「リユースの輪を広げる」をコンセプトに買取・販売事業を展開する株式会社エコリングは、ブランド品や貴金属のみならず、「壊れたアクセサリー」や「使いかけのコスメ」まで買取を行ってきた実績を持つ。
全国265店舗を展開し、扱う商品は年間50万点以上(2024年10月時点)。
タイやシンガポール、香港、カンボジア、 マレーシア、フィリピン、インドネシアに支社を持ち、世界中に有する独自の流通ルートで日本からリユース商品を輸出していることが特徴だ。
2024年7月、同社は一部の社員に向けて、エコリング タイ支社でのフィールドスタディと海外ボランティア「えがおプロジェクト2024」へ参加するプログラムを3泊5日で実施。参加者は、何を目にし、どのような気づきを得たのか。
座談会形式でフィールドワークに参加したメンバーに話を伺いました。
【座談会参加者】
販売企画部 主任
田中康晴さん
フィールドスタディ運営メンバー
サービスマネジメント部 課長
濱谷勇輝さん
フィールドスタディ運営メンバー
買取部 関西エリア 店長
真弓茉子さん
広報部
鷲津佑人さん
タイ現地で体感した、日本の中古品への「高い評価」
エコリングでは、海外でのフィールドスタディを毎年継続して行っています。どのような目的で行なっているのでしょうか。
田中
エコリングには海外支社があり、買取事業で買い取った商品を海外の流通ルートで販売しています。
今回のフィールドスタディの主な目的は、海外研修を通して商品がどのように売れているのかという流通の実際を現場で見ることでした。
日本とタイの事業の違いや、文化が異なる中での商品の売れ行きなどをその目で見て学ぶために、現地法人のエコリング タイ支社を訪問しました。
濱谷
5、6年前から一部スタッフがボランティアなどを目的に海外へ出張していたところ、その経験がとても学びになったという意見があったため、この取り組みが始まりました。
現在では、海外事業に関連性の高い部署や役職から、毎年フィールドスタディへ行っています。
今回のフィールドスタディでは、どのような学びがありましたか。
濱谷
現地で販売体験をさせていただいたところ、段ボールの一箱単位で買い取るような低単価の商品が、想像以上によい売れ行きだったことには驚きました。
新品ではない中古品でも売れるということは情報として知っていたのですが、目の当たりにして驚きと感動を覚えました。
日本では中古品に対して抵抗がある方が多い一方で、タイは中古か否かではなく、物としての価値を見ます。日本との価値観の違いをはっきりと感じました。
田中
私は6年ぶり2回目の参加でした。
私が所属してる部署では、タイにも多く輸出を行う低単価の商品をよく扱っているため、現地の基本情報は事前にある程度知っていました。ところが、実際に行ってみると私は濱谷とは逆の感想を抱きました。
現地の発展ぶりにとても驚いたんです。6年前と比較して建物数も増えており日本で見かけるような100円均一の店舗も増えており、商品についても品質がさらに重視されていく傾向にあると感じました。
橋本
私は鑑定士として大きな学びがありました。日本で買い取った商品が目の前で売買されていく光景を間近で見れましたし、どのような商品に需要があるのかも実感を持って知れました。
フィールドスタディを経験した後は、買取のお客様から「海外でどのように売れるんですか」と質問をいただいた際にも、実体験をもって具体的に回答できるようになりました。
トロフィーや片方だけのお雛様など、本当に売れるのだろうかと個人的に疑問を抱いていた商品も目の前で売れて行ったので、今後はお客様に自信を持って「こんなふうに売れるので買い取れますよ」とお伝えできます。
タイの小学校で行ったボランティアでも物がとても大事に使われている光景を見て、改めて日本は物に溢れている国なのだと再確認しました。
真弓
私も皆さんと同じで、タイに行くまでは、一部の買取商品について「どうやって売るんだろう」という感覚がありました。
ところが、タイの倉庫を見学すると、ほぼ売れていて空っぽだったことに本当に驚きました。
もしも使い道に迷うような商品の場合でも、エコリングのタイ法人の販売スタッフが、その使い道を一緒に考えたり、活用する他の業者さんを紹介したりと、寄り添って提案していることも知れました。
鷲津
エコリングは業界最大クラスの買取幅がありますが、それらさまざまな商品を需要のある次の方にお届けできていることを生で見られたことは、とても大きな学びになりますよね。
私たちの買い取る商品が日本で使われていた“Used In Japan”であることは、ひとつの安心材料になっているのだなとも実感しました。
海外への輸出は、時には「日本で売れないものを送りつけているのでは」という見られ方をする場合もあります。ですがエコリングでは、各国で需要があるものを選んで輸出しています。
サステナビリティの観点でとても意義がありますし、もっと多くの買い取りをして物流を増やし、日本だけでなく世界に向けて活動を広げていく必要があると、改めて実感しました。
その不用品は、違う国の誰かを笑顔にできる
今回の学びは、業務にどのように生かしていきたいですか?
濱谷
これからは、エコリングがどのように社会に貢献できているかを、現地に行ったことがない方にも実体験をもってお伝えしていきたいですね。
私は直営店とフランチャイズ加盟店を繋ぐ部署に在籍しているのですが、フランチャイズ加盟店の一部の方にはフィールドスタディで現地の事業を見ていただいているものの、全体にはまだ海外でのエコリング事業の様子が知られていません。
現地へ足を運ぶと、環境問題や貧困問題、人と国の不平等の解消など、エコリングの社会貢献のかたちをさまざまな面で体感できます。
エコリングはリユース業界では数少ない国連グローバル・コンパクトへの賛同を表明した企業でもあるので、「そもそも、なぜこれを買い取るのか?誰のためになるのか?」という原点に立ち返り、その意義を自分の言葉で伝えられるようになっていきたいです。
田中
私が所属している部署では輸出だけではなく、国内のBtoBでの買い取りも行っています。
タイの経済発展に伴い求められる品質も向上していますし、取引する企業に提供する情報もアップデートして、不要なものを送ってしまうことのないように、売る立場も買う立場も両方に喜んでいただけるような事業活動に繋げていければと思います。
真弓
私は商品の取り扱いに、これまで以上に注意するようになりました。
例えば段ボールに小物を梱包する時も、丁寧に詰めるだけではなくて、紙袋を使い小分けにするというように、次の方へ渡るまでの間、管理しやすくなる工夫をするようになりました。
橋本
私も、現地で得た気づきを他のスタッフへも共有するようになりました。
使用感のある中古品であっても、次のお客様に渡っていくものだと意識して扱うことが大切だとも伝えるようになりました。お客様が商品を持って来やすい環境を作りたいですよね。
真弓
品物の需要も理解できたことでお客様に具体的な説明をすることが可能になりましたし、この学びは後輩へも伝えていきたいですね。
鷲津
エコリングが不用品を買い取り輸出することで、違う国の誰かを笑顔にできているという光景を現地で目の当たりにすると、改めてとても意義のある事業だと感じます。
サステナビリティを実現していくために、私も広報活動を通して今後もリユースのハードルを下げていければと思います。
限られた時間の中で、真の学びを生むのは「主体性」
今後、フィールドスタディへ参加するエコリング社のメンバーに、メッセージをお願いします。
田中
海外支社に関する情報は、エコリングのスタッフであればすでに知っていることも多いとは思いますが、現地に行って触れて体験するのは大きな違いがあります。
楽しみながら学び、得た経験を仕事に活かしていただければと思いますね。
橋本
アドバイスとしてお伝えしたいのは、時間が限られているので、行く前のリサーチを行った方がより充実したものになるということですね。私は、事前にもっと質問を考えておけばよかったと思いました。
濱谷
私は事前に調べてから現地へ向かいましたが、それでも現地に行って初めて知ることや気づくことが確かにたくさんありました。
橋本
行く前と、帰ってからの疑問をまとめておくことで、さらに学びが深まっていきそうですよね。楽しく、とてもためになる経験でした。
真弓
3泊5日を長いと思わないでほしいですね。決して何回も行ける研修ではないですし、時間も限られています。
あっという間なので、後悔がないように、受け身ではなく主体的に過ごしていただければと思います。本当に多くの学びを得られました。
濱谷
現地に行くと、文化の違いや現地のエコリングスタッフのやさしさや思いやりを深く感じられますよね。今後参加される方には、楽しみ、学んで、充実したフィールドスタディにしていただければと思います。
鷲津
エコリングがこうして活動できるのは、買取させていただくお客様とお買い上げいただくお客様のおかげなのだと改めて思いました。
異国の地で自分の仕事で誰かを笑顔にできているところを見られるのは貴重な経験ですし、エコリングはそれを実現してくれる会社でもあります。
今後、フィールドスタディに参加される方には、お客様とエコリングに、改めて感謝の気持ちを持っていただきたいですね。
この記事をご覧になっている方の中には、エコリングの社員でない方もいらっしゃると思います。
エコリングでは随時社員を募集していますので、ぜひ採用ページをご覧ください。取材をご希望の場合は、私までご連絡ください!
【エコリングスタッフが得たタイでの学び】
- 異文化体験:タイでは中古品に対する価値観が日本とは異なり、物自体の価値が重視されていることを実感。
- 学びの発見:タイでは日本より中古品の人気が高く、文化や市場の違いを体感。
- 自社の事業意義の再確認:低単価商品や壊れた商品も高い需要があり、売れている現場を目の当たりにして驚きと感動を得た。
- 業務への活用:実体験を基にお客様へ具体的な説明ができるようになり、買取業務にも自信を持って対応できるように。
- 持続可能性の意識:世界にリユース商品を届けることで環境問題や貧困問題の解決に貢献していることを再認識。
エコリングは、「壊れたアクセサリー」や「使いかけのコスメ」を、なぜ買い取るのだろう。同社の強みのひとつである「買取幅の広さ」を知ったとき、真っ先に浮かんだのがその疑問だった。世界中に海外支社を有し、高く売れる国を選んで輸出を行うためだと同社は理由を説明している。だが、それだけでは腑に落ちなかった。買い取り、商品管理をし、手続きを経て輸出し、海を渡り各国のエコリング支社スタッフの手を介し、必要とする人まで届けていく。膨大なコストである。私もまた「もったいない」精神で知られる日本に生まれている以上は、物を無駄にしないことの大切さは重々理解し、実践もしているつもりだ。だがそれでも、一企業が「壊れたアクセサリー」や「使いかけのコスメ」に投じるに見合うコストとは思えなかったのだ。
しかし今回、フィールドスタディでタイ支社の事業を体験した方々への取材を経て、手触りのある理解が得られた。エコリングの事業は、そもそも「コストに見合うか否か」で計るものではないのだ。
需要があると知っているから、必要とする人へ届ける。需要がなかったとしても、活用の道を探し出す。必要とする人がどこかにいると、信じている。異国の地に届けられた不用品は、それ自体がエコロジーの問いとなり、物にある価値を問い直す営みをもたらしているのだ。誰が使うだろう。何に使えるだろう。その問いに思考を巡らせることこそが、サステナブルであろうとする姿勢であり、エコロジーへの第一歩なのだ。
世界へ、エコロジーの輪(リング)を広げていく。
疑問の解は、社名にこそ存在した。