ステークホルダーが語る真実が正しい企業価値を生み出す
尾前損害調査オフィス株式会社は、火災保険のプロフェッショナルが契約者の立場で損害を調査し、適切な保険金の受け取りを支援するサービスを提供する企業。業界で数少ない損害保険会社出身のコンサルタントが建物の損害を鑑定して申請を支援するため、クライアントから圧倒的な支持を獲得し、顧客から顧客へと口コミによって事業を拡大している。
一方で、日本は火災保険の契約者をサポートする「保険契約エージェント」などの仕組みが脆弱であり、多発する自然災害で増加する保険金請求の機会をビジネスチャンスと見た業者が参入して玉石混交の状態。業界がブラックボックス化する中で「弊社の事業を第三者の視点で可視化してくれるcokiは、弊社の正しい企業評価につなげてくれる大きな存在です」(尾前損害調査オフィス株式会社 代表取締役 尾前美幸さん)。
今回は尾前社長、同社統括マネージャーの土井隆さん、そしてcokiを運営する株式会社Sacco 代表取締役の加藤俊が、尾前損害調査オフィス株式会社とcokiとの関わりを語りながら、ステークホルダーが語る真実が生み出す企業価値と、サステナブル社会の企業の在り方について展望した。
損保会社出身のプロフェッショナルが建物の損害を調べ、保険会社への申請をサポート
尾前損害調査オフィス株式会社さんには、cokiに何度か登場していただいていますが、この座談会で初めて知る読者もいると思います。改めて御社についてお聞かせください。まずは、自己紹介からお願いします。
尾前
尾前損害調査オフィス株式会社の代表をしています。弊社の主な事業内容は建物の損害調査です。お客様が気づかれない自然災害によって壊れた家屋の損害を私たちプロの目線で調査し、損害保険会社への申請をサポートするサービスを提供しています。
土井
尾前損害調査オフィス株式会社で統括マネージャーを務めています。社長の尾前が会社全般、私は主に営業の責任を担っています。
尾前
もともと土井と私はAIU損害保険株式会社(現AIG損害保険株式会社)の火災保険のエキスパートを集めた部署に在籍していました。土井は部署が発足して間もない2003年頃から所属し、その後に私が加わり、契約者から寄せられる火災保険の申請に対応していました。
業務を通じ、家屋がダメージを受けているにもかかわらず保険の申請をしていないケースが非常に多いことがわかりました。また、申請している方でも申請箇所のごく一部にとどまることを知り、火災保険のプロとしてその原因となっている保険会社と契約者との情報の非対称性を改善したい、との想いから起業しました。
加藤
損保会社時代は土井さんが上司で、部下だった尾前さんが社長に就任されました。立場が逆転したのですね。
尾前
はい。保険業界の堅いイメージを変えることができないかと、戦略的な背景も含めて私が代表に就任しました。
土井
実は法人を設立するにあたり関係者の意見を聞いたのです。すると、満場一致で「社長は尾前がいい」と。火災保険の業界はどうしても堅いイメージがあり、男性社会です。女性の社長によってそのイメージを変え、女性の活躍を推進する時代にもマッチすると考えました。
また、女性で私より若い尾前が社長になることは、クリーンなイメージにつながるという考えもありました。実際、火災保険申請サポートの業界は、「なんとなくうさんくさいイメージ」があり、世間からあまり良い印象をもたれていませんでしたので、この戦略は正しかったと感じています。
ブラックボックスのような「業界」の中で、公正な業務をいかに伝えていくか
「うさんくさいイメージ」に関連しますが、御社以外の火災保険申請サポートを行う業者には、正確な調査や申請を行わない、信頼性に疑問符がつくところもあると聞いています。現状の業界の傾向や動向はいかかでしょうか。
尾前
2019年に千葉県が台風被害を受け、建物被害が増加したことで需要があると考え、参入する会社が増えました。しかし、その会社の多くは保険に関する正しい知識がないためにサービスの質に問題があり、手数料目当てと思われる悪質な会社も出てきたのです。結果、業界全体がそのように見られてしまい、まだその状況から抜け出せずにもがいている状態です。弊社がそうした会社とは違う、ということを知ってもらうためには、1人ひとりのお客様に真摯に向き合い、地道に取り組んでいくしかないと感じています。
土井
そうした業者のうたい文句として「保険のプロが見る」「建築士が見る」といったキャッチコピーを見かけますが、家屋の火災保険の調査・申請業務のプロと言えるのは、損害保険会社の火災保険業務に長く携わり、火災保険の約款を熟知している実務経験者か、もしくは登録鑑定人の試験に合格し、鑑定会社で実務に携わってきた有資格者のみです。それだけの専門的な知識と経験がないと身に付かないスキルだからです。損保業界でも非常にニッチで特化した分野なのです。
尾前
私たちはもともと損保会社で保険金を支払う側にいた経歴があり、現在この業界で数少ないプロです。ただ、初めて保険金の申請支援サービスを利用しようとするお客様には誰が本当のプロなのか、そうではないかを見極めるのは難しいでしょう。
そうした現状で、cokiの掲載記事は客観性をもって、弊社について正確に伝えてくれていますので、大きな力になっています。
加藤
過分なお言葉を頂戴し、大変ありがたく思います。同時に恐縮です。
尾前
本当にそうなんです。弊社の事業内容を正しく書いていただくだけではなく、私たちの理念をきちんと伝えていただき、記事を読んだ友人や知人にも「いいことをしているね」と言ってもらえています。私たちにとって、そしてこの業界にとっても本当にありがたい媒体です。
土井
cokiさんを知ったのは、弊社のステークホルダーからの紹介でしたが、話を聞き、宣伝を目的とした媒体ではなく、客観的に評価してくれる媒体だと感じました。ブラックボックスのような業界で、正当な業務を行っている会社があることが正しく伝われば、業界の透明度を高められる。イメージアップにつながると思い、すぐに取材をお受けすることにしました。
加藤
私は当初、火災保険申請支援サービスといった業界があること自体を知らなかったのですが、お話を聞く中で非常に正しいことをされていると感じました。保険会社と契約者との情報が非対称で、自己申告制であるため、本来おりるはずの保険金が受け取れない。その非対称になっている情報を適正化していくのが御社のミッションです。ストーリーとして圧倒的に正しく、すばらしいと思いました。
さらに、契約者の情報の少なさに便乗したり、リフォームを抱き合わせにしたりする悪質な業者もいて困っているお客様がいる。はたから見ると「同じ業界」として御社も見られてしまうという難しさ。御社は他とは全く違う、ということをどんどん発信していくことで、火災保険の受け取りを巡る環境が正されていくと思います。そこにcokiが役立てるのは大変うれしいことです。
土井
私たちも本当に期待しています。メディアの責任はとても大きく、間違った情報が真実のように流れていると日頃感じています。火災保険申請についてもこういうケースがあるから業界全体がダメだと結論付けるのではなく、どのようなケースがダメで、何が良いのかを明確にした客観性のある情報を伝えることが必要です。
弊社がお伝えすることは弊社の主張です。メディアにはそれを客観的な視点で精査し、公正な観点からフレームワークを明確にして伝えることが求められます。それがメディアの正当性を担保することになります。ステークホルダーという観点から、弊社をはじめ企業の価値をさまざまな角度から照らし出すcokiという媒体にはその正当性があると思います。
契約者の権利という当たり前を正当にサポートし、社会的な公正を実現する
加藤
取引先など御社のステークホルダーに何社もお話を聞かせていただきましたが、皆さん、御社の事業について、そして尾前さんと土井さん、おふたりについて非常に高く評価されています。ある建築設計事務所さんは「自分の大切なお客様に正しいアドバイスをしてくれる尾前さんたちは本当に大切なパートナーなのです」とおっしゃっていました。ステークホルダーに直接お話を伺ったからこそ、尾前さんたちの事業や大義は正しいと実感することができました。
そして、実は今、私の実家が御社のお世話になっています。社員の北野さんに担当していただいています。とても丁寧なお仕事で、まめに連絡もくださると聞いています。保険金がおりるかどうかはまだ確定していませんが、応対している母は「自分では保険会社と交渉すらできない。説明もとてもわかりやすい」と感謝しています。
土井
保険会社はルールを作っている側ですから、ルールを理解してもらった上で契約するのが本来なのですが、契約者サイドに立ってルールをレクチャーし、サポートする体制がありません。契約者の情報量を保険会社の水準に近づけていくことは、本来必要なことであり、アメリカでは保険契約のエージェントは当たり前です。日本にもその当たり前を普及していくことは社会的な公正を支える意義があると考えています。
尾前
現状は、十分な知識もスキルもなく参入する業者がいて、おかしなことになっています。ですが、社会的な意義がなければ淘汰されていくので、今そのふるいが始まってきているんですね。
加藤
実家に届いた保険会社からの書類に「悪質な業者にだまされないでください」との一文が入っていたり、「業者に手数料がとられるんですよ」と言われたり。もちろん手数料のことは知って依頼していますが、保険会社も神経質になっていると感じました。
尾前
最近は保険会社が悪質な業者を排除しようとする動きが見受けられます。その是非はともかく、それだけお客様に迷惑をかけている業者もいるんですね。弊社は地道に公正に取り組んできたことで、保険会社から一定の信頼を得ています。保険会社とは利益が相反する立場ですが、正当な保険金の受け取りというお客様の権利行使を正しくサポートする会社は保険会社も信任するという感触を受けています。
土井
実際に保険会社から、「悪質な会社は今後排除されていくので、もう少し待ってください」と言われたりもしていますね。
ステークホルダーの声がユースケースとなり、事業の可視化と評価につなげる
加藤さんの身内のお話が出ましたが、御社のお客様の声も聞かせてください。
土井
最初は「本当に保険金がおりるのだろうか」と半信半疑だったお客様も、保険金がおりることが決まると本当に喜んでいただけます。思っていたよりも保険金が少なかったケースももちろんありますが、その後も家屋の修繕箇所が見つかった時に「これは保険金が出るのかな」と相談をいただくこともあり、火災保険を身近に感じてもらえるようになっています。
さらにそのお客様が「こういうサービスがあるから相談してみたら」と他の方に伝えてくれるケースもあります。思いがけないことが火災保険の対象になるという、それまで多くの方が想定すらしていなかったケースを考えるようになって、それが弊社の紹介につながり、正しい情報が口コミで伝わっていく。弊社にとっても、クリーンな業界を目指す上でもとてもありがたいと感じています。
尾前
弊社では、調査を依頼されてお宅に伺った時、損壊が見受けられなくても家屋全体の写真を撮影するのが決まりです。ですので、その調査では保険事項に該当しなくても、半年後・1年後に台風が来た時に連絡いただいて訪問すると、その写真との比較で損傷がすぐにわかります。健康診断の数値のようなもので、定点観測ができるのですね。お客様が何かあったら連絡してくださるのもとてもありがたいですね。
土井
一度保険金がおりると当分出ないと思われがちですが、今は自然災害も多く、補償内容にもよりますが3年に一度くらいは定期健診のように継続してチェックするのがよいと思います。先日は、あるお客様から3年ぶりにご連絡をいただき、お伺いさせていただきました。
加藤
何かあったら連絡いただける、3年前のことを覚えてくださる。それは御社がお客様に信頼されているからですね。
土井
サービスを選ぶ消費者の方々として気になるのは手数料で、弊社よりも安い会社がある中で選んでいただけるのは大変ありがたいことでます。同時に、自分たちのやっていることは間違っていないのだと確信しています。
加藤
御社は正しいことをしているけれど、業界全体を見るとなかなか正しさが伝わらない。じゃあどうすれば御社の正しさを伝えていけるか。1件1件のお客様が実際にどのようにサービスを利用して、具体的にどんな評価をして関係を結んでいるかをメディアであるcokiが一つひとつ取り上げ、ユースケースとして記事にしていく。これだけお客様から感謝されて評価されているサービスなんだ、というところを具体的に示す。それによって他社との違いを可視化していく。それが私たちの務めだと改めて実感しました。
ステークホルダー主義を育み、サステナブルな企業活動を後押しする
御社の最新の取り組みや今後の展開についてお聞かせください。
尾前
弊社には不動産のオーナー様向けに、賃貸物件等の原状回復に保険金を活用するサブスクリプション型のサービスもあります。不動産オーナー様からのニーズが顕在化するとともに、解体時に発生する大量の廃材やコンクリートなどの廃棄物、建物のスクラップアンドビルドを減らしたいという想いがありました。
建物を壊し、新築を建てるという繰り返しではなく、損壊があればその都度修繕し、できるかぎり今ある建物を長くもたせることができれば、コスト的にも環境的にもプラスになります。SDGsの時代に求められ、今後可能性のある事業だと予想しています。
私たちのサービスを使っていただき、保険金を受け取って修繕することで建物の寿命を延ばしてほしい。社会問題化している空き家対策にも効果があると思います。
加藤
以前、尾前さんは業界団体を作りたいと話されていたと思います。そちらの見通しはどうでしょうか。
尾前
最終的には協会のような組織を作りたいと考えています。弊社だけが頑張るのではなく、同じ志を持つ企業と団体を設立し、業界を正していきたい。ただ、業者さんの信頼性の見極めが難しいんです。
土井
「業界」という言葉を使いましたが、火災保険申請サポートは、たとえば美容業界などのように確立し、世間に認知されている業界ではない。本来、業界と言うためには一定の水準をクリアし、お客様がその業界の会社の中から選択できるような仕組みが必要です。
今、お客様にとっての選択肢は成功報酬の手数料と年間の調査件数、受給率くらいです。ですが、調査件数や受給額・受給率は証明が難しいのです。ルールがありませんから。サービス内容も一見同じですから、利用してみないとわからない。そうするとお客様は手数料の安いところを選んでしまう。
でも、本来、会社を選ぶべきポイントは火災保険の約款を熟知した申請に必要な実務知識と特化したスキルをもっていること。それによって保険金の受け取りに雲泥の差が出るのです。そのスタンダートを作れるのは私たちしかいないだろうと思っています。
尾前
基準がなく、お客様が手数料で判断するしかない、結果、正しいサービスを受けられないことがある現状は本当に歯がゆいです。
弊社は一度利用されたお客様や取引先などステークホルダーの紹介で依頼されるお客様が多いのですが、そうした紹介ルートがなく、ネットなどで見て直接ご連絡くださるお客様もいらっしゃいます。そうしたお客様に「どうやって弊社を知ったのですか」と訊ねると、火災保険申請したいけれど自分では難しい。でもどこに頼んでいいか。「検索していろいろ考えて最終的にこちらにたどりついた」とおっしゃってくださいます。
うれしい反面、大変な労力がかかりますよね。そして、その過程で疲れてしまい、依頼をやめてしまう方もいるだろうと思います。お客様が安心して利用できるサービスになるよう、弊社が水準になれるように地道に取り組んでいくしかありません。
ルール作りや業界のクリーン化に向けて歩む中で、cokiに力になっていただくことは多いと思います。これからもよろしくお願いいたします。
加藤
cokiが御社のテークホルダーの声を可視化することにより、火災保険申請サポートの業界適正化への一助になれれば、こんなにうれしいことはありません。
cokiは、ステークホルダーに評価される企業を取り上げるとともに、同様に評価される会社のコミュニティになっていくことを目的としています。ステークホルダーの評価は公正な企業活動のスクリーニングになりますから、いい企業同士が自然と手を取り合い、新しいビジネスが発生することも考えられます。
さらには、cokiを舞台にステークホルダー主義という企業文化を育て、サステナブルな企業のあり方へとつながっていくことを目指しています。尾前損害調査オフィス株式会社さんもcokiを存分にご活用いただくことで、次のステージへと発展されることを願っています。
本日はありがとうございました。
◎プロフィール
尾前美幸
尾前損害調査オフィス株式会社 代表取締役
AIU損害保険株式会社(現AIG損害保険株式会社)の火災保険専門チームで代理店営業および指導、保険金支払いの対応などの業務に携わり、2018年3月に尾前損害調査オフィス株式会社を設立。
土井隆
尾前損害調査オフィス株式会社 統括マネージャー
AIU損害保険株式会社(現AIG損害保険株式会社)にて火災保険の業務に携わり、2018年3月に尾前損害調査オフィス株式会社設立に参画する。
◎企業概要
尾前損害調査オフィス株式会社
損害保険のコンサルティング(omae-office.com)
〒130-0013 東京都墨田区錦糸1-2-1 アルカセントラル14階
設立:2018年3月20日
電話番号 / FAX:03-6853-6645 / 03-6853-6601