
韓国EC市場に新たなプレーヤーが参入する。
ソウル聯合ニュースによると、中国発の格安ECサイト「Temu(テム)」が韓国市場で本格展開することがわかった。既存のアリエクスプレスやクーパンとの競争が激化し、消費者や業界に与える影響が注目される。
Temuが韓国市場に本格進出
ソウル聯合ニュースによると、中国発の格安ECサイト「Temu(テム)」が韓国市場に本格的に進出することがわかった。すでに韓国市場ではアリエクスプレスなどの中国系ECプラットフォームが強い存在感を示しており、Temuの参入により競争は一層激化する見通しだ。
韓国の消費者にとっては選択肢の増加や価格競争による恩恵が期待される一方、韓国国内のEC事業者にとっては新たな課題が生まれることになる。
Temuの韓国進出の背景
流通業界によると、Temuを運営する中国の拼多多ホールディングス(PDD)は昨年末から韓国市場向けの人材採用を本格化させている。採用された職種は人事(HR)、総務、広報・マーケティング、物流など多岐にわたり、一部の職種ではすでに採用が完了している。
また、韓国内の物流システムの構築も進めており、これまで複数の物流業者が担当していた「ラストマイル」(最終配送段階)を統一する方針だ。現在、Temuの商品配送は主にCJ大韓通運と韓進が担っているが、今後は本社レベルで公開入札を行い、韓国の物流大手と契約する計画とされる。
急成長する韓国でのTemu
韓国でのTemuの成長は著しい。アプリ市場の分析サービスを提供するワイズアップ・リテールによると、2024年1月時点でTemuのアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)は823万人に達し、韓国最大手のクーパン(3302万人)、アリエクスプレス(912万人)に次ぐ規模となった。
Temuは2023年8月に韓国市場に参入し、当初のユーザー数は52万人だったが、わずか1年で17.5倍に急増。これはアリエクスプレスが5年かけて獲得したユーザー数に匹敵する成長スピードだ。
EC市場での競争激化
Temuの本格進出により、韓国のEC市場では競争が一段と厳しくなることが予想される。すでに韓国市場ではアリエクスプレスが韓国法人を設立し、現地での事業展開を進めている。さらに、国内勢ではクーパンが物流への大規模投資を実施し、NAVER(ネイバー)もショッピングアプリを強化するなど、各社が競争力を高める動きを見せている。
業界関係者によると、「Temuの韓国進出が本格化すれば、国内EC市場の生存競争はさらに激しくなる」との見解が示されている。
消費者と業界への影響
Temuの進出は韓国の消費者にとっては利点が多い。Temuは低価格の商品を豊富に取り揃えており、韓国の価格に敏感な消費者層に受け入れられる可能性が高い。競争の激化により、韓国内のEC企業も価格引き下げやサービス向上を迫られることになり、消費者にとってはより良い条件での購入機会が増えることが期待される。
一方で、韓国のEC業界には懸念材料もある。韓国統計庁の国家統計ポータル(KOSIS)によると、2024年のオンライン海外直接購入額は7兆9583億ウォン(約8.7兆円)に達し、前年より19.1%増加した。一方、韓国からの海外直接販売額は1兆7225億ウォン(約1.9兆円)と1.5%の増加にとどまり、結果としてオンラインショッピングの貿易赤字は6兆2358億ウォン(約6.8兆円)に拡大した。
特に、中国からの直購(越境EC)が急増しており、2024年には総額4兆7772億ウォン(約5.3兆円)に達し、全体の60.0%を占めた。韓国のEC事業者にとっては、国内市場のシェアを奪われる可能性が高まり、対応策が求められる。
今後の展望
Temuは今後、韓国市場でのさらなる展開を進めるとみられる。すでに韓国法人「ウェールココリア有限責任会社(Whaleco Korea LLC)」を設立しており、物流ネットワークの強化や韓国専用サイトの開設など、本格的な現地化を進める可能性が高い。
韓国のEC市場では、クーパンやNAVER、アリエクスプレスなどが競争を繰り広げており、Temuの参入によって市場の勢力図がどのように変化するかが注目される。消費者にとっては、より安価で多様な商品が手に入る機会が増える一方で、韓国国内のEC事業者がどのように対応するかが今後の鍵を握ることになる。