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森岡毅・刀のメッキ剥がれ落ち  中小企業ではよくある節税スキームも、NewsPicks報道で炎上拡大

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刀のプレスリリース
刀のプレスリリース。事実上の白旗か。

政府主導の投資ファンド「クールジャパン機構」が出資したマーケティング会社「刀」に対して、新たな資金の流れをめぐる疑惑が浮上している。6月30日と7月1日、NewsPicksが連日公開した調査報道では、刀から森岡毅氏の親族が運営する「森岡マーケティング研究所」へ数億円が支払われていたと報じられた。

これに対し、SNSを中心に「税金を原資とした出資金が私企業に流れているのでは」との批判が広がり、炎上状態となっている。

 

ファミリー企業への送金は“中小企業では日常的”

問題の構図は、刀が受けた出資金の一部を、森岡氏が代表を務める「森岡マーケティング研究所」にコンサルティング料などの名目で支払っていた、というものだ。報道によれば、研究所の役員構成は森岡氏の家族で占められており、事実上のファミリー企業とみられる。

こうしたスキームは、相続税対策や役員報酬の分散手法として中小企業では決して珍しいものではない。プライベートカンパニーへの外注、子に株を持たせ、財産権と議決権を分離する設計、そして税務上の扱いを見越した経済合理性に基づく行為は、少なくとも法的にはグレーゾーンであっても即違法とは断定しがたい。専門家の中には「刀のケースも、構造だけ見れば中堅企業であればよくある話」と指摘する声もある。

 

しかし、今回の問題は、あくまで出資元が国の資金、すなわち税金であることに起因する。中小企業では許容される構造も、国費が投下されている以上、高い透明性と説明責任が求められる。しかも、累積損失が400億円を超えるクールジャパン機構において、この80億円の出資がどう評価され、どう管理されていたかは、国民の関心事にならざるを得ない。

黒字化できぬプロジェクト、成功要請は“背水の陣”

 

森岡氏は、マーケティング分野において“神”とまで称された人物だ。だが、手がけた西武園ゆうえんちやトリドールの業績改善は道半ばで、刀自体も赤字を続けている。そうした中で進行中の「ジャングリア」プロジェクトには、さらに多額の税金が投じられている。

国費を原資としながら、関連会社に資金を流し、自身の一族に還元する構造には「やり過ぎ感」が否めない。

刀は公式声明を発表 「一方的報道で遺憾」と反論も中身は触れず

 

今回の報道を受け、7月1日、株式会社刀は公式サイト上に「NewsPicksによる『刀』に関する報道について」と題したコメントを掲載。報道内容について「憶測や偏った見方による一方的な内容」と批判し、「事実関係を丁寧に説明する機会もなく、遺憾である」と述べた。

一方で、森岡マーケティング研究所への資金流出についての具体的な説明や反論はなされていない。単なる遺憾砲であり、訴訟のちらつかせや真摯に対応するとの記述もないことから、ネット上では「実質的な白旗では」との見方も出ている。

 

惨憺たる結果! クールジャパン改めフールジャパン機構

節税スキームの活用は、企業経営者であれば多くの者が検討するだろう。それが適法である限り、責めることは難しい。また、一般企業だって補助金など国の金が入っているものだ。

しかし、刀は単なる中小企業ではない。「マーケティングの神」とさんざん持て囃されてきたことや、クールジャパンから80億円という巨額の公的資金を受け、国家プロジェクトの一翼を担ってきた企業である。今回ここまで炎上した背景は、巨額の公的資金が入っている会社ゆえに「よくある話」で済ませるわけにはいかないということだろうか。

これまでもさんざん擦られてきたクールジャパン機構だが、またしても刀をめぐる一件で“擦られ案件”として再浮上した格好だ。

Spiberに140億円、ラフ&ピースマザーに100億円、刀に80億円と、大型出資を繰り返す中で、2024年時点の累積損失はすでに400億円超。改めて、官僚や学者が構成する投資委員会の目利き力が問われている。

 

鋭い刃か、それとも“なまくら”か

それにしても、かつては森岡氏を「マーケティングの神」と称え、いまは節税スキームの張本人として切り込む——NewsPicksの持ち上げては突き落とす鮮やかさには、番組の面白さとともに、報道とは本来こうあるべきなのかと苦笑まじりに頷かされる。落合陽一氏も酷かったしね。さて、次のターゲットは誰なのか?

かつて鋭利とされたマーケティングの刀は、果たして今も光を放っているのか。
剥がれ落ちたメッキの下にあるのは、切れ味鋭い真剣か、それとも“なまくら”か。
いま問われているのは、森岡毅氏と「刀」の本質そのものである。

SNSでは「ジャングリアは必ず黒字化させなければ説明がつかない」との声が上がっており、プロジェクト成功のハードルは一気に上がった。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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