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特定非営利活動法人 キーパーソン21

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子どもが幸せに生きるために大人と教育機関がすべきこと|明豊中学校×キーパーソン21協働プロジェクト

ステークホルダーVOICE 地域社会
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(画像提供:キーパーソン21)

不確実な時代を子どもたちが幸せに生きるために、大人や教育機関は何をすべきか?この問いに答えるべく、東京都は池袋にある豊島区立明豊中学校(以下、明豊中学校)が、20年以上に渡りキャリア教育支援を続けてきた認定NPO法人キーパーソン21(以下、キーパーソン21)と協働でプロジェクトをスタートさせた。

子どもたちの「自ら考え、行動する」実践力を育成することを目的として行われたプロジェクトで子どもたちはどう変わったのか。

プロジェクトの発起人である明豊中学校のPTA会長森田絹枝さんと、当時明豊中学校でキャリア教育を担当していた主幹教諭のY先生にお話を伺いながら、先の見えない時代に必要とされる教育について考えていく。

ワクワクするものなんて自分には絶対にないと思っていた。

まずはおふたりの自己紹介をお願いします。

森田

明豊中学校で2年間PTA会長を務めました。高校1年生、中学2年生、小学校5年生の子どもがいます。

Y先生

明豊中学校で主幹教諭をしております。教員歴は28年、明豊中学校は今年(2023年4月時点)で3年目となります。大学3年生と、大学1年生の子どもがいます。

キーパーソン21との協働プロジェクトの概要についてお聞かせください。

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「わくわくエンジン発見教室」の際、「ジュニアわくわくナビゲーター」によるデコレーション(画像提供:キーパーソン21)
森田

まず、2021年10月に、明豊中学校2年の全生徒127名、明豊中学校PTA、保護者、地域の大人の方々を対象として、キーパーソン21が独自開発した対話型キャリア教育プログラム実施しました。

内容は、サポーターとなる地域の大人たちが中学校に訪問し、大人との対話を通じて生徒自身が自分を掘り下げるというものです。

大人と中学生がゲーム形式のグループワーク(『すきなものビンゴ&お仕事マップ』)を通じて、好きなもの・好きなことを理由とともに伝え合うことで、自分の「わくわくすること」を見つけ出します。

キーパーソン21では、これを『わくわくエンジン®︎』と呼んでいますね。

誰の中にでもある自ら動き出さずにはいられない原動力のようなものである『わくわくエンジン®︎』が、実は世の中の仕事とつながっているんだということを生徒に気づかせ、自主性を育むことがプログラムの目的でした。

それが好評だったため、翌年2022年 5月19日に再び中学校2年の全生徒149名に、同年12月1日に中学校1年生に同プログラムを実施しました。

Y先生

すると、プログラムを受けた生徒たちから「今度は自分も相手の『わくわくエンジン®︎』引き出す側として参加したい」という声が複数あがったんです。

そこで、参加を希望した15名の生徒がプログラムをサポートできるように、ジュニアわくわくナビゲーター研修というものを2022年7月と8月に実施し、同年9月3日に明豊中学校の学区の小学5・6年生の希望者17名を対象に「すきなものビンゴ」を実施しました。

当初は中学生向けのキャリア教育授業としてはじまったプログラムが、参加者である中学生が運営側にまわったことで小中連携プロジェクトにまで発展したということですね。

Y先生

「自主性を育む」というプログラムの目的通り、自分で何かをやりたいと生徒たちが思ってくれたのが嬉しかったですね。今までにないものが刺激されたのかもしれません。

森田

自分に『わくわくエンジン®︎』があったという感動から、今度は人にやってあげたいと思うようになったのだと思います。

Y先生

確かにそうですね。プログラム開催の2ヶ月後に、アフターフォローも兼ねて、自分の『わくわくエンジン®︎』をテーマに職業を調べるという授業を行ったんです。

すると、「自分にはワクワクするものなんて絶対ないと思っていたけど、それが見つかったからホッとした」と発表する生徒もいたんですね。

やはり子ども自身も、自分のやりたいことを本当は見つけたいと思っているし、見つからなくて不安になることもあるんだなと。

生徒の発表を聞きながら、『わくわくエンジン®︎』がこんなにたくさんの職業につながっていくのだと、夢が広がるようでワクワクしました。

森田

先生は、今回の結果を通知表に記入するという取り組みもしてくださいましたよね。

Y先生

ご両親にもお子さんが何に興味があるのかを理解してほしいと思ったので、1人ひとりの通知表に書きました。

森田

これは本当に素晴らしいと思います。

私は保護者の方から、「森田さんは子どもの好きなものが何故わかるの?」と聞かれたことがあって。私としては、子どもが見ているものに私自身も目線を合わせて見ていたからわかるんですけど。

子どもが好きなことを良い・悪い、将来に役立つ・役立たないといった基準で判断するのではなく、ただ「へえ〜」と聞いているだけで。

でも、それが難しいという人もいると思うので、じゃあ具体的にどうしたらできるようになるのかな?と考えていたときに、出会ったのがキーパーソン21だったんです。

どうしたら子どもは主体的に動き出すのか?

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SDGs発表会での様子(画像提供:キーパーソン21)

キーパーソン21の活動を森田さんが知ってから、協働プロジェクトを実施するまでの経緯を教えてください。

森田

ちょうど私がPTA会長に着任したタイミングだったので、関係各所に何度か足を運んで、キャリア教育の必要性を訴え続けました。

最初から全員が前向きであったわけではありませんが、幸運なことに明豊中学校の当時の校長先生が暖かく共感くださり、息子が在学していた中学2年生の学年主任、Y先生と繋いでくださいました。

Y先生は、「今ある職業がこの先存続するかも分からない状況下で、職場体験だけを行うキャリア教育に不足はないのだろうか?」と疑問を持っていたため、キーパーソン21のプログラムに興味を持ってくれたわけです。

Y先生

とりあえずやってみよう精神ですね。

過去の踏襲や、生徒たちを手のひらで転がすような方法は日々忙しい教員にとっては楽ですが、生徒たちの未来を考えると新しいことに私たち自身がどんどん挑戦しないとダメだと思ったので。

森田

結果的に、明豊中学校の「子どもたちの主体性を育みたい」という経営方針と、豊島区教育委員会のSDGs次世代育成事業というテーマが重なり、キャリア教育としてキーパーソン21のプログラムを実施することができました。

平たく言えば、PTAが人を集めて、学校が場を設定して、キーパーソン21が内容を提供し、子どもたちが自由に楽しむというそれぞれの役割分担のもと進めることができたのが成功の理由だと思います。

特に、大人が場を設定して、「あとは自由に」という機会が子どもたちにはものすごく必要だと感じました。

大人が場を設定さえすれば、子どもたちは主体的に動くということですか?

Y先生

大人の本来の役割は、子どもが主体性を発揮できる場を提供することと、わからない部分をサポートするだけという気がしますね。

それができれば、子どもたちはみんなと協力して何かを作り上げていくことに楽しさを自然と感じてくれるのだと思います。

森田

そうですよね。だって、実際に授業でも声を聞いたことのないような生徒が、プログラムに参加し、今度は小学生にプログラムを提供する側になると、体育館の後ろまで響く大きな声で説明や発表をしてくれたんです。

ジュニアわくわくナビゲーター研修での顔合わせのたびに、子どもたちが本来の自分をどんどん出すようになっていったのが印象的です。

引っ込み思案の子でも挑戦してくれたのがすごく嬉しかったし、「今度はもっとうまくやりたい」「次こそは」という感想を書いてくれた子がいたのも感動的でした。

準備や当日の様子など、本当に頼もしかったですよね。

Y先生

そうですね。「意見を言ってもいいのかな?」「自分なんか…」といった思いがある子ですら「私はこう思います」と、自分の思いや意見をしっかりとアウトプットするようになっていました。

プログラムを通して、自分の意見を知ってもらうことの大切さや心地よさを知ることができたのだと思います。

今まで自分を出していなかった子が、本来のキャラクターを出しても良いと思えるようになり、イキイキしているようになったと感じました。

これは本当にすごい変化なんですよ。1人ひとりの変化を列挙したらキリがないくらい、みんな成長したと思います。

今の子たちは、「自分一人でできるから自分でやればいいじゃん」と考えがちなことも多く、人との関わりが苦手だったりしますが、ジュニアわくわくナビゲーター研修を受けた生徒たちはみんなで協力して達成することを自然と学べたと思います。

大人になるとどうしても周りと協力しないと大きなことは達成できないので、それを早いうちから体験とともに学べたのは、生徒にとって非常に貴重な経験だったのではないでしょうか。

子どもだけでなく、大人もワクワクしないと。

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SDGs発表会での様子(画像提供:キーパーソン21)

今回のプロジェクトを通して苦労した点などはありましたか?

Y先生

日程調整ですね。やる気はあっても、今の子どもたちは部活に生徒会に塾に家族との予定など非常に忙しいので、研修をいつ行うかなどの調整に苦労しました。

あとは、教員間でもプログラムや活動の意義などに対して理解の度合いに差があったことも難しかった点です。

それでも実際にプログラムを見学すると、「この生徒はこんなことが好きなんだ」という新たな気づきがあるので、理解はだいぶ深まったと思います。

森田

明豊中学校では、PTA役員、保護者の方、区民広場などの施設の方、町会長にもお声がけをしてプログラムのサポーターを集めたので、様々な立場の方々の考えをまとめるのは難しい点もあったかと思います。

ですが、みなさま「自分を見つめ直す、とても貴重な機会・時間となった」と言ってくださったので、地域密着型で開催して本当に良かったです。

PTAとしては、あまり苦労だと感じたことは無かったですね。ただ、もっとできたな、やりたかったなということはまだまだあります。

今後に向けて改善点を挙げるとすればどんなことがありますか。

森田

資金面の課題です。もっと企業を巻き込めていたら、より持続的な活動になっていたと思うので。

Y先生

確かに、今回明豊中学校でプログラムをスムーズに開催できたのも、豊島区のSDGs予算があったという点が大きいんですよね。

今後も活動を続けていくためには、教育委員会などに活動内容や理念を理解してもらったうえでNPO団体と提携してもらい、豊島区全体で子どもたちを育てていくつながりを作ることが必要だと思います。

私立の学校と比較すると公立の学校でできることに制限があるので。

森田

そうですね。ですが、公立の学校でこうしたキャリア教育を行う意義は大いにあると思います。経済的な理由などで多くのチャンスに今まで触れてこなかった子どもたちにほどこのプログラムを届けたいので、公教育で行う必要性は非常に高いと思っています。

こうしたプログラムを通して、今後子どもたちにどう成長していってほしいとお考えですか?

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Y先生

中学生になると、入りたい学校ではなく学力的に入れる学校を選ぶなど、自分で将来の道を狭める子も増えてきます。

そうではなく、どう生きていきたいのか、何をすると楽しいのかといったことを早い段階で知ったうえで、心からワクワクする方向に向かって成長してほしいですね。

生き方を自分で切り拓ける人になってほしいです。

森田

自分でチャンスを取りに行ける人に成長してほしいですよね。

あとは、一人ひとりの個性を認め合って対話できる人に成長してほしいです。このプログラムは、大人も子どももフラットな立場であることが大前提なので、そこも学べるはずです。

では、最後におふたりの今後の展望をお聞かせください。

Y先生

ゆくゆくは、子どもが主体となり、子どもが大人を巻き込み、大きなことを達成してほしいです。

そのためには、このプログラムを次世代にきちんとつなげていくことと、共通の想いを持つ大人を増やす必要があると思っています。

森田

私はこのプログラムを地域の文化にしていきたいですね。『わくわくエンジン®︎』を知ることは、子どもだけでなく、大人にとっても重要な気づきになります。

地域の人みんなが自分がワクワクする方に向かって動き出せば、自然とより良い社会が実現すると思うので、今後も自分のできることで貢献していきたいと思います。

ありがとうございました。

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ライター:

1991年東京生まれ。中央大学法律学部出身。卒業後は採用コンサルティング会社に所属。社員インタビュー取材やホームページライティングを中心に活動中。

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