日本は住民税を含めて実質“世界〇位”の重税国家だった! 世界で最も税金が高い国は?

「税金が高い国」と聞いて真っ先に浮かぶのは北欧諸国だろう。だが、最新の2025年データでは、意外な国が1位に躍り出た。
本稿では、個人所得税の最高税率に地方税(住民税など)を加えた“実効課税率”をもとに、世界の重税国家ランキングを独自に構成。さらに各国の税収がどのように使われているのか、住民がそれに見合った満足を得ているかという視点もあわせて検証する。
世界の重税国家ランキングTOP10(2025年)
第10位:オランダ(49.5%)
- 所得税(国)…最大 49.5%(€76,817超)
- 地方税なし(別途資産税あり)
- 社会保険料…別建て(労使合算で約27%)
- 消費税… 21%(軽減9%)
仕組み: 上位所得層には比較的早く49.5%のレートが適用されるが、福祉とインフラへの投資が厚く「支払う納得感」がある。
付加価値税や法人税も高いが、年金・インフラ整備に活用されており、幸福度は5位。「支払う価値のある税金」として受け止められている。
第9位:フィンランド(51.8%)
- 所得税(国)…最大 44.25%
- 地方税(市町村)… 平均7.5%
- 教会税… 1.2%(任意だが実施率高)
- 消費税… 25.5%
仕組み: 年収1200万円以上で最高税率が適用。税収の半分近くが子育て支援・教育・医療に投じられ、幸福度は1位。
地方税と教会税が高く、総合負担率は50%超。それでも医療・教育・育児支援は無償かつ高水準で、幸福度1位を堅持している。
第8位:スウェーデン(52.3%)
- 所得税(国)… 20%(€43,500超)
- 地方税(自治体・県)… 平均32.3%
- 社会保険料… 31.42%(企業が主に負担)
- 消費税… 25%(食品12%)
仕組み: 年収600万円程度で地方税込みの高負担ゾーンに入り、年収900万円前後から最高実効税率に到達する。教育・医療は無償。
北欧型の高福祉国家。大学は無償、医療費も低額で、税の4割が医療・高齢者ケアに使われている。幸福度は4位。
第7位:ベルギー(約53.5%)
- 所得税(国)…最大 50%(€46,440超)
- 地方自治体税(コミューン税)… 平均3.5%
- 社会保険料… 13.07%(従業員自己負担)
- 消費税… 21%
仕組み: 中所得層でも早期に最高税率が適用される。その分、医療・年金制度は厚く設計されている。
所得税50%に地方自治体の付加税が上乗せされ、実質53%超に。医療や公共交通の補助は厚いが、給与明細の“手取りの少なさ”が国民の不満の種に。
第6位:スペイン(最大54%)
- 所得税(国)… 55%(€1,000,000超)
- 地方税なし(中央政府徴収)
- 社会保険料… 約18%(労使折半)
- 消費税… 20%
仕組み: 年収100万ユーロを超える超富裕層のみが55%の最高税率に到達。音楽・文化支援、職業教育などの公共投資に重きを置く。
地域差が激しく、自治州によって課税率が異なる。医療や年金は整っているが、若年層の失業率の高さが国民満足度に影を落とす(幸福度32位)。
第5位:オーストリア(55%)
- 所得税(国)… 55%(€1,000,000超)
- 地方税なし(中央政府徴収)
- 社会保険料… 約18%(労使折半)
- 消費税… 20%
仕組み: 年収100万ユーロを超える超富裕層のみが55%の最高税率に到達。音楽・文化支援、職業教育などの公共投資に重きを置く。
文化・教育に厚い投資を行う国。所得1,000,000ユーロ超に課税される55%の高税率は2026年に廃止予定。幸福度は9位と高く、税の使い道に納得する国民が多い。
第4位:フランス(55.4%)
- 所得税(国)…最大 45%(所得€168,000超)
- 社会保障関連税(CSG・CRDS)… 約10.4%
- 地方税…一部で5〜8%程度上乗せ(都市部)
- 消費税(付加価値税)… 20%
仕組み: 所得税に加えて、所得に対して必ず課される社会保険税が加算されるため、実効税率は55%を超える。医療や家族給付制度の財源となっている。
高い所得税に加え、社会保障税の存在が特徴。医師数、病院数ともに欧州上位で、医療制度は充実。一方、若年層の高失業率が幸福度21位という結果に影響を与えている。
第3位:デンマーク(55.9%)
- 所得税(国+地方)… 約52%
- 労働市場税… 8%(一部控除あり)
- 合算上限… 法定で55.9%に制限
- 社会保険料… 企業負担が主、個人負担は限定的
- 消費税(付加価値税)… 25%
仕組み: 所得が増えても総合税率が55.9%を超えないように調整されている。教育・医療・介護などは基本的に無償で、納税に対する納得度が高い。
税率の上限が法定で定められており、国民は55.9%までしか課税されない。医療、教育、介護が無料で提供され、世界幸福度ランキングは2位。税を“社会の共益費”と受け止める意識が根付いている。
第2位:日本(55.945%)日本は世界で2番目の「重税国家」だった
- 所得税(国)… 45%(課税所得4,000万円超)
- 復興特別所得税… 0.945%(一律)
- 住民税(都道府県+市区町村)… 10%(全国一律)
- 社会保険料… 14.75%(労働者自己負担分)
- 消費税… 10%(軽減8%)
仕組み: 所得が高くなるほど累進税率が上昇し、**年収5,000万円を超えると、実質で“55.945%”**まで引き上がる。さらに給与明細から天引きされる健康保険や年金保険料も可処分所得を圧迫し、実際の「手取り率」は5割を下回る。
日本の最高所得税率は国税部分が45%。これに復興特別所得税(0.945%)と住民税(全国一律10%)を加えると、実質的な最高税率は55.945%となり、重税国家ランキングで世界2位に位置する。
さらに、労働者が支払う社会保険料も14.75%(健康・厚生年金など)と高く、可処分所得を圧迫。法人実効税率も29.74%、消費税は10%(軽減8%)と、企業・個人問わず負担の構造が重い。
にもかかわらず、医療費は3割自己負担、大学教育も有償で、国連の世界幸福度ランキングでは51位と先進国最下位クラスだ。
高額な所得税と住民税、加えて社会保険料や消費税も高水準。税収の大半が年金・医療に使われているが、国民の生活満足度は低く、「重税なのに見返りが乏しい」という評価が強まっている。
第1位:アルバ(実質58.95%)
- 所得税(国)…最大 58.95%
- 地方税なし
- 社会保険料…給与からの天引きあり(詳細未公表)
- 消費税(売上税)… 約7%(BBO等)
仕組み: 年収に応じた細かな累進課税で、年間所得が約10万米ドルを超えると最上位レート58.95%が適用される。観光依存型の財政を支えるため、個人に重く課税される構造。
オランダ王国の構成国であるアルバが世界1位に。観光業への依存が高く、所得税の最高税率は58.95%に設定。法人税22%、売上税(BBO)計約7%と、国民も観光客も重い税を負担している。医療・教育の無償提供があるが、幸福度に関する公的データはない。
この税率は、累進課税制度の中で高額所得層(年収おおよそ10万米ドル超)に適用されるもので、段階的に課税レートが上がっていく仕組みとなっている。なお、アルバには日本のような住民税制度は存在しないため、所得税一本で国家歳入の多くを賄っている。
法人税は2025年現在で22%、消費課税として導入されているのが、「BBO(Belasting op Bedrijfsomzetten)」=営業収益税と呼ばれる売上課税である。これはアルバ特有の税制で、商品やサービスの販売に対し1.5~3.5%程度が課される。さらに、**BAZV(医療税)、BAVP(公共福祉税)**といった目的税も加わり、合計で約6〜7%相当の売上税が間接的に課されているとされる。
※BBOとは:Belasting op Bedrijfsomzetten の略で、企業の「売上高」に対して課される広義の間接税。消費税とは異なり、仕入控除がなく「売上総額」に課税されるため、事業者負担が大きくなる特徴がある。
アルバは観光業がGDPの半分以上を占める「観光立国」であり、国家財政の持続可能性の観点から高額所得者への課税が重視されてきた。教育・医療については一定の無償制度が整備されているものの、国連の世界幸福度ランキングには掲載されておらず、住民の満足度や生活実態については不透明な部分が残る。
総括:「高税率=不満」とは限らない。しかし日本は例外
北欧諸国のように、税率が高くても住民がその“見返り”を日常的に体感していれば、不満は少ない。むしろ「安心を買うための費用」として肯定的に受け止められる。
しかし日本は、税率は北欧並みに高いにもかかわらず、可処分所得は伸びず、社会保障の満足度も低い。「高負担・低リターン」の構造が続く限り、国民の納税意欲や幸福度は改善されにくいだろう。