
「完成しないのが売りじゃなかったの?」そんな声が、世界で広がっている。
スペイン・バルセロナの世界遺産サグラダ・ファミリア。そのメインタワー、イエスの塔が、2026年6月10日に完成披露される。NHKは6月2日、大聖堂内部からこの歴史的瞬間を世界初公開・生中継すると発表した。
1882年の着工から140年以上。サグラダ・ファミリアは未完の世界遺産として知られてきた。だが、もはや建築物というより“永遠に工事している概念”として親しまれてきた聖堂が、ついに大きな節目を迎える。
完成するイエスの塔は高さ172.5メートル。サグラダ・ファミリア最高部に位置するメインタワーで、設計者アントニ・ガウディの構想を象徴する存在だ。奇しくも、ガウディ没後100年という節目の年に完成披露となる。
NHKによると、同局は世界で唯一、サグラダ・ファミリア建設現場に長期密着してきた。今回の特別番組では大聖堂内部から生中継を行うほか、建設の舞台裏を追ったドキュメンタリーも放送予定という。
完成しないことまでブランドだった聖堂
世界がざわついた理由は、ついに完成するからだけではない。サグラダ・ファミリアは長年、完成しないことそのものまで魅力として愛されてきた建築だった。
ガウディの”私の依頼主(神)は急いでいない”という有名な言葉もあり、観光客が「この教会はいつ完成するんですか?」と尋ね、職人が「神は急がない」と答える。そんな逸話は、半ば“公式キャッチコピー”のように語られてきた。
そのためSNSでは、歓喜と困惑が入り混じった反応が相次いだ。
《俺が生きてるうちに完成はないと思ってた……》
《え?いいの??完成しないのが売りだと思ってた!》
《ところで渋谷駅はいつ完成するのだろう??》
《悲報】横浜駅、サグラダ・ファミリアに先を越される》
長年“終わらない側”の代表格だった聖堂が、まさかの抜け駆け。ネットの冗談には、少し本気の寂しさも混じっている。
神は急がない…でも人類は急いだ
では、なぜ140年以上続いた工事が近年ここまで進んだのか。答えは案外、現実的だ。ガウディの時代には手作業だった複雑な設計や構造計算は、いまやコンピューター解析や3D技術で再現可能になった。さらに鉄筋コンクリートなど現代建築技術も導入され、工事は大きく加速した。
そして決定的だったのが、観光客である。世界有数の観光地となったサグラダ・ファミリアは、多くの来場者の入場料が建設費を支えてきた。つまりこういうことだ。
神は急がない。だが、コンピューターは待たない。観光客も待たない。予算が潤えば工事は進む。
少々身も蓋もない話だが、“永遠の未完成”は、テクノロジーと観光マネーによって静かに完成へ押し出されていたのである。
完成しないことまで愛された聖堂は、最後の最後まで人間らしい矛盾を見せた。“永遠の工事現場”が終わる日、世界は少しだけその喪失感を味わうのかもしれない。



