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搾取社会の象徴か、起業家精神の体現か 南部靖之氏パソナ取締役辞任 迎賓館「仁風林」とその伝説

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パソナ南部氏
南部靖之コーポレートサイトより

人材サービス大手のパソナグループは5月31日付で、創業者でありグループ代表兼社長CEO(最高経営責任者)を務める南部靖之氏が取締役を辞任すると発表した。1976年の創業から50年の節目を迎えるにあたり、「次の50年は新体制に託したい」との本人の意向によるものだ。14日、ロイター通信が報じた。

8月22日に開催される株主総会と取締役会を経て、若本博隆副社長が会長に、中尾慎太郎常務執行役員(現パソナ社長)が新社長に就任する予定である。

 

パソナグループの拡大と社会への影響

南部氏は、大学卒業を前にした1976年2月、人材派遣会社テンポラリーセンターを設立。派遣ビジネスの先駆者として業界を牽引し、2001年にはナスダック・ジャパン市場に上場。さらに2007年には持株会社パソナグループを設立し、東証一部への上場を果たした。

一方で、行政サービスのアウトソーシング拡大や、大阪万博への関与などにより、SNSでは批判の声も多い。「市役所で戸籍謄本を取ったら、領収書にパソナの記載があった」「万博のパビリオンを見て嫌悪感を覚えた」といった投稿が寄せられ、派遣ビジネスの影と社会的な格差拡大への批判が根強いことを物語っている。

 

社内起業の成功事例 ベネフィット・ワンの成長

南部氏の功績の一つに、社内起業制度を通じた新規事業の創出がある。1996年に設立された株式会社ベネフィット・ワンは、パソナグループの社内ベンチャー第1号として誕生し、福利厚生アウトソーシングサービス「ベネフィット・ステーション」を提供。現在では、導入企業約16,000団体、会員数約1,100万人を誇る業界のリーディングカンパニーに成長した。

同社は、福利厚生事業のほか、パーソナル事業、CRM(Customer Relationship Management)事業、インセンティブ事業、ヘルスケア事業、購買・精算代行事業など、多岐にわたるサービスを展開している。

2024年には、第一生命ホールディングスによるTOB(株式公開買付け)が成立し、同社は第一生命グループの完全子会社となった。

南部靖之氏が築いた「伝説」と「サロン文化」

南部氏の半生は、挑戦と物議が交錯する物語でもある。中でも象徴的な存在として知られるのが、東京・元麻布にある迎賓館「仁風林」だ。週刊誌によれば、同施設は財界人や著名人を招き入れるサロンとして活用され、かつてASKA容疑者と栩内香澄美容疑者が出会った場所としても報じられた。

仁風林は、木々が生い茂る閑静な住宅街の一角にあり、六本木ヒルズからもほど近い。土地には古くから「がま池伝説」が残り、格式高い雰囲気を漂わせている。夜な夜な割烹着姿のスタッフが出入りし、タクシーが何台も止まる光景が目撃され、「料亭かと思っていた」という近隣住民の声もある。

このサロンには、建築家の安藤忠雄氏、元自民党幹事長の中川秀直氏など、政財界の大物が顔を出し、南部氏の人的ネットワークの広がりを象徴していた。週刊誌やインターネット上では、南部氏とASKA容疑者の親交を示す花輪や発言が記録として残っている。

 

異色の経営者人生 少年時代に学んだ「価値の多様性」

南部氏の原点は、神戸市での少年時代にある。幼少期から父親に「人と比べるな」「自分の成長を喜べ」と教えられ、お寺の私塾で人間力や感謝の心を学んだ。大学時代には塾を立ち上げ、情操教育に力を入れた。ウォルト・ディズニーを尊敬し、「夢を与える起業家になりたい」と語っていたことは知られている。

パソナ創業の原点も「社会課題の解決」にあった。学力だけで評価しない、個々人の多様性を尊重する思想は、南部氏の一貫した哲学であり、その半生は波乱に満ちつつも「社会の矛盾に挑戦する力」で貫かれていた。

 

評価が分かれる功績と課題

派遣ビジネスを広げ、日本にアウトソーシング社会を定着させた南部氏。SNS上では「政財界に食い込み搾取社会を生んだ元凶」「日本を格差社会にした元凶」と批判される一方で、「創業50年は見事」「神戸震災後の行動力は尊敬する」との声もある。

新体制を迎えるパソナグループには、南部時代の功績と影の両面を乗り越え、社会的価値の再定義と持続可能な事業運営が求められている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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