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ディップ株式会社

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求人情報サイトのディップと旅行会社最大手のJTBのコラボで実現 福島県12市町村就業・移住体験ツアー

ステークホルダーVOICE 地域社会
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東日本大震災による原発避難地域に指定された福島12市町村では、現在避難指示が解除され、全市町村で居住が可能になった。しかし、一度去ったふるさとに、戻る人もいれば戻らない人もいる。

戻らない人がいるならば、その分新しい移住者を呼び込もうと、ふくしま求人情報サイトを運営するディップ株式会社と旅行最大手のJTBとのコラボレーションにより、福島県12市町村就業・移住体験ツアーが実現した。

ディップ地方創生事業開発部の冨樫良樹さんと、ふくしま12市町村移住支援センター広報課の中島利博さんにお話をうかがった。

福島12市町村で手厚い移住支援制度 失われたコミュニティ再生のために

深刻な過疎化や人手不足に悩む地方自治体では、それぞれ独自の支援制度を設け、移住者の呼び込みに余念がない。そんな中、最も手厚い制度を設けているといわれるのが、福島12市町村だ。

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中島さん(取材はZoomで行いました)

「原発避難指示等の対象となった 福島県内の12市町村では、避難解除により自宅に戻る住民もいれば、避難が長期化したことで他の地域に根付き、戻ってこない住民もいます。そこで現在ふくしま12市町村 移住支援センターでは、新規に移住者を呼び込み、新しいコミュニティを創生することに力を入れています」

ふくしま12市町村移住支援センター広報課の副主任、中島さんによると、東京電力第一原子力発電所の事故に伴う避難指示の対象となった福島県内の12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)に新しく移住する人に対し、福島県では手厚い支援金制度を設けているという。

他県からの移住者には、1世帯最大200万円、単身で最大150万円を支給。さらに2023年4月からは、東京圏(一部地域を除く)からの移住者を対象として、子ども1人につき最大100万円が支給される子育て支援加算も開始した。

「多くの自治体では、支援金を首都圏からの移住者に限定していますが、福島12市町村ではたとえ隣県からの移住者でも世帯支援金をお受け取りいただけます」

中島さんによると、12市町村に住民票を移す直前に連続して3年以上福島県外に在住しておろ、12市町村に5年以上継続して定住する意思を確認できるなどの条件を満たせば、支援金を申請できるという。

しかし、いくら手厚い支援があるからといって、ライフスタイルの全面変更となる地方移住には、越えるべきハードルは多いだろう。その障害を乗り越えるためにタッグを組んだのが、ディップとJTBだ。

旅行最大手JTBと求人情報サイトのディップがタッグ 移住+就労体験ツアー

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ディップ 冨樫さん

「私はもともと求人情報サイト『バイトル』編集部の企画部門にいました。そこでユーザーのニーズを探って行くにつれて、現在の居住地から離れ、移住して働きたい方が意外と多いのではないかと感じ、2017年よりアンケート調査を開始したんです。結果、移住に興味関心がある方が一定数いることが判明しました。そこで、移住希望者と人手不足に苦しむ地方企業とをマッチングするために、部署が立ち上がり『バイトル』編集部の企画部門から異動しました」

コロナ後はさらに地方移住への注目度が増えたと、ディップで地方創生事業開発部に在籍する冨樫良樹さんは語る。

2023年7月に同社が実施した移住動向調査アンケートによると、現住所が東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に在住する学生以外の求職者のうち、51%が地方移住に興味があると回答している。

40代以下が7割で、女性の方が若干多く、独身者が7割を占めているという結果だった。

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地方移住に興味があるとの回答は51%にのぼった。(ディップ株式会社アンケート結果より)
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移住に興味を持つ方は20代から40代が多く、男性より女性の方がやや多い。配偶者なしとの回答が約70%だった。(ディップ株式会社アンケート結果より)

子育てしやすい環境やゆとりのある生活、そして生活コスト減などを求め、地方移住を前向きに検討する求職者がいる一方、仕事探しや地域との交流などへの不安がハードルになっていることも、アンケートから判明した。

「ただし、移住には興味がある反面、8割近くの方が具体的な移住先を定めきれていない状態でした。そこで、まずは福島12市町村を移住候補地として知ってもらい、ファンになってもらえるプロセスが必要だと考えたんです」

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移住候補地ははっきりとイメージできていない人が73%(ディップ株式会社アンケート結果より)

そこで同社では、旅行会社最大手のJTBとともに地方移住までの具体的プロセスを見える化し、福島12市町村への移住を促進するため、本ツアーを移住に興味を持つ移住関心層へ打ち出した。

移住希望者の不安や疑問にフォーカスしたプログラム

2023年8月5日出発の初回ツアーには20名定員のところ、なんと190人以上もの応募があった。

そのなかから、ディップとふくしま12市町村移住支援センターによって移住意欲が高いと思われる21名が選ばれ、飯舘村と川俣町へ、1泊2日のツアーが実施された。

まずは東京駅に集合し、現地に向かう。ツアー初日は飯舘村を中心に案内。いいたて移住サポートセンターの相談員による支援制度の説明会や、先輩移住者に対する質問タイムなどが設けられた。

具体的に移住後をイメージしやすいよう、移動するバス内では住環境などの説明や、生活圏内にある南相馬市についても案内がなされる。

夜はホテルで同じ目的を持つ参加者同士食事を味わい、一晩明けて翌日は川俣町の企業訪問や職業体験、先輩移住者との交流会。

なによりも、移住希望者の不安や疑問を払拭することを目的に組まれた旅行プランだ。

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2023年9月に実施したツアーでの移住者交流会・ワークショップの様子。

「移住先で仕事が見つかるかどうか。そして、地域のコミュニティに馴染めるかどうか。これが移住希望者の二大不安要素です。その不安を払拭することを一番の目的として、プログラムを組みました。子どもを飯舘村のように自然豊かな場所で育てたいけれど、そこに希望する仕事があるかと不安に思っている方には、比較的大きな都市である南相馬が通勤・生活圏内であることを体感していただく。周囲のコミュニティに馴染めるか不安に思う方には、先輩移住者からざっくばらんにリアルな話を聞ける交流会を設ける。実際ツアーでなければ、先輩移住者に話を聞ける機会など、なかなかありません」(冨樫さん)

ディップで取ったアンケート結果をもとに、移住希望者がツアーに参加することで、具体的な移住のイメージを掴めるよう、プランを組んだ。

「ツアー参加者からいただく最も多い質問が、移住支援金の件です。次が仕事や住まいについてですね。首都圏に居住している方だと、どうしても皆さん賃貸住宅に住むというイメージをお持ちなのですが、実は地域によっては空き家を買い取って、リフォームして住んだ方が経済的な場合もあります。そのあたりの予算感を実際に先輩移住者に語っていただけるので、移住に対する具体的なイメージが固まりやすいんです」

冨樫さんと共にツアーに参加した中島さんは、首都圏居住者の意外な悩みを知ったという。

「私が印象的だったのは、ツアー参加者から『車がないと生活できませんか?』と聞かれたことでした。12市町村では公共交通機関の整備が東京のように十分整備されていないため、正直車がない生活はかなり不便でしょう。特に働く世代の場合、ほとんどの場合通勤のために車は必須です。そうお伝えすると、中古で買うといくらか、一戸建てを買う場合、駐車場はついているのかと。交通網の発達は東京と全く違うので、戸惑いも大きいのかもしれませんね」。

一度失われたコミュニティだからこそ、新しいものが根付きやすい

ディップが実施した集計によると、移住に興味を持つ方は20代、30代、40代の働き盛りの割合が全体の4分の3を占める。そうなると気になるのが移住後の就労先だ。

地方移住に向けた不安に対する調査では、「就業できる仕事がみつかるか」という不安が55.7%にのぼり、最も大きな不安要素となっていることがうかがえる。

実際、福島12市町村に移住した場合には、どのような分野の仕事が考えられるのだろうか。

「地域差はありますが、製造業や一次産業が比較的多いでしょう。ただ、特徴的なのは南相馬市です。南相馬市復興工業団地内には、『福島ロボットテストフィールド』が設立されており、最先端のロボット産業の求人もあります」

また、飯舘村、川俣町といった静かな土地に移住しつつ、比較的大きな町に通勤することも可能だと中島さんは言う。

さらに、福島12市町村では、いくつかの条件を満たした場合には、起業に対して最大400万円の支援金も設けている。

「12市町村は、避難区域に指定されたことで、一度地域のコミュニティが壊れてしまっています。そのため逆に外から人が入りやすくなっている、というのも事実です。既に出来上がったコミュニティの中に入っていくのは勇気がいりますから。国内屈指の手厚い移住支援策だけでなく、そういった12市町村独特の状況も背景にあるのでしょう、2022年には他県から12市町村への移住者は600人余りと、過去最多を記録しました。2023年は、移住ツアーの影響で、過去最多記録を更新できることを期待しています」

また福島県では、移住ツアーに参加した後、具体的に移住のための情報収集や仕事探しなどで再度現地を訪れた方に対して交通費と宿泊費を負担するなど、徹底した移住支援に乗り出している。

定員20名、応募者100名以上! 移住希望者のニーズを抑えた大人気ツアー

「非常にありがたいことに、ツアーの募集を開始すると、常に100名を超える方からの応募があります。ときには定員20名のところ、200名近い応募があったほど。ディップさん、JTBさんが、移住希望者のニーズを的確に捉えているからこその人気でしょう。また、ディップさんのツアー申し込みサイトを見ると、ツアーで訪れる現地の方の笑顔を掲載してくださっているんです。申込者にとっても、実際にこういう人とお話ができるんだとイメージが膨らみやすく、安心感にも繋がっているのでしょう」

12市町村移住体験ツアーの申し込みサイトには、現地の人々の笑顔の写真が使われている。

福島12市町村では、自治体独自で移住ツアーを組んではいるが、なかなかこれだけの人数が集まることはない。中島さんはツアー内容の充実度に感銘を受けているという。

「もちろん、我々だけでツアーを企画したわけではありません。旅行計画のプロフェッショナルであるJTBさんのお力添えがあったからこそ、ツアー参加者のかゆいところに手が届く、満足度の高い内容になったのでしょう」

ディップが得意とする「求人」をフックに移住へ繋げるプラン、そしてJTBの旅行企画力がうまくコラボレーションしたことで、今回の福島県12市町村就業・移住体験ツアーは実現した。

「ここ福島12市町村は、一度コミュニティを失ってしまいました。だからこそ、ゼロから再生していくために新しい力が必要なのです。道路一つとってもどんどん新しく作り出され、ロボットテストフィールドという最先端技術の研究舞台にもなっており、町の人たちも新しいことに対する抵抗感も少ない。いわば、『チャレンジしやすい町』なんです」

新しく生まれ変わっていく町で、新しいチャレンジを始めてほしいと、中島さんは言う。

2023年8月5日から2024年2月5日の計8回、総計160人余りのツアー参加者のなかから、実際の移住者が出る日も近いかもしれない。

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ライター:

フリーライター・リーガルライター。静岡県浜松市在住。 立命館大学法学部卒。2008年から2021年まで13年間パラリーガルとして法律事務所に勤務。破産管財から刑事事件まで、各分野の法律事件に主任として携わる。独立後は主に法律メディアでの執筆やインタビュー取材などを中心に活動中。

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