
伝統工芸の資材製造で培った技術力を基盤に新たな技術革新へ挑む名古屋工芸が自動車廃材を再資源化し過酷なモータースポーツの舞台へと投入する。極限環境での実証実験を通じて循環型社会の新たな可能性を切り拓く。
廃棄ランプが時速300kmの耐久レースを走る
2026年7月開催の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦するホンダトチギレーシングの車両に、自動車のヘッドランプ廃材を再資源化した3Dプリント部品が採用された。
時速300キロメートル級の速度に達する過酷なレース環境において、この廃材由来のゼッケンプレートが実戦投入される。ヘッドランプ廃材の分解、粉砕、そして3Dプリント材料への変換から実際の造形までを一貫して手がけた事例であり、過酷な実戦環境下でリサイクル材料の強度を検証する。
材料開発から100台規模の造形まで自社で一貫完結

この再資源化を担う名古屋工芸は、樹脂廃材を3Dプリント用のフィラメントへ変換する材料開発から自社で行っている。
さらに、同社は100台を超える3Dプリンターを保有する国内屈指の生産体制を構築した。リサイクル業界において「材料の仕込み」から「最終製品の量産」までを他社に頼らず、すべて自社内で一気通貫対応できる圧倒的なインフラとスピード感が、他社に類を見ない明確な差異化点となっている。
本業は五月人形の資材でトップシェアを誇る老舗
異色に見えるこの挑戦の背景には、同社が培ってきた37年の歴史がある。名古屋工芸の本業は、五月人形をはじめとする節句人形工芸品の資材製造、加工、卸売である。
特に五月人形の繊維関連資材である縅や組紐、房の分野においては業界トップクラスのシェアを誇る。「伝統の技術を守るために、次の時代のものづくりへ果敢に挑戦する」という哲学のもと、培った職人魂を3Dプリント量産サービスへと直結させた。
自社のコア技術を定義し直せば異分野でも勝てる
同社の動向は、伝統的な自社資源を全く異なる最先端領域へスライドさせる見事な具体例を示している。
伝統工芸の資材製造で培われた細部へのこだわりを、最先端の3Dプリント量産ファームへと応用した。環境配慮という抽象的なテーマを「モータースポーツの極限環境」という最も言い訳の利かない現場と結びつけて技術証明を行うアプローチは、自社の強みを再定義して新たな価値を創出するサステナブル経営の最高の教科書である。



