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カシオ、電子辞書開発終了へ 40年の歴史に幕 決算内容が示す事業転換の背景

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カシオ 電子辞書新規開発終了
DALL-Eで作成

カシオ計算機は2024年2月14日、電子辞書の新規開発を中止すると発表した。スマートフォンやタブレット端末の普及、少子化による需要減が背景にある。40年以上にわたり「EX-word」ブランドで市場をけん引してきたが、教育現場のデジタル化を受け、今後は教育アプリ事業へ注力する方針だ。また、同日に発表した2024年4〜12月期の決算は純利益が前年同期比57%減となり、事業再編の一環として体制を大幅に縮小する考えを示した。

40年の歴史に幕、電子辞書新規開発を終了

カシオ計算機は14日、電子辞書の新規開発を終了すると発表した。スマートフォンやタブレットの普及に加え、学校現場でのICT(情報通信技術)活用が進み、電子辞書の需要が急減していることが背景にある。現行モデルは引き続き販売するが、2025年度は新製品の投入を見送る。

同社は1981年に初の電子辞書を発売し、「EX-word」ブランドで長年にわたり学習・教育分野をリードしてきた。調査会社BCN総研によると、2024年の国内電子辞書販売台数の約8割をカシオが占めたが、市場全体の販売台数は2019年比で7割減少しているという。

市場縮小の背景はスマホ普及と少子化

電子辞書市場の縮小は顕著だ。一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)によると、2023年の国内電子辞書出荷台数は38.5万台で、2007年のピーク時(280.5万台)の7分の1以下に落ち込んでいる。

この背景には、スマートフォンやタブレット端末の普及がある。特に学校現場では、文部科学省の「GIGAスクール構想」により1人1台端末が導入され、タブレットを用いた辞書アプリの利用が一般的になったことが影響している。

また、少子化も需要減の大きな要因だ。学生の数自体が減少しており、電子辞書市場の縮小に拍車をかけている。

教育アプリ事業に軸足、現行モデルは継続販売

カシオは今後、教育アプリなどソフトウェア事業へのシフトを加速する。同日、日本経済新聞の取材に応じた増田裕一社長は「教育現場でハードの需要が減少しており、すでに展開している教育アプリなどのソフト事業に切り替えていく」と述べた。

現行モデル「EX-word」シリーズは引き続き販売を続けるが、新規モデルの開発は行わない。需要動向に応じて生産体制を調整しつつ、既存ユーザーへのサポート体制は維持する方針だ。

決算内容が示す事業転換の背景

同日に発表された2024年4〜12月期の連結決算は、カシオの事業環境が厳しさを増していることを浮き彫りにした。純利益は前年同期比57%減の42億円で、不正アクセスによる「Gショック」など主力商品の出荷遅延が影響した。

売上高は1957億円(前年同期比3%減)、営業利益は112億円(同5%減)となった。地域別では、中国市場が景気低迷で低調だった一方、インドや欧州での販売は好調だった。

2025年3月期の通期予想は据え置き、売上高は前期比3%減の2620億円、純利益は33%減の80億円を見込む。

事業再編でさらなる構造改革も進行中

カシオは事業再編の一環として、電子辞書事業だけでなく、複数の事業で構造改革を進めている。

サウンド事業:電子ピアノを含む製品種目を半減し、生産体制を効率化する。
・電子レジスター事業:事業から完全撤退することを決定した。
・人員削減:2025年3月期までに約600人の人員削減を計画している。

これらの取り組みは、利益率の改善と成長分野への経営資源の集中を目的としている。

消費者や市場への影響は

電子辞書は、学生を中心に長年にわたり学習ツールとして親しまれてきた。現行モデルは当面販売が続くが、新規モデル開発終了により、将来的にはサポートや部品供給などが課題となる可能性がある。

また、教育現場では電子辞書からタブレット端末やアプリへの移行が進むことで、学習スタイルそのものが変わりつつある。さらに、カシオの動向は、他メーカーや電子辞書市場全体にも影響を及ぼす可能性がある。

今後の展望

カシオは電子辞書事業を転換する一方で、教育アプリやオンライン学習支援などのデジタル分野を成長の柱に据える考えだ。今後は、教育現場のニーズに即したサービス展開や、ICT教育市場での競争力強化が課題となる。

40年以上続いた電子辞書事業は節目を迎えたが、教育分野におけるカシオの挑戦は続く。
その行方は、消費者や市場にとって大きな注目点となるだろう。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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