日本航空(JAL)のパイロット2名が乗務前に規定を超える飲酒を行い、便の出発が遅延する事態が発生した。
同社は過去にも同様の問題で行政指導を受けており、安全管理体制の課題と再発防止策の実効性が問われている。
パイロット飲酒問題の再発
2024年12月1日、オーストラリア・メルボルン発成田行きのJAL774便において、パイロット2名が規定を超える飲酒を行い、便の出発が3時間以上遅延する事態が発生した。
問題となったのは59歳と56歳の男性機長2名で、乗務前のアルコール検査で基準を超える数値が検出され、最終的に基準値以下が確認されるまで便の出発が遅れた。
同便では乗客103人が影響を受けた。JALの社内規定では、乗務12時間前までに体内に残存するアルコールを「ワインボトル半分」程度に抑えるよう定められているが、2名は前日の午後に飲食店でワイン3本を注文し、一緒にスパークリングワインも飲んでいたという。
現場での聞き取り調査の結果、規定を大幅に超える量のアルコールを摂取していたことが判明した。
問題の深刻さを増したのは、2人がアルコール検査の際「誤検知」と主張し飲酒の事実を隠していたことである。検査を繰り返した結果、最終的に基準をクリアしたため乗務に就いたが、後日、詳細な聞き取り調査で飲酒の事実が明らかになった。JALは「欠航すべきだった」と説明し、再発防止策を実施する方針を示した。
過去の事例とJALの取り組み
JALのパイロット飲酒問題は今回が初めてではない。
特に2018年と2019年には、複数の事例が大きな問題となった。
2018年10月にはロンドン発羽田行き便で副操縦士が深酒をした結果、3倍以上のアルコールが検出され、現地で拘束される事態に発展。その後、国土交通省より事業改善命令が出された。
さらに2024年4月にはダラス発羽田行きの便で、機長が乗務前夜に深酒して騒ぎ、警察に口頭注意を受けるトラブルが発生した。このケースでは、乗務前のアルコール検査では基準値をクリアしていたものの、機長の心身状態に問題があると判断され、便は欠航となった。
これらを受け、JALは再発防止策として飲酒管理の徹底や乗務員の意識改革を進めると発表したが、本質的な改善には至らず、同様の問題が繰り返されている。
問題が浮き彫りにする課題
今回の事案を通じて浮き彫りとなったのは、JALの安全管理体制の不備である。
社内規定では飲酒量が厳格に定められているにもかかわらず、現場での徹底が不十分であり、再発防止策の実効性が欠如していることが明らかになった。
また、飲酒問題の頻発はJALのブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性が高い。航空業界において安全は最優先事項であり、信頼の失墜は利用者離れや経営の悪化につながる懸念がある。JALは2010年の経営破綻以降、信頼回復を目指して努力を重ねてきたが、今回の問題がその努力を無にしかねない事態である。
JALの再発防止策と今後の展望
JALは今回の飲酒問題を受け、乗務員に対する飲酒禁止措置を再導入する方針を発表した。また、アルコール検査の強化や乗務員への教育を通じて、飲酒のリスクを根本的に排除する取り組みを進めるとしている。
さらに、運航乗務員の管理体制の見直しや、家族を含めた日常的な管理体制の強化に取り組む見通しだ。安全管理体制の改善はもちろん、信頼回復を目指すため、経営陣が率先して問題解決に取り組む姿勢が求められる。
JALは、今後も国土交通省や社会からの厳しい目を受けることが予想される中、本質的な安全管理体制の見直しと再発防止策の実効性を確実に実行していく必要がある。