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フジテレビ報告書が示す「カスタマーハラスメント」の新たな問題とは?

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フジテレビ カスタマーハラスメント

フジテレビのハラスメント問題に関する第三者委員会の報告書が公表された。その内容から、同社がタレントとの関係を優先し、社員の保護を十分に行えなかった構造的な問題が浮き彫りになった。特に、今回の報告書では、タレントとの力関係が社員の立場を脅かし、職場環境に影響を与える「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の要素があることが指摘されている。

企業が顧客や取引先との関係でどこまで社員を守れるのか、また、フジテレビというメディア企業がタレントと社員の関係性をどう管理すべきだったのか。この視点から今回の問題を考察する。

 

カスタマーハラスメントとは何か?

カスタマーハラスメントとは、企業の取引先や顧客による不適切な言動や要求が、従業員の就業環境を著しく害することを指す。典型例は、飲食店や小売業における過剰なクレームや暴言だが、近年ではBtoB(企業間取引)におけるパワハラやセクハラもカスハラに含まれるとされるようになってきている。

厚生労働省も2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表し、企業が取引先からのハラスメントを防ぐべく、ガイドラインを整備する重要性を強調している。

今回のフジテレビのケースは、まさにこのカスハラの問題が潜んでいる。

 

フジテレビ報告書が示す「取引先重視」の姿勢

報告書では、フジテレビがタレントとの関係を最優先し、社員の保護が後回しになっていた構造が浮き彫りになった。特に問題となったのは、経営陣が被害申告を受けながらもタレント側への事実確認を行わず、内部対応にとどめた点である。これは「取引先であるタレントとの関係を悪化させたくない」という意識の表れではないかと指摘されている。

また、報告書によると、被害を訴えた女性アナウンサーAは社内で十分なサポートを得られなかった。それどころか、「余計なことをしないほうがいい」といったニュアンスの発言が関係者の間で飛び交い、被害者が声を上げにくい環境が作られていた。

さらに、F氏(佐々木恭子アナと見られる)は、経営陣から明確な指示を得ることができず、タレントと社内調整の間で板挟みになっていた。「タレントの機嫌を損ねず、なおかつ被害者をケアしなければならない」という立場に追い込まれたことで、どちらの対応も不十分になった。これらの事実は、単なる「対応のまずさ」ではなく、フジテレビの企業文化そのものが「タレントファースト」になっていたことを示している。

 

メディア業界におけるカスハラの構造的問題

この問題はフジテレビに限らず、メディア業界全体に存在する可能性がある。放送局や制作会社にとって、タレントや芸能プロダクションとの関係は極めて重要だ。スポンサーや視聴率の影響を受ける中で、タレントが関与する問題には慎重な対応を求められる。

しかし、その結果として、現場の社員がタレントとの不均衡な関係に巻き込まれ、適切な対応を受けられない状況が生まれるのであれば、それは企業のカスハラ対策が不十分であることを示している。

例えば、旧ジャニーズ事務所の性加害問題では、長年にわたりメディアが沈黙してきた背景には、芸能界とメディアの癒着があったと指摘されている。フジテレビのケースもまた、タレントと局の力関係が社員の保護よりも優先される企業文化の中で起こったのではないか。

 

企業がカスハラから社員を守るために必要なこと

メディア企業がタレントや芸能プロダクションと対等な立場で関係を築くために、カスハラに関するガイドラインを明確にする必要がある。また、人事・コンプライアンス部門が経営陣や制作現場から独立し、タレントとの関係に左右されずに判断を下せる環境を整えることが求められる。

さらに、フジテレビに限らず、多くの企業が取引先との関係を優先しがちだが、社員の安全や精神的負担が犠牲になっている場合、それは企業としての責任放棄にあたる。企業文化そのものを変革し、社員の保護を最優先とする姿勢が必要だ。

 

フジテレビ問題は「メディア業界のカスハラ」として考えるべき

フジテレビのハラスメント問題は、単なる経営陣の対応ミスや社内のガバナンス不足にとどまらない。これは、メディア企業がタレントという取引先とどう向き合うか、そして社員の権利をどこまで守れるのかという「カスタマーハラスメント」の問題でもある。

今回の報告書を契機に、フジテレビのみならず、メディア業界全体がこの構造的な問題に向き合い、抜本的な改革を進めることが求められている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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