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NCホールディングス株式会社

https://www.nc-hd.jp/

東京都千代田区神田鍛冶町三丁目6番地3 神田三菱ビル5階

NCホールディングスのフリーラインコンベヤが拓く未来 こっそりCO2ゼロ×人手不足解消の物流秘密兵器

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ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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NCホールディングスのフリーラインコンベヤ
フリーラインコンベヤ。仮設材(現場などにある足場材など)を基礎としており、安価でどこへでも持ち運びができることも利点。提供:NCHD

物流・輸送業界では、環境負荷の低減と人手不足が大きな課題となっている。その中で注目されているのが、NCホールディングス(以下、NCHD)の完全子会社である日本コンベヤ株式会社が開発を進める「フリーラインコンベヤ」だ。

この技術は、これまで製鉄所や火力発電所向けに開発されてきた長距離コンベヤのノウハウを生かし、一般的な物流現場や土木工事、建設プロジェクトに応用するものである。これにより、大量輸送の効率化とCO2排出量の大幅な削減が可能となる。

NCホールディングス梶原社長
NCホールディングス梶原社長

「これまで、土砂や資材の運搬はダンプトラックに頼るのが一般的でした。しかし、フリーラインコンベヤなら、一度設置すれば長距離でもスムーズに搬送でき、運搬時に発生する排気ガスをゼロにできます」と、梶原浩規社長は語る。

現在、運送業界では2024年問題と呼ばれる深刻な労働力不足が発生しており、長距離輸送におけるドライバーの確保が大きな課題となっている。フリーラインコンベヤの導入により、こうした人手不足問題の解決にも貢献できる。

 

NCホールディングスの事業ドメインと成長の軌跡

NCHDは、搬送システム事業、立体駐車装置事業、再生可能エネルギー事業を主軸とし、それぞれの分野で高い競争力を誇る企業である。2023年度の売上高は約142億円、従業員数は約460名。コンベヤ技術を基盤に、時代のニーズに適応しながら事業を拡大してきた。

同社の歴史は1949年に設立された日本コンベヤ製作所から始まる。創業以来、日本の製鉄所や火力発電所、石灰石プラント向けに長距離コンベヤを供給し、国内で唯一3キロ以上の長距離搬送システムを提供できる企業としての地位を確立した。

このコンベヤ事業の技術を応用し、立体駐車装置事業が誕生した。立体駐車装置の仕組みは、コンベヤの技術を縦方向に応用したものであり、都市部の土地利用の最適化に貢献している。そして、さらに進化を遂げたのが「フリーラインコンベヤ」である。従来の固定型コンベヤとは異なり、建設現場やインフラ整備の分野で、柔軟に設置・撤去が可能な移動式の搬送技術として開発された。

ストックビジネスとしての強みと競争優位性

NCHDの強みの一つは、その事業が「ストックビジネス」である点にある。コンベヤ事業も立体駐車装置事業も、一度設置されると長期間使用されるため、定期的なメンテナンスや修繕が不可欠となる。例えば、日本コンベヤのコンベヤは、設置後50年以上稼働し続けるものもあり、その耐久性の高さが特徴だ。

また、立体駐車装置事業においても、メンテナンスやリプレイス市場が大きな収益源となっている。立体駐車装置はビルの一部として組み込まれることが多いため、簡単に他社のシステムに入れ替えられるものではなく、一度導入されれば長期的な契約が期待できる。

さらに、フリーラインコンベヤについても、設置後のメンテナンスや追加工事の需要が生まれるため、単発の売上だけでなく、継続的な収益が見込める。

「うちは単なる設備販売会社ではなく、運用まで含めたストックビジネスとして成長を続けています」と梶原社長は強調する。

 

アクティビストファンドとの戦い、そして非上場化へ

こうした企業の強さに目をつけられたのか、NCHDは近年、アクティビストファンドとの攻防で大きな注目を浴びた。同社は過去に外資系ファンドからの株式取得を受け、経営方針に関する圧力を受ける状況が続いていた。短期的な利益を求める投資家と、長期的な成長を見据えた経営陣との間で対立が生じ、株主総会ではプロキシーファイト(委任状争奪戦)が繰り広げられた。

この対立が続くことで、経営の自由度が低下し、本来の事業成長に集中することが困難になっていた。結果として、2024年10月にNCHDは非上場化を決断。これにより、アクティビストファンドとの消耗戦に終止符を打ち、持続可能な事業運営へと舵を切ることが可能となった。

「上場企業であることのメリットはもちろんありましたが、経営の自由度を確保し、持続可能な成長を遂げるためには非上場化が最善の選択でした」と梶原社長は語る。これにより、短期的な株価変動に左右されることなく、サステナブルな事業運営に注力できるようになった。

サステナビリティと経済性を両立する革新的技術

日本コンベヤが開発するフリーラインコンベヤは、単なる環境負荷軽減策ではなく、経済的なメリットも兼ね備えている。実際に導入した企業では、トラック輸送と比較してコスト削減効果が顕著に現れている。

「トラックで1日に100台必要だった現場でも、フリーラインコンベヤを導入することで輸送コストが半分以下になるケースがあります。さらに、GHG(温室効果ガス)排出量削減という視点からも、持続可能なインフラ整備に貢献できます」と梶原社長。

加えて、日本コンベヤはフリーラインコンベヤの導入に際し、国や自治体の補助金活用を進めており、初期導入コストの低減も図っている。「CO2削減に関する補助金を活用することで、導入企業の負担を軽減し、より広範な普及を目指します」と、同社の担当者は説明する。

この技術は、特に山間部のダム建設やトンネル工事においても大きな効果を発揮する。例えば、ダムの浚渫作業では、従来はダンプトラックが迂回路を利用して輸送していたが、フリーラインコンベヤを導入することで、運搬距離を大幅に短縮できるケースが多い。

「現場力」を武器に、業界の常識を変える

NCホールディングスのフリーラインコンベヤ
提供:NCHD

日本コンベヤの強みは、単に技術力だけではない。コンベヤ事業を支えるのは、現場での施工力と実装のスピードだ。

「フリーラインコンベヤは、従来の大型コンベヤと異なり、現場ごとに最適な設計が求められます。そのため、柔軟な対応力と高い施工技術が不可欠です」と梶原氏。

同社の現場力は、過去の実績からも証明されている。製鉄所や火力発電所向けの長距離コンベヤは50年以上稼働し続けているものもあり、その耐久性は折り紙付きだ。このノウハウを生かし、フリーラインコンベヤも現場ごとにカスタマイズし、確実な運用を可能にしている。

日本コンベヤが生み出したフリーラインコンベヤは、物流・輸送業界の未来を変える可能性を秘めている。環境負荷を減らし、労働力不足を解消し、経済合理性を追求する──この革新的技術が今後どのように進化し、社会に浸透していくのか、今後の展開が注目される。

【プロフィール
梶原浩規
1962年5月13日生
1986年4月 株式会社三和銀行入行
2000年4月 ソニー生命保険株式会社入社
2006年10月 株式会社カジ・ビジネス・コンサルティング 代表取締役
2012年2月 株式会社ライフプラザパートナーズ入社 本社営業部長
2017年3月 明治機械株式会社(東証2部)入社 太陽光事業部長
2017年7月 NCホールディングス株式会社 取締役監査等委員
2018年6月 NCホールディングス株式会社 代表取締役社長(現任)
2018年6月 日本コンベヤ株式会社 代表取締役 兼 社長執行役(現任)

立教大学 社会学部 社会学科卒
趣味/特技 読書(乱読、漫画、英語原書も含む)、映画鑑賞、音楽鑑賞(主にクラシック)
雑誌での書評連載経験あり。読了書籍5000冊以上、映画視聴は10000本以上。「人に本と映画のおすすめ」は外さない。
座右の銘 動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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