ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

声優「おもんなバラエティ」量産論が拡散 労働集約ビジネスの限界とNTT西日本「VOICENCE」が映すIP化の最前線

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー

声優の「おもんなバラエティ」はなぜ量産されるのか。2026年6月2日にnoteへ投稿された一本の論考が、その問いを「演者個人の怠慢」ではなく「業界の構造問題」として整理し、SNSで急速に広がった。粗製濫造される一部の声優バラエティ番組やイベントへの違和感を、ビジネス視点で言語化した内容である。投稿は数日で数千件規模の反応を集め、Xやはてなブックマークで議論が白熱した。

 

声優は「一次IP」になりにくい 労働集約型のジレンマ

論考の核心は、声優という職業の構造的な弱さにある。声優の多くは、原作漫画やゲームといった「一次IP」に声を当てる二次的な役割を担う。ゼロから価値を生み出す一次IPそのものにはなりにくく、収益が稼働時間や出演量に依存する労働集約型のビジネスから抜け出しにくい。長期的に安定した収入を得るには、演者自身を「IP化」し、稼働量に縛られない収益源をつくる必要がある。

しかし、その手段には才能と機会の壁がある。音楽活動や写真集、ファンクラブなどはIP化の代表的な手法だが、全員が音楽的才能を持つわけではなく、市場も飽和している。論考は、こうした「自分をコンテンツ化しなければならないが、誰もが成功できるわけではない」というジレンマと焦りが、安価に量産できる低質なバラエティ企画を生む土壌になっていると指摘する。脚本もセットも要らず、ファンからチケットやグッズで効率的に集金できる「パッケージ商法」が、事務所のIP化ニーズと制作側の低コスト集金の思惑とで成立しているという見立てだ。

ファンの反応は二分 「推しが見られればいい」と「企画の質」

SNSの反応は割れた。「面白さを求めて行っているのではなく、推しの姿が見られればチケット代は回収できている」という肯定的な声がある一方、進行の雑さや内輪ノリへの不満も目立つ。論考自身、ラジオのフリートークのように話芸で勝負する形式と、企画頼みのバラエティは区別すべきだと断っており、特定の演者個人を批判する趣旨ではない点が議論を呼んだ。

 

「声のIP化」が新局面 NTT西日本「VOICENCE」とAI音声

IP化の現実的な手段は、いま新しい局面に入りつつある。音楽デビュー、写真集、月額ファンクラブに加え、稼働時間に依存しない「声そのもののIP化」が動き始めた。

その象徴がNTT西日本の音声AI事業「VOICENCE(ヴォイセンス)」である。2025年10月に始動し、わずかな音声から本人の声色を再現して多言語にも展開できる技術と、ブロックチェーンによる真正性証明を組み合わせ、声を「音声IP」として管理・収益化する仕組みを掲げる。2026年3月には俳優・別所哲也の公認AI音声を使った音声CMを公開し、5月には新たに声優・アナウンサーが参画するなど、参加者は事務所をまたいで広がっている。実演家の収録稼働の制約を受けずに収益機会を広げられる点で、労働集約からの脱却の一手として注目される。

ただし、権利保護のルール整備は途上だ。声優・俳優の津田健次郎が、生成AIによる声の無断模倣をめぐってTikTok運営を提訴したと報じられるなど、「声の権利」をどう守るかは業界全体の課題として残る。AIによる代替が進むほど、「演技という本質的価値」との両立が問われることになる。

持続可能性の鍵は「労働集約からの脱却」

今回の論考が突いたのは、エンタメ産業のサステナビリティそのものである。稼働量に頼る集金モデルは、演者の消耗とファンの離反という二重のリスクを抱える。事務所がファンクラブやメディアミックス、音声IPといった多角的な収益基盤を整えるほど、低質イベントへの依存は下がり、業界の持続可能性は高まる。ファンの側にも、「質」で選ぶ姿勢が回り回って健全な市場をつくる。声優という職業が次に向かうのは、「声の芝居」以外の付加価値をどう設計するかという問いだ。

 

Tags

ライター:

東京都出身。一日中ネットに張り付いている。

関連記事

タグ

To Top