日本の技術と精神、英語講座で根付く

日本の伝統工芸「つまみ細工」を体系化し、海外に普及させてきたPalette Japan(大阪府堺市)は4月27日、シンガポールで実施した「つまみ細工国際認定講師育成プログラム」初級講座の修了式を開き、受講したシンガポール人7人全員に認定証を授与した。
同社の発表によれば、全員が中級講座への進級を決めており、現地で講師として活動を始める準備を整えつつある。
初級修了者全員が次のステップへ
講座は全編英語で行われ、教材には大阪・堺の注染染め廃材を再利用するなどサステナブルな視点も導入した。受講者は技術だけでなく「誰に、どこで、どのように届けるか」を問うマーケティング型プレゼン試験にも臨み、伝統工芸をビジネスへ転化する発想を身に付けた。修了式では「自分のワークショップを開きたい」「日本文化イベントで教えたい」といった抱負が相次いだという。
企業・教育機関が注目、国際循環モデルへ
シンガポールのアートスクールや企業からは既にワークショップ開催や講師派遣の打診が届き始めた。現地在住・英語対応可能な講師を育成して送り出す仕組みは、海外展開を志向する日本の伝統工芸業界に新たなモデルを提示する。シンガポールでは近年、日本のかんざし文化を紹介するワークショップが増えており、つまみ細工への関心は着実に高まっている。
拡がるクラフト教育市場
日本のアート&クラフト市場は2033年まで年平均5%超で成長するとする民間調査もあり、教育プログラム化は工芸品輸出に次ぐ収益源として注目される。Palette Japanは今後、つまみ細工にとどまらず、和紙や刺し子など複数の手仕事を学べる「複合型クラフト教育拠点」をシンガポールに構築し、現地講師が現地の言語で教える“循環型”人材育成を目指す方針だ。

太田代表は「輸出や短期ワークショップではなく、現地に根付く仕組みをつくることで、日本人が大切にしてきた『目に見えない価値』を未来につなぎたい」と話す。