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日本だけでない欧州観光地も悲鳴 オーバーツーリズムの深刻化

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渋谷スクランブル交差点
PhotoACより

コロナ禍からの解放を受け、世界中で旅行需要が急増している。しかし、この旅行ブームは、観光地にとって大きな課題をもたらしている。欧州各地の観光都市では、オーバーツーリズム(観光公害)が深刻化し、住民生活に深刻な影響を及ぼしている。

スペインのバルセロナでは、サグラダ・ファミリア教会などの人気観光スポットに観光客が押し寄せ、街は混雑し、交通渋滞も慢性化している。また、観光客向けの短期賃貸物件の増加により、住宅需給が逼迫し、家賃が高騰。地元住民は「観光客は帰れ!」と抗議デモを行う事態に発展していることが時事通信の報道で伝えられている。

イタリアのベネチアでは、2024年4月から日帰り観光客に入場料を課す試みが開始された。世界遺産の街を守るための苦肉の策だが、観光客の流入を完全に抑制するには至っていない。

オランダのアムステルダムも、観光客数の上限設定や観光税の引き上げなど、様々な対策を講じているが、効果は限定的だ。酒や大麻に酔った若者グループによる迷惑行為も問題となっている。

住民生活への影響:家賃高騰、生活環境の悪化

オーバーツーリズムは、住民の生活環境を悪化させる。バルセロナでは、過去10年で家賃が7割近く上昇し、地元住民は郊外へ追いやられている。ベネチアでも、物価高騰や生活インフラの逼迫が深刻化。住民の不満は高まっている。アムステルダムでは、騒音やゴミ問題など、観光客による迷惑行為が住民の怒りを買っている。

これらの都市では、観光客と住民との間で摩擦が生じ、社会問題化している。観光客は街の賑わいを生み出し、経済効果をもたらす一方で、住民の日常生活を脅かす存在にもなり得る。

観光業と住民生活の両立:難しいバランス

観光業は、多くの都市にとって重要な経済の柱だ。欧州旅行委員会(ETC)によると、2024年の観光業による経済効果は欧州全体で2兆4000億ユーロに上る見通しだ。しかし、観光業の発展は、住民生活の犠牲の上に成り立つべきではない。

ETCは、オフシーズンの旅行や、あまり知られていない観光地への訪問を促すなど、観光客の分散化を図る施策の必要性を訴えている。各都市も、観光客と住民の共存を目指し、様々な取り組みを進めている。

日本の現状と課題:迫りくるオーバーツーリズムの影

日本も、オーバーツーリズムの影が忍び寄っている。京都や鎌倉などの人気観光地では、観光客の増加による混雑やマナー違反が問題視されている。

また、東京駅や渋谷などの歓楽街も、見渡せば日本人より海外からの観光客の方が多いように見えるありさま。実際に、東京のホテルの宿泊費の高騰はひどいもの。1万円で泊まれた時代が懐かしく、東京からかなり離れた郊外のホテルに泊まりに行く出張サラリーマンも多いと聞く。

外国人による不動産購入も懸念材料だ。海外では、外国人による不動産購入を制限する国もある。オーストラリアやニュージーランドでは、自国民または永住権所持者以外による中古不動産の購入は禁止されている。

日本の場合、日本の不動産を買いあさる中国人のことが度々報道されるが、同様の規制を検討する必要があるのではないか。売れさえすればどこでもいい、数字に追われる不動産会社の構造はわかるが、長い目で見た時に、国益が棄損されることになっているだろうし、気づいたときには手遅れということも考えられる。

今後の展望:持続可能な観光のあり方を探る

オーバーツーリズムは、世界的な課題だ。持続可能な観光を実現するためには、観光客と住民、そして観光事業者が互いに理解し合い、協力していくことが不可欠だ。

観光客は、訪問先の文化やマナーを尊重し、責任ある行動をとる必要がある。観光事業者は、地域社会との共存を図り、持続可能な観光モデルを構築していくことが求められる。行政もまた、適切な政策を策定し、観光客と住民のバランスを保つ役割を担っている。

オーバーツーリズム問題の解決には、長期的な視点に立った戦略が必要となる。観光客から見向きもされなくなった先の日本の姿を想うと、さびしいものがあるので、観光による経済効果を享受しつつ、地域社会の生活を守り、文化遺産を後世に伝えるためには、関係者全員が知恵を出し合い、持続可能な観光のあり方を探っていく必要がある。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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