
歩行者との接触や信号無視など、自転車の危険運転が社会問題となる中、警察庁は2026年4月1日から自転車にも「青切符」による反則金制度を導入する方針を固めた。これまでの「赤切符」制度と異なり、刑事処分を受けずに済むこの制度は、反則行為の抑止と安全意識の向上を目指すものだ。現在、政令改正に向けたパブリックコメントが実施されており、国民の意見が制度設計に反映される初の段階となっている。
法改正の背景
警察庁によると、自転車が関係する事故件数は減少傾向にある一方で、自転車側の重大違反が原因となる死亡事故は依然として高水準を維持している。2024年に成立した改正道路交通法では、こうした現状を踏まえ、自転車にも自動車やバイクと同様に交通反則通告制度(青切符)を導入し、指導・警告では防げない違反行為に対して抑止力を高める必要があるとされた。
制度の変更点:比較表
項目 | 変更前(~2026年3月) | 変更後(2026年4月~) |
---|---|---|
制度名称 | 赤切符(罰金・刑事処分) | 青切符(反則金・非刑事処分) |
適用対象年齢 | 原則16歳以上 | 原則16歳以上(継続) |
対象行為 | 重大・悪質な違反のみ刑事処分 | 113項目の違反に反則金適用 |
処分内容 | 書類送検、罰金・懲役など | 反則金を納付すれば刑事処分なし |
指導方法 | 警告中心 | 明確な金額での通告処理 |
主な反則金額(案)
- スマホ・ながら運転:1万2000円
- 遮断機降下中の踏切立ち入り:7000円
- 信号無視、逆走、歩道通行違反:6000円
- 一時不停止、車道左側通行義務違反:5000円
- 無灯火、ブレーキ不良、傘差し運転、イヤホン使用:5000円
- 2人乗り、並進:3000円
自動車側にも新たな義務
自転車に関する改正に加え、自動車側にも新たな通行義務が課されることになった。自転車の右側を通過する際に十分な側方間隔を確保しない場合、「歩行者等側方通過義務違反」として反則金7000円(普通車)および違反点数2点が科される。
歩道通行の新制度下での扱い
2026年4月に施行される青切符制度の下でも、自転車が歩道を通行できる条件は現行法と大きくは変わらない。
■歩道通行が認められる主なケース:
条件 | 内容 |
①道路標識や標示がある場合 | 「自転車通行可」の標識などがある歩道 |
②運転者が13歳未満(小学生以下)・70歳以上・身体障害者 | 年齢や身体的理由で例外として認められる |
③やむを得ない場合 | 車道が工事中で危険、狭くて走行困難な場合など |
このうち、13歳未満の未就学児や小学生については、改正後も引き続き歩道走行が合法である。保護者が並走する際には交通の妨げとならないよう十分な配慮が求められる。
なお、標識のない歩道を通行した場合や、一方通行の逆走をした場合には、「通行区分違反」として反則金6000円が科される可能性がある。
今回の改正では、これまで「注意」で済んでいた違反行為も反則金対象となるため、ルールを再確認した上での安全運転が一層求められる。
施行時期と今後の見通し
- 政令改正・パブリックコメント期間:2025年4月25日~5月24日
- 正式施行日:2026年4月1日(予定)
警察庁は制度施行までの周知徹底を掲げており、交通安全教育や自治体との連携を通じた啓発活動の拡充が期待される。一方で「反則金額が高すぎる」といった懸念の声もあり、今後の意見募集や制度設計の議論でどのように調整されるかが注目される。