
未利用資源を活かした製品開発で注目を集める長寿乃里が、サステナブルコスメアワード2024で2部門を受賞。その背景には、自然と向き合う独自の哲学があった。
サステナブルコスメアワードで2部門を制した長寿乃里の挑戦
株式会社長寿乃里(本社:横浜市)が展開するスキンケアブランド「然しかり」の2商品が、2024年のサステナブルコスメアワードにおいて審査員賞を受賞した。「然しかり よかせっけん」は地方創生部門、「同 ぼんたんクレンジング」はアップサイクル部門での受賞であり、いずれも未利用資源を活用した製品開発が高く評価された。
「よかせっけん」は、南九州に広く分布する火山灰シラスを原料に、独自加工によって整肌成分として用いることに成功した。累計販売数は2900万個を超えるロングセラー商品であり、その泡立ちの良さと肌へのやさしさが消費者からの支持を集めている。
一方、「ぼんたんクレンジング」は、鹿児島県阿久根市で産業廃棄物として処理されていたぼんたんの果皮を原料とし、洗浄成分リモネンを活かした天然由来のクレンジングオイルへと昇華させた。九州の複数地域を原材料加工の拠点として結ぶストーリー性も評価の一因となった。
独自性を示す技術力と地域連携の手法
長寿乃里の取り組みは、単に自然由来の素材を活用することに留まらない。未利用資源という一見すると価値のない素材を、技術とアイデアによって新たな価値ある製品へと転換している点が際立つ。
火山灰シラスやぼんたんの果皮といった素材は、これまで活用が進んでいなかった資源である。その素材の潜在力に着目し、商品としての完成度を高めるための加工技術や香り、泡立ちといった使用感までを追求する姿勢が、他の自然派化粧品ブランドとの差異を生んでいる。
さらに、素材調達から製品化までのプロセスに地域の中小企業や職人を巻き込み、産業としての再循環を意識した設計を採る点も見逃せない。単なる原材料の利用に留まらず、地域の雇用や産業振興にも寄与している。
自然と共に生きる「完然無添加」の哲学
同社の製品開発の根底には、「完然無添加」という理念がある。これは、防腐剤や石油系界面活性剤、合成香料などの添加物を一切使用しない、自然本来の力を活かした製品づくりを目指す姿勢を示す登録商標である。
自然が生んだ素材と、伝統的な知見や職人技とが融合したとき、人の肌や暮らしに本当に必要とされるものが生まれる。そうした考え方は、「自然のままのあなたを美しくする」というスローガンにも表れている。
また、「然しかり」というブランド名には、「自然の然」「天然の然」だけでなく、「偶然」との出会いから「必然」となるような存在へという願いも込められている。偶然見つけた未利用資源を、丁寧に加工し、必然の価値ある製品として世に送り出す。このプロセスが、同社の製品群に一貫した哲学を与えている。
長寿乃里の事業から見える持続可能な経営の本質
長寿乃里の取り組みは、サステナビリティを謳う多くの企業にとって一つの指針となりうる。環境負荷を抑えるという消極的な目標に留まらず、地域資源や未利用素材に積極的な視線を向け、製品としての品質と経済的価値の両立を実現している点は、他社にない強みといえる。
また、こうした活動が単なるCSRの一環ではなく、ビジネスモデルの中核に据えられている点も重要だ。素材の選定から加工、デザイン、販売戦略に至るまで、持続可能性の視点が貫かれており、それゆえに消費者との長期的な信頼関係が築かれている。
今後、化粧品業界に限らず、あらゆる製造業において未利用資源の活用が注目される中で、長寿乃里のような企業の存在は、持続可能な社会の実現に向けた羅針盤となるだろう。