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ポルシェ、ドイツで1900人削減 EV市場での苦戦が背景 決算状況も鑑みる

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ドイツの高級スポーツカーメーカー、ポルシェがEV需要の低迷や中国市場での販売不振に直面し、2030年までにドイツ国内で1900人の人員削減を実施する計画を明らかにした。電動化への移行が進む自動車業界において、戦略の転換を迫られる現状が浮き彫りとなっている。

EV市場の停滞とポルシェの決断

電気自動車(EV)の普及が予想以上に進まない状況の中、ポルシェはドイツ国内で1900人の人員削減を実施する計画を発表した。削減の対象はシュツットガルトのツッフェンハウゼン工場およびヴァイザッハの研究開発センターで、2029年までに従業員数を15%減らす計画だ。

人員削減は早期退職や退職金パッケージの提供を通じて進められる予定で、2030年まで有効な雇用安定契約に基づき、強制的な削減は行われない方針である。

背景にはEV需要の減退と中国市場の苦戦

ポルシェの決断の背景には、世界的なEV需要の低迷がある。自動車業界は、持続可能なモビリティを目指してEVシフトを進めてきたが、最近の市場動向は慎重な姿勢を促している。特に、最大市場である中国において、EV販売の伸び悩みが顕著だ。

2024年1〜3月期のポルシェの中国市場での販売台数は前年同期比24%減の1万6340台にとどまった。中国は同社の販売台数の約5分の1を占める重要な市場であり、この苦戦が経営合理化の要因の一つとなっている。

中国市場では、BYDをはじめとする中国メーカーの価格競争が激化しており、欧州メーカーにとっては厳しい状況が続いている。オリバー・ブルーメCEOは「中国での高級EV市場が振るわない場合、内燃エンジン車やプラグインハイブリッド車への注力を進める」とコメントしている。

決算に見る経営環境の変化

ポルシェの直近の決算にも、経営環境の変化が明確に表れている。

2024年1〜3月期の営業利益は12億8000万ユーロ(約2160億円)と、前年同期比30%減を記録。これは2022年9月の上場以来、最も悪い業績となった。背景には、中国市場での販売不振や米国での輸入差し止め措置の影響がある。

一方で、2023年通期の売上高は405億3000万ユーロ(約6兆5345億円)、営業利益は72億8400万ユーロ(約1兆1745億円)と過去最高を記録した。しかし、営業利益率は15.7%まで低下し、同社は2024年の通期営業利益率見通しを14〜15%に引き下げている。

EVシフトの見直しと今後の戦略

EV需要の低迷を受け、ポルシェを含むフォルクスワーゲングループは電動化戦略の見直しを進めている。

VWは、2030年代に「ゴルフ・ハッチバック」や「T-Roc」「ティグアン」など、内燃エンジン車を含むベストセラーモデルの更新を検討中だ。ポルシェもEV「タイカン」の販売低迷を受けて、内燃エンジン車やプラグインハイブリッド車の拡充に方針転換を進めている。

この動きについてブルーメCEOは「技術革新への投資を継続しつつ、市場の需要に柔軟に対応する」とし、EV事業における競争力を維持するための再構築を進める方針を示した。

自動車業界全体に広がる影響

ポルシェの人員削減計画は、自動車業界全体に影響を与える可能性がある。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、欧州全域でEV販売の伸びが鈍化しており、従来型エンジン車の需要が再び高まる兆しが見られるという。

EVシフトに積極的だった欧州メーカーが戦略の再考を迫られる中、内燃エンジン車のラインアップ再構築が注目されている。特に、アウディはコンパクトカー「A3」の内燃エンジンモデルの再投入を議論していると報じられている。

まとめ:電動化の行方とポルシェの挑戦

EV市場の停滞や中国市場での苦戦、さらに地政学的なリスクの高まりを受け、ポルシェは組織のスリム化と事業戦略の見直しに乗り出した。電動化という大きなトレンドに対応しながらも、利益確保のためには従来型エンジン車やハイブリッド車への柔軟なシフトが求められている。

同社の経営判断は、EVシフトに取り組む他の自動車メーカーにとっても重要な参考指標となるだろう。市場動向を注視しつつ、ポルシェが再び成長軌道に乗れるかが問われている。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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