自らのスキルを活かしてフリーランスで働く人が増える一方、日本的な「正社員信仰」は根強く残っています。新卒のタイミングで就職できなかったり、キャリアを中断されたりすると、キャリアも待遇面も不利な状況に置かれがちです。
そんな中、ギグセールス株式会社は、営業スキルを活かしてフリーランスとして働く新しい働き方「プロ営業」を提唱する企業。プロジェクト単位で企業から営業業務を受注し、年間300案件以上の営業支援を行っています。現在、IPO準備中の急成長企業です。
今回はギグセールス株式会社の取締役、福山敦士(ふくやま・あつし)さんに、ギグセールス株式会社のビジネスモデルや、エン・ジャパン株式会社との提携についてお話を伺いました。
「営業」をアウトソースしてプロフェッショナルのフリーランスに任せてほしい
-ギグセールス株式会社はどのようなことをされている会社なのでしょうか?
弊社は「営業」を専門に行う会社です。その活動は、大きく分けて2つあります。
1つ目は「企業のマーケティング支援」活動。
2つ目は「営業フリーランス」の「働き方」支援活動です。
営業職はビジネスを成り立たせるために重要な職種です。昨今では、営業業務は細分化され専門性が高まっています。採用するだけでなく育成が重要です。
しかし「営業をやりたくない」という風潮は強まっており、採用が進まないばかりか、せっかく採用しても、育てているうちに辞めてしまうことも珍しくありません。IT化によるエンジニア不足と同様、営業の採用・育成も難易度が上がっているのです。そこで「営業業務自体をアウトソースしたい」という企業に対し、プロジェクト単位で案件を引き受け、年間300案件以上のマーケティング支援を行っています。
「ギグセールス」の「ギグ」は「バンドでの単発ライブ」を指す音楽用語で「その場にいるメンバーで行われるセッション」という意味です。そこから転じて、単発の仕事を「ギグワーク」と呼びます。「営業」をプロジェクト単位でお願いしたい企業側からのニーズに対し、「営業」というスキルを活かして「フリーランス」として働く「プロ営業」をマッチングさせるのが弊社の仕事です。
「営業」スキルを持つ方も、エンジニアやデザイナーのように、いろいろなプロジェクトにフリーランスとして参画しながら自分のスキルを高められる新しい働き方、それがギグセールスの提唱する「プロ営業」です。
ギグセールスが提供する「プッシュ型のアウトバウンドチャネル構築支援」とは
-「営業」についてサービスを展開されていらっしゃるということですが、最も力を入れている事業は何でしょうか?
我々は、BtoBに特化してサービスを展開しています。
弊社の提供サービスのメインは、アウトバウンド支援「DORIRU」(ドリル)です。マーケティング用語で説明すると「プッシュ型のフルファネルマーケティング」となります。
昨今の、BtoBマーケティングは戦国時代を向かえています。主にBtoB×SaaSのスタートアップ企業を中心に、資金調達環境が整い、その資金の投下先がWEBマーケティングに集中しています。顧客企業からの反響を得るための「インバウンド型」マーケティング施策のための媒体が非常に混み合うようになりました。それによってCAC(顧客獲得単価)が高騰しています。また、インバウンド施策を強めると、競合調査、情報収集レベルのリードが多くなります。見込み客度合いを測るための商談も必要となり、本来のお客様にならない方からの問い合わせなどの対応に追われる懸念があります。
そこに、アウトバウンド支援の必然性があります。本来取引するべき・取引したい見込み客に対して、こちらからコンタクトを取ることで新規開拓を行う一気通貫型の支援が「DORIRU」です。弊社は「アウトバウンド」を起点に事業展開し、そこから派生するサービスも展開しています。
-アウトバウンドは、企業側からアプローチする営業手法ですよね。ギグセールスでは、どのようなサービス内容になるのですか?
弊社の「プッシュ型フルファネルマーケティング」は、アウトバウンド型のマーケティング支援のことです。マーケティングファネルに沿って、ABMを用いたターゲットリスト作成、リード獲得、リードナーチャリング、リードクオリフィケーション、アポイントメント獲得、成約、アップセルまでの流れを一気通貫して支援しています。
単純なアポ獲得代行サービスだと「100件リスト作って電話して、1件アポが取れました」という取り組みがほとんどです。しかし弊社では「連絡しないと課題に気が付かない」準顕在層〜潜在層を対象にしています。中長期的な潜在顧客にも複数回コンタクトし、準顕在層から流入するチャネルを作り上げることを価値提供としています。1to1のきめ細やかな施策を施します。「とりあえずアポを取ります!」という旧来的な営業代行事業会社では実現できない、顧客の売上を最大化させるマーケティング機能を有した営業支援であり、お客様からはマーケティングソリューションとしてご期待いただいております。
参画時、有料講座受講、月額報酬40万円~スタート「正社員」とは異なる新しい「プロ営業」の働き方
-「プロ営業」とはどのような働き方なのでしょうか?
簡単にいうと「業務委託契約」です。が、フルコミッション(完全成果報酬)ではありません。プロ野球の年俸契約に近い形です。
まず、入社時に200,000円かかる有料講座を受講いただいています。PCなどはご準備いただきますが、ほかに必要なツールは会社から支給します。
契約後の報酬は固定でお支払いしており、スキルや経験に応じて変動しますが、初回は400,000円~600,000円/月あたりの報酬レンジです。
公平性・透明性を重視しており、昇格・降格や報酬基準、目指すべき目標を明確化しています。キャリアとしては、独立・起業を目指していただいても良いですし、その後、ギグセールスの仕事受けることも可能です。ディレクションやアカウントセールス希望の場合は、そのままキャリアを続けることもできます。
参考:https://gig-sales.tokyo/prosales/
-なぜ、あえて「業務委託契約」にされているのでしょうか?
私自身、正社員として働いた経験も、自分で独立・起業したことも、上場企業の取締役人事本部長を務めたこともあります。自分の経験と昨今の日本の労働関連の法律の観点から、若いうちは働く時間に制約が生じやすい正社員よりも、時間的制約がなく、数多くの経験を積める業務委託契約の方が実力を伸ばしやすく、本人のためになると考えたからです。
従来型の年功序列・終身雇用型雇用の場合、若手のうちに仕事の数や量をこなすことができません。これは、職能が年次に紐づいた評価制度になっている構造上、仕方のない話です。また、昨今の「働き方改革」の影響で正社員の場合、働く時間的な制限もあります。しかし、スポーツのトレーニング同様、全体練習が終わった後の自主トレが実力をつけるためには重要です。その折衷案として、業務委託契約-我々は「プロ営業」と呼んでいますが「雇用」ではなく「パートナー契約」という働き方を取り入れました。ギグセールスに所属する9割がこのプロ営業としての契約となっています。
-「プロ契約」と聞くと、とても厳しい働き方のようなイメージがあるのですがどうでしょうか。
基本的には普段の業務において残業はほとんどありません。
自主的に残るメンバーもいますが、会社として強制することはしません。
というのは、BtoBの営業なので、お客様が帰社されたら基本は終了です。
だいたい18時半ごろに業務を終え、まとめ作業に入り、19時ごろにはほとんど帰社されています。
プロ営業との面談も月に1度行っております。もし目標を達成できない方がいた場合は、改善施策を一緒に考え目標数値の見直しなども行います。なお、基本的には全員出社するスタイルですが、交通費も支給するなど、動き方は一般的な社員とほぼ一緒です。ただ、自身の仕事の成果が報酬に素早く反映するところや、その透明性を担保しているところが違いかもしれません。
業務委託契約だからといって、他人行儀ということはなく、同じオフィスで机を並べ、複数のプロジェクトを一緒に取り組み、チームとしての連帯感を大切にしています。通常の業務委託契約関係ではあまりない「教え合う」文化や、それでメンバーが出した結果がチームの勝利を招き、より大きなビジネスチャンスへとつながるという好循環にもつながっています。
-「プロ契約」は新しい業務委託契約のあり方なのですね。
「プロ営業」とは、企業と対等な立場であることを意識した呼び方です。
「プロ営業」と弊社は「雇用」という関係ではなく、対等な「パートナー」です。
世間では、一般的に「正社員」という働き方が「是」とされる一方、学歴や職歴、家庭の問題で正規雇用が難しい方もいらっしゃいます。「プロ営業」は、そうした方々にとっても、実力を身に付けられ、高めの固定報酬が得られる仕組みと環境場所をつくっております。
上場を通過点とし、5年後に100億円の売上を目指す
-今後の取り組みや目標について教えてください。
弊社の目標は現在3つあります。
1つ目は、IPOです。弊社は現在IPOに向けて取り組んでおります。その取り組みの一環として、コーポレートガバナンスを強化しているところです。売上一辺倒ではなく、上場企業としてふさわしい会社の体制を作り上げ、働く仲間たちが安心して働けるように、ひいてはお客様に安心して発注していただけるように取り組んでいます。
2つ目は、規模の拡大です。現在の目標は2026年度、売上100億円。これは決して我々都合の話ではありません。月並みですが「社会の問題解決」のためです。多くの企業・働き手に価値提供するためにも、社会の公器として認められるためにも、早急に規模を拡大することが重要だと認識しています。
3つ目は、「プロ営業」という働き方を世間に定着させることです。弊社が規模を拡大することで、影響範囲を広げることで、ギグセールスの「プロ営業」という働き方・仕組み自体をメジャーにしていきたいです。「プロ営業」の働き方自体を応用することで、大手企業の新規事業を生み出すことも可能です。それによって新しく産業を生み出すことが実現できます。
ギグセールス株式会社のステークホルダーへの想い
役務を提供する取引先の企業は多数ございます。そのため、一社を選ぶことが難しいのですが、今回は、我々がビジネスを大きくするきっかけとなったエン・ジャパン様に厚く御礼申し上げたいと思います
-エン・ジャパンさんとの業務提携について教えていただけますか?
エン・ジャパンからいただいたのは単純な「取引」ではなく「業務提携」の打診でした。これが良いパートナーシップを結べた要因と考えています。
弊社は、ありがたいことにお客様が増え、人手が足りない状況でした。エン・ジャパンと業務提携をすることで、我々が案件を受注した後に、エン・ジャパンの保有する人材リソースを活用、これにより事業成長をさらに加速できると描けたからです。
弊社は上場を目指してはいますが、まだ小規模な会社です。にもかかわらず、形だけの提携ではなく、中長期的な目標を握った本質的なパートナーシップを結べたのは、対外的なアピールだけでなく、社内でも事業に対する自信にもつながっています。
これも、社内の調整などにご尽力いただいた取締役の岩﨑様のおかげです。本当にありがとうございます。
-実際に業務提携をされてみて、どのような良い点がありましたか?
大きく2点あります。
1点目は、安心して案件の獲得ができるようになったことです。我々の業務は、人手が多ければ売上が上がる、いわゆる労働集約型モデルです。エン・ジャパンにパートナーになっていただいたことで、「人材が足りずに案件に対応できない」という不安がなくなりました。
2点目は、第三者に対するスキルトランスファーです。営業のノウハウについては、NDA(秘密保持契約)を交わしたうえで業務引継ぎを行ったのですが、その中で新たな発見があり、我々も明文化できていなかった暗黙知に気が付くことができました。「人は教えることによって、最もよく学ぶ」といいますが、それを実感しました。おかげでコールの方法、ディレクターの育成や、ディレクション自体を改善することにつながりました。
-エン・ジャパンさんとの業務提携によって、メンバーを増やすということはあるのでしょうか?
現在は40名ほどですが、年内には100名まで拡大したいと考えています。
一般的には「採用」というのかもしれませんが、弊社では「事業への参画」という考えです。弊社が提唱する「プロ営業」という働き方を広め、雇用の流動性を高めることにもつなげていきたいですね。
日本の採用/労働環境に一石を投じたいと思います。
現在日本では、一般的に就学後、新卒入社のタイミングを逃してしまったり、育児や介護などの家庭の事情で一時的にキャリアブレイクすると、採用市場において弱い立場になりがちです。企業の立場で考えたら一定のリスクを負うため当然なのですが、一方でどの企業も「人手不足」を嘆いております。ここに1つ捻れが生じています。
ギグセールスでは、学歴や職歴を若いうちに形成できなくても、学べる・働ける環境をつくり、成果報酬ではなく固定報酬を約束し、生活の基盤を安定させたうえで、次のキャリア形成に挑戦できるという環境を整備しています。弊社では「プロ営業」と呼んでいます。
特に、野球部出身の方向けに積極的に募集を行い、独立リーグの球団へのスポンサードもしています。独立リーグというのは、NPBの一歩手前の環境なのですが、報酬はわずかです。そこで20代を野球一筋で過ごすと、ドラフト指名されなかった場合、その後の就職先は絞られます。その後の自身のキャリア形成における目標設定がないままに「とりあえず就職」をした場合、業界・職種以前に、サラリーマンとしての働き方にミスマッチが起きるケースも少なくありません。野球だけではなくプロスポーツ選手全般にとって、その後のキャリア形成環境は、採用/労働市場における根深い問題の1つだと認識しております。
正規雇用でなくても、安定した労働環境と高い報酬を同時に目指せる場所をつくり、キャリアの成功事例を生み出すことが、より多くの人に勇気と希望を与えられると思います。現状を嘆くだけでなく、机上の空論ではなく、現実を変えられるよう、実態を伴わせ続けられるよう、引き続き精進いたします。
(プロフィール〉
福山 敦士(ふくやま・あつし)
1989年 横浜生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、新卒でサイバーエージェントに入社。グループ会社(シロク社)の取締役営業本部長。27歳で独立・起業後、複数事業を立ち上げ3度のM&Aを実行。東証一部上場企業のショーケース社へのM&A時、同社取締役COOを歴任。PMI、組織改革、採用育成、人事制度再設計、企業買収、新規事業開発などに従事。2020年ギグセールスに参画、取締役就任。IPOに向けての全社の経営執行を務める。営業の専門家として著書多数。累計10万部超。各種教育機関にて学習コンテンツ開発も行う。野球16年間、甲子園ベスト8
【企業概要】
ギグセールス株式会社
代表取締役社長 小林 竜大
設立:2017年3月1日
所在地:〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-32-16 COM・BOX 4階
事業内容:BtoBセールス・マーケティング支援/営業フリーランスのマネジメント