中学受験シーズンの最中に放映されたACジャパンのCMが、一部の受験生の親たちの間で物議を醸している。問題視されているのは、子どもの「教育虐待」をテーマにした内容が、入試直前のタイミングで流されたことだ。SNSでは「やる気をなくす」「受験の追い込み時期になぜ?」といった声が上がっている。
しかし、今回の騒動を見るに、こんなことでクレームを入れる行為の愚かさを自認できない、そんな余裕のない心理状況に陥る時点で、中学受験を支える親の役割をこなしていない、向いていないと言える。受験に成功すること以上に、長い人生を生きる上で、過剰にクレームをつける姿勢が子どもにどのような影響を及ぼすのかを見つめ直す必要があるのではないか。
たかがテレビの話。CMの話だ。中学受験する家庭なら自分たちの環境をメタ認知するいい機会として笑って終わりだろう。あるいは真剣に話し合う機会にしてもいいかもしれない。いずれにしろ、クレームなどもってのほか、バカの極み。日本人もここまで落ちるのかという話だ。
CMの内容と炎上の背景
CMのストーリーはこうだ。野球場のそばを歩く少年が、野球をする子どもたちを見つめるが、指導者に声をかけられると逃げ出してしまう。場面は変わり、自宅で母親と共に机に向かう少年が映し出される。90点のテストを前に「今は勉強だけしていればいいの」と母親は言い聞かせるが、少年の表情には笑顔がない。最後に「子どもの心を尊重していますか?」というメッセージが投げかけられる。
このCMの意図は「教育虐待」に対する問題提起だ。親の過度な期待や圧力が、子どもにとって本当に幸せなことなのかを問いかける内容となっている。しかし、ちょうど受験直前のタイミングで繰り返し放映されたことで、受験生の親たちの神経を逆なでする形になった。
SNS上では、
「こんな時期に流すなんて無神経」
「受験生のメンタルに悪影響を与える」
「親だって子どものためを思って頑張っているのに、批判されるのは納得いかない」
といった声が上がった。
「クレーマー」になるリスク
こうした批判に対して、一部の意見は冷静だ。
「CMを見てやる気をなくすなら、その程度だったということ」
「クレームを入れること自体が、受験生に余計なプレッシャーを与えているのでは?」
といった見解もある。
受験は確かに人生の大きな節目だ。しかし、その過程で親が過剰に反応し、少しの違和感でもクレームを入れる姿勢を見せることが、子どもにとって本当にプラスになるのだろうか。むしろ、どんな環境でも自分の目標に向かって努力し、状況に流されない力を養うことのほうが、長い目で見れば重要ではないだろうか。
今回の騒動に巻き込まれた子どもたちは、まさに「クレームを入れる親」という反面教師を間近で見ている。その経験を活かし、「不満があればすぐに抗議する」よりも、「冷静に状況を判断し、適切な対応をする」ことの大切さを学ぶ機会にしてほしい。
本当に「批判殺到」なのか
ただ、「批判が殺到」と報じられることも多いが、実際のところ、SNSや一部の掲示板で声を上げている人の数はごく一部である可能性が高い。ネット上の反響を拡大解釈し、あたかも社会全体が問題視しているかのように扱うメディアの責任もあるだろう。
このCMが問題なのではなく、それに対する「過剰な反応」こそが問題なのかもしれない。親の立場からすれば、子どもの頑張りを支えたいという思いは理解できる。しかし、その支え方が「環境の変化に過剰に文句を言う」ことであるならば、子ども自身の成長を阻害する可能性もある。
受験の成功より大切なこと
受験は確かに大切だ。しかし、もっと大切なのは「社会の中でどう生きていくか」ということではないか。試験の結果がどうであれ、努力の過程から学ぶこと、環境の変化に適応すること、自分の目標に向かって進むことこそが、人生を切り拓く力につながる。
受験を控えた子どもたちにとって、今最も学ぶべきことは、点数や合否だけではない。身近な大人がどのように問題に向き合い、どう行動するかもまた、大きな教材である。クレームを入れることが本当に必要かどうか、いま一度考えるべきだろう。