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日本のGDP、ついにインドに抜かれる 世界4位から5位へ転落 GDP4兆ドル突破の制度設計とは

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インド、GDP4位に。

インドが日本を追い抜き、世界第4位の経済大国となった。5月25日、インド国家開発委員会(NITI Aayog)の最高経営責任者(CEO)であるBVRスブラマニアン氏が、国際通貨基金(IMF)のデータを引用して発表した。

スブラマニアン氏は、第10回NITI Aayog理事会における「Viksit Rajya for Viksit Bharat 2047」構想の記者会見で、インド経済が名目GDPで4兆ドルに達したと明言。「これは私のデータではなく、IMFの公式データです。インドはすでに日本よりも大きい。今後2〜3年で世界第3位の経済大国となる見通しだ」と述べた。

IMFが4月に公表した「世界経済見通し」によると、2026年度のインドの名目GDPは4兆1,870億ドルに達するとの予測が示されている。

 

GDP逆転が何を意味するのか 日本とインドの制度設計がもたらした差

今回の逆転劇は、単なるGDPの数字では片付けられない。むしろ焦点を当てるべきは、両国の制度的な設計思想の違いである。インドは国家主導の経済戦略により、新しい制度を大胆に導入し、急成長を実現してきた。一方で日本は、制度疲労と人口減少に対応できず、円安の影響もあって国際的な相対地位を下げる形となった。

今、問われるのは「どちらの制度が未来を見据えていたか」である。そして日本はこの局面において、自国の制度を再設計できるか否かが、次の世代の国力を決める試金石となる。

インドの飛躍を支えた「制度の飛び級」AadhaarとUPI

 

インドの急成長の背後には、「制度的な飛び級」とも呼ぶべき革新的な国家インフラの存在がある。その筆頭が、全国民に付番された生体認証ID「Aadhaar」と、リアルタイム決済システム「UPI(統合決済インターフェース)」だ。

Aadhaarは12桁の番号で全国民を一元管理し、行政、金融、医療などのサービスへのアクセスを可能にした。これにより、農村部やスラムなど従来届かなかった層にも政府支援が行き渡り、社会の包摂が急速に進んだ。

一方のUPIは、QRコード一つで誰でも瞬時に決済できる仕組みを全国規模で実現。商店主から路上の物売りまでが電子決済を使いこなし、インフォーマル経済を可視化・課税対象に変える一方、金融包摂による個人の信用創出も後押しした。

これらの制度は、段階的進化ではなく、旧制度を飛び越えた“スキップ型発展”と呼ばれるモデルであり、他の新興国にとってもベンチマークとなっている。

インドと日本の経済格差 GDPでは測れない「経済の質」の比較

 

ただし、GDPだけで両国の経済力を論じるのは危うい。インドの一人当たりGDPは約2,400ドルと、依然として日本の1/14程度にとどまっている。インフラ、医療、教育の水準も全体としては低く、国民全体の生活水準という点では日本がはるかに上回っている。

また、所得格差、失業、環境汚染といった問題も根深い。GDPの総量は確かに成長の証ではあるが、それが国民一人ひとりの生活向上につながっているかどうかは別の話である。日本にとっても、質の高い社会資本をどう維持し、国際競争力に転換できるかが重要な課題だ。

制度疲労の日本に求められる「再設計力」 反転攻勢へのシナリオ

 

日本がこのまま経済順位を下げ続けるとすれば、それは数字ではなく制度の“硬直性”に起因すると言える。少子高齢化に対して移民政策を進められず、スタートアップの創出も限定的、教育制度や行政改革も大きな変化を伴っていない。

求められるのは、構造の再設計である。たとえば、高等教育と職業訓練の統合、デジタル庁の機能強化、外国人材の戦略的受け入れ、保育と介護の両立支援など、制度レベルでの大胆なアップデートが不可欠だ。

インドは、自国の制約条件を跳ね除けて制度を設計し直し、4兆ドル経済を実現した。日本も今こそ、「このまま衰退を受け入れるか」「再び浮上の道を選ぶか」の分岐点に立っている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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