとなった国産爪楊枝メーカーの菊水産業と組み、製造過程の削り粉を美しいお香へ再生した。
キャンプ女子株式会社が挑む未利用資源のアップサイクル
人と自然のあいだにを理念に掲げ、日本の豊かな自然と職人技術を次世代に繋ぐ活動を続けるキャンプ女子株式会社は、福岡市認定のソーシャルスタートアップ企業だ。同社が展開する天然お香ブランドのクリスタルインセンスは、地域の未利用資源を価値あるものへと生まれ変わらせる取り組みに力を注いでいる。
今回、同社が共同開発のパートナーに選んだのは、大阪府河内長野市に拠点を置く菊水産業株式会社だ。いまや日本に2社しか残っていない国内自社工場での爪楊枝製造を続ける老舗であり、2026年7月1日に創業66周年の節目を迎えた。
この記念すべき日に発売されたのが、北海道産の白樺原木から爪楊枝を削り出す際にどうしても発生してしまう細かな削り粉をアップサイクルした、100%天然植物由来の特別な夏のお香である。
伝統技法の知見を活かした100%天然由来のこだわり

キャンプ女子株式会社のクリスタルインセンスは、もともと日本の伝統的な職人技術の存続と継承を大切にしてきた。福岡県八女市において、電気を一切使わず水車の動力だけで杉粉を挽く地場企業から特別に原料を譲り受け、職人の想いを受け継ぐお香づくりを行ってきた実績がある。
今回のプロジェクトでも、菊水産業の職人が一本ずつ削り出す手仕事と、自然への敬意に深く共鳴したことから開発が始まった。白樺の削り粉の特性を最大限に活かし、一切の化学添加物を使用しないものづくりを目指した。
しかし、白樺は油分が少なく、香油の抽出や無添加での成形、そして燃焼の安定性を保つことは極めて困難とされてきた。それでも、主宰であり香司を務める柴垣道宏氏は数ヶ月に及ぶ試行錯誤を重ね、昔ながらの伝統的な製造技術を調査することで、お香としての強度と安定した燃焼を両立させることに成功した。
空間の澱みを引き算する美しき禅の香りの誕生
完成した製品には、一般的なアロマにあるような華やかさや甘さは一切ない。ベースとなる白樺のウッド香に、古来より日本の夏に寄り添ってきた植物である天然除虫菊の粉末をブレンドしている。
あえて素材そのものの香りを活かすことで、火を灯した瞬間はまるで古き良き実家に帰ったような、夏の夕方の涼風のような、どこか懐かしく渋みのあるスモーキーな香りが広がる。香りを足すのではなく、空間の澱みを引き算し、脳がすっとクリアになって自分と静かに向き合う。そんな禅を感じる質素で静かな佇まいを持った、大人のための香りに仕上げた。
柴垣氏は、菊水産業の爪楊枝を拝見したとき、一本一本に対する職人の誠実さと、削り粉にまで宿る素材への深い愛に、同じものづくりに関わる者として強く共鳴したと振り返る。無添加でお香を成形するのは非常に困難であったが、白樺の純粋な香りと日本の夏に寄り添ってきた除虫菊を調和させ、美しい香りに仕上げることができたと語る。
異業種の協働がひらくサステナブルなものづくりの未来
今回の事例は、一見すると価値の創出が難しいと思われる製造副産物であっても、他業種の技術や熱意あるアイデアと掛け合わせることで、これまでにない高付加価値の商品へと生まれ変わることを示している。
キャンプ女子株式会社のように、地域の資源や伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて再定義する姿勢は、これからの持続可能なものづくりにおいて極めて重要だ。
単なる廃棄物の削減という枠組みを超え、お互いの哲学に共感し合えるパートナーと手を組む。それによって素材の魅力を最大限に引き出し、新しい市場を切り拓いていく柔軟なアプローチは、多くの地方産業やスタートアップ企業にとっても、未来を明るく照らす大きなヒントになるに違いない。



